『アスタブリード』 演出の基準を押し上げた傑作同人STG

アスタブリード』は同人ゲームサークルのえーでるわいす制作のロボットアクションSTG。2013年12月31日のコミックマーケット85で発表、翌年1月17日にはPlayism、さらに5月31日にはSteamから配信された。プラットフォームは現在のところPCだけだが、2014年内のPS4でのリリースが決定している。価格はダウンロード版が1500円/14.99ドル。サウンドトラック付きのパッケージ版は各種同人ショップで委託販売されている。

Steam版とそれ以外のバージョンは実績システムが異なるだけで、ハイスコアランキングも統合されている。体験版から追いかけていた筆者はパッケージ版をプレイした。3段階ある難易度のうち「イージー」と「ノーマル」をノーコンティニュークリアをしている。

 


実力派サークル、渾身の作品

 

えーでるわいすはこれまでにもPlayismやSteamにおいて『エーテルヴァイパーリマスター』や『花咲妖精フリージア』という作品を発表してきた実力派のサークルだ。またコミックマーケットに出展する同人ゲームのまとめ動画をボランティアで製作したり、今年4月にボストンで行われたPAX Eastに出展したりと積極的に活動している。

実力派サークルの制作する新作STGということもあり同人STGのファンからは長いあいだ期待されていたタイトルであった。コミックマーケット等で頒布されてきた体験版のクオリティは群を抜いたものであり、筆者も2012年の夏の頃から完成を待ちわびていた。完成したのはその1年以上後であり、結果として約2年半という長い開発期間がかけられた作品となる。5回以上リリースされてきた体験版では毎回操作や攻撃システムが変化しており、その苦労のほどがうかがえる。

 

気分は一騎当千。
気分は一騎当千。

 

試行錯誤のはてにできあがった完成版は、超強力なロボットで大量の敵を撃墜するという爽快な内容に仕上がっている。美麗なグラフィックスは同人ゲームという枠のなかだけではなく、STGというジャンル内でもトップクラスの出来栄えだ。日本のインディーゲームとしてすでに海外メディアで高い評価を受けている。

一番の特徴は縦横奥とめまぐるしく変化するカメラワークと、ステージとカットシーンがシームレスにつながった演出だ。攻撃方法はショットやロックオン攻撃のほかにも近接攻撃のブレードやダッシュ攻撃、さらにEXアタック(必殺技)が用意されており、通常のSTGよりもアクション要素が強い。また残機制ではなく、時間経過により回復するシールド制が採用されている。精密な弾避けよりも、多少の被弾は気にせず超強力な自機の武装によって敵をねじ伏せていくプレイスタイルに重きがおかれている。この点からも本作はオーソドックスなSTGとは異なったプレイフィールを感じさせる。

 

ロボットアニメらしいスケールの大きさも魅力。
ロボットアニメらしいスケールの大きさも魅力。

 


大味に思えるが

 

複雑そうに見える操作系だが、丁寧なチュートリアルがあるのですぐになじむ。攻撃方法は多彩なもののクリアするためにはロックオンとブレードがメインとなり通常ショットの出番は少ない。また自動回復するシールド制であるため、被弾をそれほど気にする必要はない。序盤は適当にブレードを振りながらロックオン攻撃で敵を破壊するだけで簡単にクリアできる。さらに全体の難易度自体も高くなく、イージモードなら初見でラスボスに到達することも充分に可能だ。

この難易度の低さから、本作は普段STGをやらないプレイヤーにとっては非常にとっつきやすいと思われる。操作方法を覚えて適当にプレイしているだけで、すくなくともチャプター5のボスまでは誰でも到達できるだろう。チャプター5のボスとチャプター6のラスボスだけは極端にパターン性が強い敵弾が登場するが、それ以外はほぼアドリブで進めるのだ。

 

奥行きがある敵も補足するロック攻撃が強い。便利すぎる。
奥行きがある敵も補足するロック攻撃が強い。便利すぎる。

 

だがこのとっつきやすさは、やりごたえのなさと表裏一体である。STGの楽しみかたの一つとして、道中やボスの攻撃パターンを習熟することでプレイヤー自身が上達することがあげられる。しかし本作では攻撃面でも防御面でも自機が非常に強力であるため、プレイヤーの成長を感じさせるポイントは少ない。弾避けやパターン構築に重点を置くSTG好きには、かなり大味な印象を受けるだろう。また、カジュアルなプレイヤーにとっては、一度クリアしてしまえば再度プレイする理由が見当たらないと感じるかもしれない。

しかしそれは過去のSTGに縛られた見方なのかもしれない。たしかに操作を覚えてしまえば簡単に進めるのだが、ザコ敵を大量にロックして破壊、中型機に接近してブレードで切りきざむというアクションは爽快だ。昨今のSTG界隈の「攻略」構文とは無縁ではあるが、ロボットアニメの主人公になった気分を存分に楽しませてくれる。

 


これはロボットアニメシミュレーターである

 

実際にえーでるわいすスタッフの"なる"氏は、本作を演出重視のシューティングとして作ったと発言している。

一応『エーテルヴァイパー』の精神的続編っていう流れにしようってのがあって、あとは昔の演出シューティングを今作ったらどうなるのか?って部分を意識しています。たとえばメガCD版『シルフィード』のスタッフが今新作を作ったらこんなゲームになるんじゃないか?っていう。(中略)ほぼ常時操作可能でありつつ演出を両立させるという目標があって、それは達成できたかなと思っています。
『シューティングゲームサイドVol.9』(pp.142-143)

また過去に発表されてきた体験版からもこの演出重視の姿勢は見受けられる。というのも、攻撃や操作のシステムは毎回変化してきたが、スクロールの方向やカメラワーク、そしてそれをつなぐカットシーンといった演出部分がかなり早い段階から完成している。迷いは感じられない。

 

シームレスなカットシーン。
シームレスなカットシーン。

 

そして「常時操作可能でありつつ演出を両立させる」という点では、本作は完全に成功している。大量の敵機を強力な自機でねじ伏せていく圧倒的な爽快感。敵味方が入り混じる派手なエフェクト。人類の存亡をかけた最終決戦という王道のストーリーと、ケレン味あふれる演出の数々。これらの映像が切れ目のない形で体験できる。通しプレイで30分というボリュームも、まさにロボットアニメの最終回といった感じだ。

さらに全編フルボイスのキャラクター会話、人型ロボット同士の一騎打ちや艦隊戦のカットシーン、ノベルゲーム的表現による主人公の心理描写といった演出の数々は、STGというジャンルの中では桁外れに豪華なものだ。メカニズムやプレイフィールの観点から「これはSTGなのか?」と問うことがバカバカしくなるほど、本作は清々しいまでに王道で爽快でコミカルで燃えで萌えなロボットアニメを体感させてくれるのだ。

そう、最近の流行りからいえば『アスタブリード』は「ロボットアニメシミュレーター」なのだ。ただし、それは極めて高品質である。

 

ロボットアニメシミュレーターには萌えもある。
ロボットアニメシミュレーターには萌えもある。

 


STGとして楽しむには意志が求められる

 

ではゲームプレイも燃える内容かというと、そうとは言い切れない。上述したとおり、本作の難易度はひかえめであり、敵の攻撃パターンも単純なものだ。豪華な見た目のロックオン攻撃は、ロック中の通常ショットの威力が減るデメリットはあるが、狙い撃つ必要がない便利な武装である。ブレードは強力な威力なうえに、大部分の敵弾を消せる。適当に振り回しているだけでも、たいていの場面をしのぐことができる。さらに自動回復するシールドはカットシーンでも回復するし、ボス戦では持久戦に持ち込むことで有利になる。

基本的にハイリスクハイリターンな選択肢がなく、自機もあまりに高性能だ。ロックオンを展開しながらブレードを濫用する操作に慣れてしまえば、ほとんどの状況に対処できるだろう。コンティニュー回数にも制限がなく、クリアするだけでは上達の実感がまったくわかないだろう。

しかしながら本作が演出に偏重した味気ないSTGかといえば、そうでもない。

 

スコアアタック向けに稼ぐポイントは用意されている。
スコアアタック向けに稼ぐポイントは用意されている。

 

まず、スコアアタックの要素はシンプルながらもそれなりに楽しめる。ショットやロックオンで敵機を倒すことでスコア倍率を上昇させる。そしてブレードやEXアタックで敵機を倒すことで、素点に倍率がかかり精算されるのが本作のスコアシステムだ。スコア最大倍率で敵を一掃するのは心地よい。とくにチャプター2の隕石地帯やチャプター3の艦隊戦などでは多くの敵機が登場するため、スコアを意識したプレイをするとより楽しめる。だが、ボス戦のスコア要素はスピーディーな撃破のみであり、この点は少々ものたりない。パーツ破壊などによるスコア加算や攻撃パターンの変化などがほしかった。

そして実績解除の要素だ。実績にはそれぞれの難易度のクリアやノーコンティニュークリアといった基本的なものから、同時に50個の対象をロック、ボスの攻撃をブレードで跳ね返すといったものが用意されている。後者のような実績は、普通にプレイしていると使わない攻撃パターンも含まれるため、プレイスタイルに多様性が生まれるきっかけとなる。

 

設定資料、3Dモデルの閲覧なども用意されている。
設定資料、3Dモデルの閲覧なども用意されている。

 

スコアを意識することで通常のプレイにはなかったパターン構築が浮かび上がる。また、実績を意識することで活かしきれていなかった多様な攻撃手段を駆使することになる。ただし、いずれの要素にしてもプレイングに織り込むか否かはプレイヤー次第だ。作品全体をとおして初心者に優しいため、そのような面白さに気づく前にゲームプレイをやめてしまう者は少なくないかもしれない。

始めるのは簡単だ。派手なビジュアル、カジュアルに楽しめる難易度、圧倒的な演出力。ロボットアニメシミュレーターとしての真価は初見プレイで申し分なく発揮される。だがそれを超えてSTGとしての面白さに到達するには、プレイヤーの意志が必要になる。ノーコンティニュークリアはちょうどいい目安だろう。

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