ゲームジャムとインディーゲーム

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過去1週間のインディーゲームニュースをお届けするのがIndie of the Weekです。

先週末に「Summer Game Jam 2014」が開催されました。ゲームジャムとは、デベロッパーたちがつどい、かぎられた時間でゲームを開発するイベントです。たいていは会場に集まったメンバーで即席チームを組み、提示されたテーマにそって1日から数日で1本のゲームを完成させます。

先週開催された「Summer Game Jam 2014」は、IGDAイスラエル支部再建のさいに設立された非営利団体GameISによるゲームジャムです。開催された国はイスラエル、ドイツ、スペインの3か所で、開催理由は「夏だから!夏を祝福すべきだから!そして僕たちはゲームを作れるから!」と、なんともラフな感じとなっています。一方で今年1月に開催されたGlobal Game Jamなどは、480以上の国と地域で開催された世界最大級のゲームジャムイベントであり、国内からも多数のデベロッパーが参加していました。

肩肘張らない小規模なものから世界中の開発者が集結する大規模なものまで、慣習にとらわれないのがゲームジャムの魅力のひとつです。

 

著名な開発者らがコンビでゲームジャムをするドキュメンタリー映像「Super Game Jam」
著名な開発者らがコンビでゲームジャムをするドキュメンタリー映像「Super Game Jam

 

デジタルハリウッド大学が昨年7月に開催した「PlayStation Mobile GameJam 2013」は、PlayStation Mobileプラットフォーム向けのタイトルを30時間で完成させるゲームジャムです。

ゲームジャムには、PlayStationをもつソニーのようなハードウェア企業が協力するケースもあれば、開発会社Double Fine Productionsが毎年主催するAmnesia Fortnightのようなものもあります。Amnesia Fortnightは2週間でゲームのプロトタイプを製作する開発コンペティションで、現在までに『Hack"n"Slash』や『Iron Brigade』など製品版タイトルを輩出しました。多数のプロトタイプを製作し、実際にリリースできるゲームをしぼりだすことを目標としているのが特徴的です。

Amnesia Fortnightのみならず、ゲームジャムから誕生したアイディアがそのまま製品化され、ゲームとして販売されることが少なくないことは注目に値します。たとえば『Broforce』は2012年のとあるゲームジャムイベントにて開発された作品ですし、ここ最近"おバカシミュレーター"の元祖として世を賑わせている『Goat Simulator』もCoffe Stein Studios内部でおこなわれたゲームジャム出身の作品です。自由でユニークなアイディアをつめこめるゲームジャムは、奇抜なアイディアを実現できるインディーゲームと相性がよく、今後も目が離せない分野といえるでしょう。

 


『Gone Home』を彷彿とさせるSFホラー

 

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タイトル名: 『Quadrant
ジャンル: 70年代SFホラー
開発: Quadrant Horror Game
発売日: 未定

期待のSFホラー『Routine』がなかなか発売日を発表しないなか、あらたにインディーの一人称視点ステルスホラーゲーム『Quadrant』が登場しました。『Routine』と同じく古めかしい宇宙SFの香りかおる1979年、NASAの極秘研究所を舞台としています。公開されているティーザートレイラーは、インディーホラーゲームでありがちな「脅威」が最後まで姿を見せない内容です。しかし興味深いのは同作が『Gone Home』で見られたような「オブジェクトを通してのストーリー語り」にフォーカスし、マルチエンディングを採用している点でしょう(トレイラーではオーディオログを聞きつつ、ひろったスライドを再生している様子が確認できる)。プレイヤーはドキュメントやスライド、フィルム、オーディオログなどをあつめ、人ならざるものから逃げつつ、物語の核心に迫っていくのです。『Dead Space』以降流行りのHUD非搭載も取り入れており、P.A.I.Cと名付けられたアナログ式のコンパニオン装置が3D空間にインベントリなどの情報を表示します。没入型のホラーゲームとして基本はおさえているようです。

 


禅・ミニマル・弾幕避け

 

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タイトル名: 『Soft Body
ジャンル: 弾幕アクション
開発: Zeke Virant
発売日: 2015年初頭

『Soft Body』は瞑想的な音楽世界を舞台にフリーローミングで弾幕を避けていくアクションゲームです。プレイヤーはヒルかヘビのようなやわらかい物体「ソフトボディ」と「ゴーストボディ」をツインスティックで同時に操作します。エリア上に表示されたブロックに触れ塗りつぶすのが目的です。興味深いのは、弾幕避けというチャレンジングなジャンルにもかかわらずリラックスしたムードがあることと、美麗なサウンドです。開発者のZeke Virant氏は「プレイヤーが挑戦する余地を残しつつ、失敗のフラストレーションを感じないような"弾幕天国"をめざしている」と伝えています。ニューヨーク大学のゲーム学習部門Game Center在学中からZeke Virant氏1人で開発が進められている『Soft Body』は、2015年初頭にリリース予定です。現在Steam Greenlightに登録されています。

 


ズル前提の対戦FPS

 

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タイトル名: 『Screencheat
ジャンル: 画面分割型対戦FPS
開発: Samurai Punk
発売日: 未定

オンラインマルチプレイヤーの普及により画面分割型の対戦ゲームは現在ほとんどみなくなりました。『ゴールデンアイ 007』などを筆頭に、画面分割型の対戦FPSでは相手がどこにいるのかわかってしまうという問題点がありましたが、これを逆手にとったのが『Screencheat』です。『Screencheat』は一見よくある対戦型FPSにみえるものの、ローカルおよびオンラインプレイ時でも画面分割でプレイする点が最大の特徴となっています。さらにプレイヤーは画面上に表示されず透明人間となっており、おたがい姿を確認できません。画面上に表示された他プレイヤーのプレイ映像をたよりに、おたがいの位置を探ります。同作は2014年Q4にリリース予定となっています。

 


今週のピックアップは『Quadrant』

 

とくにSteam GreenlightやKickstarterなどで、1人称視点ホラーアドベンチャーは人気のジャンルです。ただ恐怖演出をくっつけただけの有象無象も少なくありません。しかし『Quadrant』は自身でさまざまなドキュメントやオブジェクトを調べる動的なメカニックを採用しています。謎解きがどの程度の難易度となるのか、謎の脅威からの逃走がたんなる演出におさまらないかなど不安要素もいくつかありますが、続報を楽しみにしたいタイトルの1つです。

 

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。