UbisoftにてGBA版『ゼルダの伝説 風のタクト』が開発されていた。ドット絵で描かれた幻の「風のタクト」

 

現在Ubisoft Milanoに在籍しており『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』のクリエイティブ・ディレクターを務めるDavide Soliani氏が、ゲームボーイアドバンス(GBA)向け『ゼルダの伝説 風のタクト』を開発していたことを明かしている。ゲームキューブ版『風のタクト』が発売された翌年である2003年、氏はのちにゲームロフトに移籍したFabio Pagetti氏とともに2名で同作を開発していたようだ。Twitterにてそのスクリーンショットを公開している。

Soliani氏によると、開発期間は約1か月と短期間ながら、もう少しでマネージングディレクターを説得しデモ版を作れるだろうというところまでいったのだという。あくまで映像段階であったようだが、しっかりと同ハードで動くことを想定していたものであったようだ。最終的には運には恵まれず、流れてしまった。当時を振り返ったSoliani氏は楽しげに「ドリーマーだった!」と話す。

Davide Soliani氏は熱狂的な任天堂ファンボーイとして知られる開発者だ。1997年から長年Ubisoftに在籍しているが、任天堂に猛烈な愛情を抱いていたようだ(一時期だけKujuにて『突撃!!ファミコンウォーズ』の開発に参加した過去も)。Ubisoft内では長年ゲームキューブやWii向けタイトルを開発し、同ハードと馴染みが深い『Just Dance』にも携わり続けてきた。その長年の愛が実ってか、今年は任天堂との異色のコラボタイトル『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』に総指揮を委ねられるほど。2017年のE3では、氏が尊敬する宮本茂氏が同タイトルのことを語っている姿を見て涙したというエピソードでも有名だ。

『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』

今回のGBA版『風のタクト』の存在は、氏が長年のファンであったことあらためて実証するものだ。Twitter上では、のちにカプコンが開発しリリースされたGBA向け『ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし』のビジュアルに似ていることを絡め、一部のファンから寄せられた「で、これはそのあとカプコンにアセットを盗まれて、『ふしぎのぼうし』が作られたんだろ?」という声に対しても「『ふしぎのぼうし』は本物のゲームで良作だ。僕らのものはただの夢だよ(笑)」と大人の対応を見せ、ファンからの評価をさらに上げている。

こうした文脈を考えると、日本から遠く離れたフランス(もしくはイタリア)にて『風のタクト』が開発されていたのは、Ubisoftの意向というよりもSoliani氏の情熱によるものだと言える。この『風のタクト』は任天堂に見せることはなかったというが、あれから14年経ち任天堂とUbisoftの大型コラボタイトルを引っ張っていくポジションにいることができるのは氏に愛と情熱、そして才能があったからということに疑いはない。

そんなSoliani氏が手がけたニンテンドースイッチ向け『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』は国内向けには2018年1月18日に発売される。すでに海外で高い評価を獲得しており、氏の尽きることのない任天堂愛が込められた同作品を、プレイしてみてはいかがだろうか。