『ゴッド・オブ・ウォー』投擲も可能な頼れる戦斧「リヴァイアサン」に込められた細やかな工夫とは。開発者がその制作過程を明かす


今月4月20日にPlayStation 4向けに発売された『ゴッド・オブ・ウォー』は、海外メディアのレビューにて満点を連発。レビュー集積サイトMetacriticにて、PS4独占タイトルとしては『The Last of Us Remastered』と並ぶもっとも高いスコアを獲得している。ビジュアルや物語、世界観などレビューにて高く評価された点は多々あり、バトルシステムもそのひとつだ。

主人公のクレイトスは、本作では戦斧リヴァイアサンをメインの武器として戦う。基本的には近接武器として扱うリヴァイアサンだが、任意の場所へ投擲し、そして手元に呼び戻せるアクションがバトルに深みをもたらすこととなった。このリヴァイアサンはどのように生まれたのか、Santa Monica Studioのリード・システムデザイナーVince Napoli氏が、自身のブログにて制作過程を記している。

Image Credit: Vince Napoli

リヴァイアサンを投げつけて、そして呼び戻すというアクションは、『ゴッド・オブ・ウォー』開発初期の2014年頃から取り組んでいたという。もともとは、ただ遠距離攻撃が必要だということで試した要素だったが、実装してみるとゲームプレイに予想外の利点をもたらすこととなった。それは、リヴァイアサンを呼び戻す際にも敵にダメージを与えられることである。ゲームにて意図的に活用したり、偶然ヒットして助かったという経験のあるプレイヤーもいるのではないだろうか。ただ実際にはこのアイデアを発展させて、一定の角度内であれば敵に当たって返ってくるよう調整が加えられているそうだ。プレイヤーのゲーム体験を高める隠れた工夫ともいえるだろう。

Image Credit: Vince Napoli

クレイトスがリヴァイアサンを呼び戻す際のアクション(ポーズ)も、さまざま検討されたそうだ。最初のバージョンの一つでは、手を上にかざすというやや仰々しいものだったそうで、その映像も披露されているが、もっとリラックスしたポーズにしようということで、身体の横で手を広げる現在の形に変更された。また同時にアニメーションにも手を加えられている。まずリヴァイアサンを受け取るクレイトスは、カメラに対して横を向く形にすることで、背中以外の部分も映りアクションにメリハリをつけている。

手の動きに関しては、呼び戻す際はちょっとした攻撃アクションのように、そして返ってきたリヴァイアサンをキャッチする際はズッシリとした重みが感じられるようなアニメーションとなっている。ただ、重さを表現するとなると、ともすればクレイトスがそれを扱いこなせていないように映る危険性もあったため、調整には細心の注意を払ったとのことだ。

Image Credit: Vince Napoli

投擲したリヴァイアサンが、どれくらいの時間で手元に戻ってくるかという点も多くの調整を擁したという。当初は、シンプルに加速・最高速を設定して、直線的な軌道を描いてクレイトスの元に返ってくるようにしていたそうだが、これではより遠くに投げた場合は手元に返ってくる時間も比例して長くなってしまい、バトルにおいて大きなフラストレーションとなる。そこで、リヴァイアサンが手元に返ってくるまでに1.5秒以上かかる距離にいる場合は特別に加速させて、プレヤーが待つ時間に上限を設けたという。一方、直線的な軌道については、プレイヤーからは見え難いばかりか、単純に見た目もよくないということが判明する。そこで、ゆるい弧を描く軌道に変更したそうだ。

そのほか、投げたリヴァイアサンがオブジェクトに突き刺さっている雰囲気を表現するために、呼び戻した最初の0.1秒間にブルブルと震えて自ら引き抜こうとするアニメーションを加えたり、リヴァイアサンが戻ってくる様子を耳からも感じられるよう、斧の回転に合わせた音を徐々に近づいてくるように鳴らすなど、サウンド面にも工夫が施されているという。またコントローラーの振動も、呼び戻す初期アクション・リヴァイアサンが飛んでいる間・キャッチした瞬間に別々の振動パターンを使用しており、これはNapoli氏が強いこだわりを持って取り組んだ要素の一つだったそうだ。

Image Credit: Vince Napoli

『ゴッド・オブ・ウォー』におけるリヴァイアサンの投擲と呼び戻しは、もっとも基本的かつ本作の特徴となるアクションであるためか、こういった調整は本作が発売される数か月前まで続いたという。細かいこだわりの数々は、実際にゲームをプレイする際には気付き難いかもしれないが、スムーズなゲームプレイとゲーム体験の向上に繋がり、高い評価を得る一助となったのは間違いないだろう。