終わらない冷戦と崩れない壁。2089年ベルリンを舞台にしたSFストラテジー『All Walls Must Fall』が開発中


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第404回目は『All Walls Must Fall』を紹介する。

本作はリアルタイムとターンベースを混ぜたストラテジーゲームである。物語はフィルム・ノワール調のスパイ・スリラーであり、1989年にベルリンの壁が崩壊せず、100年が経過してもなお冷戦が継続している「もしも」の世界が描かれる。東西に分かれたままの、プロパガンダ・ポスターが張り巡らされたベルリンを舞台とした、一種のディストピア物だ。

2089年のベルリンでは、長きにわたる東西陣営の硬直状態が「核投下」という最悪のシナリオにより終末を迎えようとしていた。各主要国は事態を事前に回避するべく、タイムトラベル技術により諜報員を過去に送り込む。だが諜報員たちに与えられた任務は困難を極め、タイムパラドックス(過去を改変することで生じる矛盾)に捕らわれたまま抜け出せずにいた。同じ一夜を繰り返す彼らを導き、任務遂行とループからの脱出を試みよ。

これはダークな設定により現代社会の問題を反映させた寓話であり、プレイヤーはゲームを通じて「自由」の意味を探求していく。「All Walls Must Fall」。自由への道を阻む壁は、すべて倒壊すべきなのだ。

国家存亡に関わる重要任務に当てられた人材だけあって、各諜報員は交渉術、銃撃戦、ハッキング、タイムトラベルと多彩なスキルを持ち合わせている。戦闘はリアルタイムでは数秒の間に展開されるが、プレイヤーは途中で時間を止め、ターンベース・ストラテジーのように次の一手を練ることが可能だ。自分の選択が望ましい結果を招かなければ時間を巻き戻せばよい。諜報員の一人である「カイ」はひとつ前のアクションを取り消す「UNDO」、自分だけは時間が巻き戻らない「REWIND」、逆に自分だけを巻き戻す「TRACK BACK」などを使いこなす。

ステージの敵を全滅させると、戦闘のはじまりまで時間が巻き戻り「The Drop」と呼ばれるリプレイ映像が流れる。リプレイ中はクラブミュージックのビートに銃撃、爆発、群衆の悲鳴が乗っかった「オーディオ・ビジュアル」バレエを堪能させてくれる。サウンド・トラックはプレイヤーが取った行動に応じてミクスチャーが変動するという。

そのほかNPCとの会話により戦闘を回避したり、金属探知機やコンピューターのハッキングにより敵アジトに忍びこんだりと、幅広いプレイスタイルに対応している。正面突破でゴリ押ししてもよいし、スパイらしく話術とステルス行動で乗り切ってもよい。本作にインスピーレーションを与えた作品群には『XCOM』『Syndicate』といったストラテジーゲームだけでなく、時間操作のある『Braid』『SUPERHOT』、リズムとアクションを組み合わせた『REZ』『Crypt of the Necrodancer』も含まれており、『All Walls Must Fall』の各ゲーム要素からはこうした作品の片鱗が見えてくる。

また幅広いプレイスタイルに加え、マップのプロシージャル生成により高いリプレイ性を狙っている。キャンペーンモードは1周あたり数時間でクリアできる規模感とのこと。コンパクトではあるが、プレイするたびに異なるミッションが課せられ、また同じ結末に至るとも限らない。

開発元はドイツ・ベルリンに拠点を置くインディーデベロッパー「inbetweengames」。Yager Developmentの『Spec Ops: The Line』プロジェクトに携わったメンバー3人が設立した新スタジオである。「inbetweengames」は3月22日に本作のKickstarterキャンペーンを開始。本作はすでにMedienboard Berlin-Brandenburg(ドイツにて主に映画・メディア事業への出資を行っている団体)と、Epic Gamesからの出資を受けており、Kickstarterキャンペーン自体の初期目標資金額は1万5000ユーロ(約180万円)と少額である。

集めた資金はクローズド・アルファテストの実施に当てられる。テスト参加者(キャンペーン出資者限定)からのフィードバックを踏まえた修正およびコンテンツの追加を経て、より良い状態でSteamでの早期アクセスを開始することが目的となっている。

『All Walls Must Fall』の対象プラットフォームはPC/Mac/Linux。クローズド・アルファテストは今年5月、Steamでの早期アクセス販売は今年9月を予定している。