『ファイナルファンタジーVII リバース』野村哲也氏インタビュー。リメイクにおける説得力の持たせ方、原作ファンに起こり得る解釈違いにどう向き合うかを訊いた

 

ついに2月29日発売日を迎える『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、FF7 リバース)。オリジナル版にて登場したスタイリッシュなキャラクターたちは、20年以上経った今なお人気を博しており、『ファイナルファンタジー』といったらクラウドやセフィロスだという声も多いだろう。

今回は『FF7』(以下、FF7)にキャラクターデザインとして携わり、前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7 リメイク)をはじめとしたシリーズに深く関わる野村哲也氏にお話をうかがうことができた。今作において野村氏が果たした役割や、1997年のタイトルを『FF7 リバース』として復活させる上での説得力の持たせ方などに深く切り込む内容となっている。ぜひ最後まで読んでほしい。


──まずは、2月29日の発売を控えてのお気持ちを教えてください。

野村哲也(以下、野村)氏:
とにかくみなさんに早く遊んでほしいですね。

──野村さんはじっくり作られるタイプというイメージがあったので、少し意外でした。『FF7 リバース』だからこそ特に早く遊んでほしいという気持ちが強いのでしょうか。

野村氏:
というより、毎回そうですね。僕の関わる作品はすごく待たせると言われがちですが、本当はユーザーさんを待たせたくないんです。チーム内で、発売日を決める意見交換があるときは、安全策を提案されることも多いですが、僕は毎回なるべく早めでギリギリを探るタイプです(笑)

──クリエイティブ側なのに、急にプロジェクトマネージャーのような発言をされている……(笑)

野村氏:
そうなんです、意外とそっち寄りで(笑)でも、ともかく早く遊んでほしいんですよ。温かいうちに食べて欲しい。

──ちなみに『FF7 リバース』では、野村さんはどのような立場で、どの部分の開発を重点的に見られたのか教えていただけますか。

野村氏:
基本的には『FF7 リメイク』のときに関わっていた作業は引き続きやりつつも、前作でベース部分は出来ていたので、新システムなどは現場に任せる形です。

『FF7』の世界も派生作品など広がりが生まれているので、1つのタイトルを集中的に見るというよりは、全体を通して見ているという立ち位置です。ただ、細かい部分にほぼ関わらないという訳ではなく、作品の肝心なところはディレクションしたり、全体の対応をしたりしています。

──野村さんはアクションゲームの手触り感を重視されるイメージなんですが、ストーリーや世界観とゲームシステムのどちらを見ることが多いのでしょうか。

野村氏:
『FF7 リメイク』の時点で、バトルシステムのベースはほぼ出来ているので、今回のバトルシステム周りは基本的に担当チームに任せている状態です。どうしてもこだわりたい部分はたまに伝えますが。


──『FF7 リバース』ではオリジナル版『FF7』に存在しなかったキャラクターも登場しますが、新たなキャラクターを出そうと考えた意図をお聞かせいただけますか。

野村氏:
名前が付いたキャラクターとしては初登場という形ですが、そういう役回りの人は『FF7』にも存在していたんです。今回はキャラクターの頭身が上がったということもあり、脇を固めるキャラクターたちにもある程度の肉付けをしていないと、本当に会う人会う人が、モブキャラみたいになってしまうんです。それだとストーリーに奥行き感が出ないので、関わりを持つ人たちはオリジナル版では薄めの人物だったとしても、肉付けをしっかりしましょうという方針です。世界のディテールが細部まで描かれることにより、ストーリー的にも新たに見えてくるものがあるだろうという意図から、新たなキャラクターも登場させています。

──ありがとうございます。たしかに、オリジナル版では描かれてはいなかったものの、プレイヤーが想像する行間にいたキャラクターなのかなという印象を受けました。

追加要素の部分でいうと、サイドジュノンという新たな街も『FF7 リバース』には登場します。新しい街を実装する意図についても、なにか聞かせていただければ。

野村氏:
『FF7 リメイク』でも『FF7』では描いていなかった場所や地形を描いたり、人物を配置したりすることで、世界が濃密になるというか、ミッドガルという都市にリアリティを持たせる役割を果たしていたと思うんです。

オリジナル版でのジュノンは、当然ですがミッドガルより薄く描かれていたので、今回の『FF7 リバース』のグラフィックで描くとなった際には、人物の配置や街の構造、そういうところにもすべて説得力が必要になってきます。つまり、『FF7 リバース』の世界に、より多くの説得力を持たせる世界構造を作るために新たな場所や建物を実装しています。

元々あったものをモチーフに、現代のデザイン性で拡張していく形で制作していますので、オリジナル版と比べて構造や見た目が大きく変化していたとしても、『FF7』を遊んだことがあるユーザーさんなら「はいはい!こういう感じね!」と受け取ってくれるかと思います。


──オリジナル版『FF7』が伝説的な作品ということもあり、思い入れの強いファンからすると追加要素に対して、いわゆる「解釈違い」が発生しうると思います。その点に対して恐れはありますか。

野村氏:
ありますよ。そもそもこのリメイクプロジェクトのスタート時に、自分と北瀬と野島さんの3人で話し合ったんですが、野島さんはその点をすごく気にしていたんです。オリジナル版から20年以上の時間が経っている。そのあいだに「プレイヤーそれぞれの『FF7』」ができあがっているんじゃないかと。しかし、「だからこそ」という挑戦を今回やりたいと思っています。それは3部作を完結までやっていただけると納得していただけるのではないかと考えています。

──『FF7 リバース』では、ザックスなどが登場することがトレイラーなどに映ることもあり、前作よりもさらにオリジナル版とは違ったストーリー展開になることが予想されます。そもそも大筋としては同じだとしても、リメイク3部作をこれまでとは違うストーリー展開にしようと考えた理由について訊かせていただきたいです。

野村氏:
そうですね。一つの理由は前述にもある、「それぞれの『FF7』」という部分です。また、前作でいうところの「フィーラー」は、オリジナル版には存在しませんがメインストーリーに大きく絡んでくる要素ではあります。たとえば、オリジナル版をプレイした上で、リメイク3部作を遊ぶユーザーさんもいるでしょうし、逆に『FF7』は遊んでいないけど、リメイクから入る方もいる。もっと言うと、今作のリバースから遊びはじめるユーザーさんもいると思うんです。

我々としては、それぞれ入り方が違ったとしても、同じ驚きを共有して欲しいという想いがあります。オリジナル版で仕掛けたサプライズは、当然原作をプレイしたユーザーさんであれば知っていると思います。ただ、リメイク3部作を原作の答え合わせをするためだけの内容にはしたくなかった。あれがこういう風に変わるんだ、という視点で遊んでもらうだけではなく、『FF7』のお話を知っている人でも、この先どうなるのか分からないという感覚で楽しんで欲しいと思っています。

そのため本来の道筋やストーリーから大きくズレはしないのですが、どんなユーザーさんにも等しくワクワクした体験をしてほしいという想いから、新たな要素を入れています。


──『FF7 リメイク』を遊んだ感想として、やはりラストシーンの畳み掛けが強烈だった印象があります。発売前の現段階では『FF7 リバース』のラストについて深くは聞けませんが、やはり仕掛けを仕込んでいるのでしょうか。

野村氏:
『FF7 リメイク』のプレイフィールとしては「ほとんどオリジナル版のままじゃない……?」という、小さなクエスチョンをつけながら遊んでもらって、ラストで驚きを生みたいという構成にしていました。

ただ今回の『FF7 リバース』に関しては、プレイヤーがどう思うのかは正直読めないです。たとえば、質問にあった前作のラストの演出は僕が仕掛けていますが、今はあまりお話できないので、前作『FF7 リメイク』のラストとは違った……衝撃があるとだけお伝えします。果たしてそれをみなさんがどう受け止めるのかは前作以上にドキドキしています。ネタバレに触れる前にご自身で早くプレイしていただきたいです (笑)。

──最後に野村さんといえばその作家性が注目されやすいです。仮に“野村哲也イズム”があったとして、それが『FF7 リバース』にどう盛り込まれていると思いますか。

野村氏:
それがね、分からないんですよ(笑)手がけた作品の考察や感想動画をちょいちょい見るんですが、それらを見ていて、自分がシナリオ書いてないようなセリフにも“野村哲也イズム”と言われているんです。面白いですよね。

“野村哲也イズム”って結局、その作品に僕が絡んでいるか、絡んでないかによって受け取り側が積み上げているものの気がしていて。本当にまったく関係ないようなパートを遊んでいるユーザーさんが、「ここに野村さんらしさを感じます」と言っていることもあるので、「そこは俺じゃないなぁ……」なんて思いながら(笑)。ただ、それ自体を否定するつもりはなく、感想や体験は、その方のものですからゲームをプレイして何かしら感じるものがあったなら、それはそれでいいかと思っています。いずれにせよ、楽しんでいただければうれしいですね。

──(笑)”野村哲也イズム”がなんなのかについては、まだまだ研究の余地がありそうですね。本日はありがとうございました。

[聞き手・編集:Yuuki Inoue]
[執筆・編集:Yusuke Oizumi]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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