Nintendo Switchの100円セールは『グーニャファイター』に何をもたらしたのか? 販売元MUTANが語る、知ってもらうことの難しさ

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東京と埼玉に拠点を構えるゲーム会社MUTAN。大きなゲーム会社ではないものの、受託開発の実績は多く、その開発力は業界内でも定評がある。そんなMUTANは、『グーニャファイター』の開発元/販売元としても認知されている。Nintendo Switch版『グーニャファイター』は、100円セールを展開し注目を集めるとともに、賛否両論を巻き起こした。そんなMUTANはしばらく100円セールを実施しておらず、今後もしないという。MUTANとはどんな会社なのか、そして低価格セールはMUTANと『グーニャファイター』に何をもたらしたのか。このたび弊誌はMUTANの代表取締役である渡邊 弘之氏にお話をうかがった。


渡邊 弘之氏


有名少年漫画原作ゲームのチームから生まれた会社

────本日はお時間いただきありがとうございます。まずはMUTANという会社のご紹介をお願いできればと思います。

渡邊 弘之(以下、渡邊氏):
MUTANは、2007年に設立されたコンシューマーソフト(以下、CS)のゲーム開発を中心に活動しているデベロッパーです。CS以外だとスマホゲームや映像制作を少しお手伝いしていますが、基本的に主軸は2007年からずっとCSのゲーム開発です。

────ありがとうございます。渡邊さまのキャリアについても教えていただけますか。

渡邊氏:
僕は、デジタルエンタテインメントアカデミーという、今は無き専門学校の卒業生なんです。そこで在学時、マスターコースという研究室みたいなところに選抜メンバーとして入りました。当時のアマチュアゲームショウのコンテストで技術賞をいただくなど成果を残してから20歳でキャメロットというゲーム会社に就職しました。

キャメロットでは、『マリオゴルフ ファミリーツアー』(ニンテンドーゲームキューブ)や『マリオゴルフGBAツアー』(ゲームボーイアドバンス)というタイトルに携わり、その後『マリオテニスGC』(ニンテンドーゲームキューブ)の開発にも参加しました。1年半で3本のマスターを仕上げる、かなり忙しい時期にキャメロットにいたんです。

この3本に携わった後、キャメロットを退社して、そのあとはしばらくさまざまな会社さんとフリーランスみたいな感じで契約して活動してきました。あるとき、PS2向けに開発された有名な少年漫画原作のゲームで初めてメインプログラマーをやらせていただいて、このときのチームがだいたい全員フリーランスのチームだったんですよ。しかもみんな同世代で仲良くなり、このチームで何か大きいことしたいね、ということで株式会社MUTANを立ち上げました。

────なるほど、ありがとうございます。MUTANさまは、受託開発と自社パブリッシング両方をやられていますが、受託開発における代表作と呼べるものは何でしょうか。

渡邊氏:
直近で一番わかりやすいタイトルでいうと、『ファイナルファンタジーXV』のダウンロードコンテンツ「エピソード アーデン」の開発を、ほぼほぼまるっと弊社でやらせていただきました。

あとはCGだけの協力にはなりますが、コーエーテクモゲームスさんの『アトリエ』シリーズでは、メインキャラクターのモデリングなどをやらせていただいていて、最近だと『ライザのアトリエ』の主人公ライザはとても好評をいただいております。一方で弊社はオリジナルゲームの開発と販売でも力を入れておりまして、最新作で言うと『グーニャファイター』は一定の評価を得られたのかなと思っております。

────ありがとうございます。MUTANさまのゲーム会社としての開発カラーなどはありますでしょうか? たとえば、CGが強いといった。

渡邊氏:
これはよく聞かれますが、答えに困るんです(笑)受託中心の時代が長かったので「これができるからこれがやりたい」とか「これが得意だからこうしていきたい」というより、できることは全部何でもやってきたという感じです。ただ最近は、カラーが少しずつ出てきているようで、「JRPGが作れるデベロッパー」といっていただけることが多くなってきたかなと思います。

実績がなかったころから、同じように特徴は何ですかと訊かれては、そのたびに特にないです、と答えてました。実績がない状態で「特にない」と答えると、強みがないみたいな意味合いで捉えられがちですよね。ただ、おかげさまでもう15年ぐらいやってきて実績もできてきたので、今は「特色は特にないです」と言っても、何でもやれるんだなと見てもらえる。何もないではなく、何でもできるという、好印象の方に繋がるようになりましたね。

ゲームを発売することの難しさ

────ありがとうございます。MUTANさまの自社パブリッシュ作品でいうと、『Sky Ride』とか『ひっくりガエル』といった作品も出されていますよね。それぞれの評判やセールスを、言える範囲でざっとご紹介いただけますと幸いです。そもそもなぜ自社パブリッシングを始めたのでしょうか。

渡邊氏:
MUTANでは立ち上げ当初から、オリジナルゲームを少しずつでもいいから作っていきたいねという話がずっとありました。実際に、何度か小規模なプロジェクトを立ち上げて、片手間で作っていたんです。ただやっぱり、受託の仕事が忙しくなるにつれ、人員がそちらにシフトしていって、なかなか実現しない、発売に至らないという実情がありました。

オリジナルゲームの第1弾は『Sky Ride』という3Dアクションシューティングでした。今作に関しては、僕は参加せず、プログラマーとデザイナーの2人だけで作ったんです。その2人に僕が要望していたのは、どんな形でもいいので、とにかく発売することでした。面白いゲームを作って、たくさん売るというところに到達する前にまず、僕たちはゲームを自分たちの力で作って仕上げて発売できるんだということを見せる必要がありました。

どのようなゲームにするかという議論はあったんですが、見た目は3Dでしっかりと作りつつ、ファミコン時代のゲームのような構成でいこうとなりました。ワンボタンでゲームが始まって、ゲームオーバーになるとタイトルに戻る。これだけでいいから、とにかくゲームとして最低限のフローを組み立てて、ゲームを作って発売する。発売ができればこのプロジェクトはもう成功だから、そこを目指して頑張ろうっていうことで、短期間、2人で制作したゲームでした。

※ 『Sky Ride』はPS4/Nintendo Switch向けに発売中


『Sky Ride』の発売にあたっては、ゲームをパブリッシュするとはどういうことかというイメージはもっていましたし、ゲームはこれまで何度も作ってきたのですが、やっぱり知名度もなく誰にも知られていない状態で世に出てみるとまったく売れないですね。そこで、第一作目の発売で生まれた課題をクリアしていこうと始まったのが、ボードゲームメーカーさんからお声がけいただいた『ひっくりガエル』というタイトルです。

『Sky Ride』にはプランナーを入れなかったので、ゲームのどこを遊ばせるかとか、ユーザーが何を楽しむのかというのをわかりやすくする点が欠けていたんです。しかも、受託開発に手一杯で、なかなかオリジナルIPに人を入れることができず、弊社のプランナーが当時ちょっと少なかったこともあって人員を割けませんでした。そこで、『ひっくりガエル』では、前作で抱えていたプランナーがいないという課題に取り組みました。

『ひっくりガエル』は、もともとはボードゲームであるものをデジタル化したタイトルなので、ボードゲームとして存在する以上、既に遊び方は確立されています。つまりゲームルールのプランニングを省略できるために、無理にプランナーを立てなくもよかったんですね。しかし、『ひっくりガエル』の売れ行きについてはまたこれも残念ながらそんなにたくさんは売れていない状況です。


ここで課題がまたひとつ見えてきました。2本を作ってみて気付いたのが、我々プロモーション何もしなかったねということ。やっぱりうちは「いいものを作れば売れる」みたいな考えの、職人っぽい人たちが多いデベロッパーなんです。恥ずかしがってプロモーションをやってこなかったんですけど、宣伝はやるべきだよね、というところにたどり着きました。

『グーニャファイター』では、片手間のスタッフによるものではありますが、プロモーションチームを立ち上げて、販売や広告、プロモーション戦略をしっかりと練っていきました。『グーニャファイター』の規模は『Sky Ride』とか『ひっくりガエル』よりは大きくて、ちょうど『ファイナルファンタジーXV』の「エピソード アーデン」の開発が終わったときの手の空いたまとまった人数で開発したので、弊社のオリジナルタイトルとしては割とリッチなものになったかなと思っています。

────ありがとうございます。「エピソード アーデン」を手がけた開発チームというと、それこそいわゆる社内のエース格の方が多いと思いますが、その戦力を丸ごとオリジナルタイトルにアサインするのは結構勇気がいるのでは。

渡邊氏:
そうですね。ただこれ、実は勇気を出してアサインしたというより、流れで生まれた偶然なんです。というのも「エピソード アーデン」配信後に、開発を進めていた大きな案件が途中でなくなってしまったんです。

そうした事情もあって急に人が余ってしまったので、とりあえず『グーニャファイター』をやってくれという流れになりました。

ちなみに『グーニャファイター』には、僕がキャメロットに入社したときにいたプランナーの先輩も携わってます。僕らが「エピソード アーデン」を作っているときに、MUTANに合流してもらったんですが、さっき話したように次の案件が途中で終わってしまっていたんですよね。でもその人から、暇だからオリジナルゲーム作って良いかと相談されていたので、かえって『グーニャファイター』の開発が進んだところもあります。
なので『グーニャファイター』は、『マリオゴルフ』とか『マリオテニス』のプランナーやってたような僕の先輩が、若い子捕まえて勝手に作り始めた部分もあるということですね(笑)

────『Sky Ride』も『グーニャファイター』も、『アトリエ』シリーズなどを手がけた人気コンポーザーの浅野隼人さんが担当されていて、不思議でした。同時に、なぜそうした点をプッシュしなかったのか疑問をもっていました。自分が浅野さんのファンというのもありますが……(笑)

渡邊氏:
そうですよね。浅野さんは、元コーエーテクモゲームスのガストブランドにいらっしゃいました。そのときは僕も、長野のガストさんの中に入って開発をお手伝いしていたんです。その頃浅野さんとはよくおしゃべりする仲で(笑)それからすぐに浅野さんが独立されたので、Nintendo Switch版『Sky Ride』の音楽制作をお願いしました。

先ほど話したように、当時はプロモーションの何たるかをまったくわかっていなかったので、浅野さんの曲をゲームに使えて、それで満足して終わっていました。お恥ずかしいです。弊社は自分たちをあんまり大きく見せるみたいなのが得意じゃない、僕も会社もそれが課題でした。

『グーニャファイター』を100円で売った理由

────そういう意味では、『グーニャファイター』は話題性の獲得には成功しましたよね。セールが主に注目を集めましたが、どのように計画を立てたのでしょうか。

渡邊氏:
『グーニャファイター』は、先程話したようにスタッフもそれなりの数がいて、プロモーションもしっかりやろうというタイトルでした。その一環として、Nintendo Switchでリリースするのであれば、あらかじめダウンロード、今でいう事前予約はやったほうがいい、それからあらかじめダウンロードをしてくれた人に関しては、ある程度セール価格にして、発売日を楽しみにしてもらうのが、ベターだという話を耳にしました。

ですので、定価は2750円のところ半額程度であらかじめダウンロード販売をしました。ただ、実はここでいろんな誤算がありまして。任天堂さんと当時連携をしていたスタッフとの間で食い違いがあり、発売前のあらかじめダウンロード販売中のセール設定はできたんですけど、発売日から急に定価に戻ってしまった。


あらかじめダウンロード販売中のときはある程度数字が出ていて、社内でも喜んでいたのですが、定価に戻った瞬間に数字が一気に減って、ユーザーが急にサッと引いていく感じが目に見えてわかってしまった。このままユーザーが引いていってしまうと、『ひっくりガエル』とか『Sky Ride』みたいに、一部の人にしか知ってもらえない状態でまた終わってしまうなという危機感を感じました。そこで、夏休みに勝負に出ました。

計画としては、まずもう一度あらかじめダウンロードと同じ価格でセールを打とうという話になりました。ただ、そこで当時プロモーションを担当していた人間から、同じことをして盛り上がることはないんじゃないかと意見が出まして、ちょっと思い切ったことをしないと、ユーザーに知ってもらえないという話になりました。

ということで、思い切って、まだ当時日本ではあまり例がなかった「100円でゲームを売る」ことにしました。当時の100円セールの例としては、もともと定価が安いコンパクトゲームしかなかったんです。僕らのような価格の作品が、100円セールするパターンはなかった。それでも、誰にも見られずに消えていく、終わってしまうのなら、利益度外視で100円セールをやってみようということになり、夏休みに100円セールを実施したという流れになります。

それが功を奏して、当時まだ日本では大胆なセールをするNintendo Switchのゲームはなく、夏休みであるということや、ライバルになり得るタイトルも今ほどは多くなかったこともあり、大きな注目を集め、2019年8月のNintendo Switchの月間ダウンロードランキングで1位を獲りました。


────ただし、100円で売る手法を批判する声も数多くありました。

渡邊氏:
いろんな意見をいただきました。特に業界内からの反発は大きかったですね。仲のいい人からも、あんなことやっちゃ駄目でしょという指摘をもらいました。一方で、100円でこんなにボリュームがあって面白いゲームがあると喜んでくれる、好意的なユーザーさんもいました。いきなり100円にするゲームなんて、どうせたいしたものではないと批判する声も見ましたね。話題になった影響でいろんな人に知っていただいて、一方でいろんな意見も出ましたが、遊んでいただいたお客さんには割と好評だったので、結果的には挑戦してとてもよかったなと思います。

────とはいえ、当時『グーニャファイター』については批判が多かったですよね。そうした反対の声についてショックを受けてはなかったんでしょうか。

渡邊氏:
いえ、あまりショックは受けてなかったですね。良くも悪くもこんなに多くの人が反応してくれた、と喜んで受け止めてました。『Sky Ride』と『ひっくりガエル』では、世の中に無視されていたようなものなので。

────なるほど。ネガティブな反応も、反応のひとつとして嬉しかったと。

渡邊氏:
怒っている方もいて当然だと思っていましたが、攻撃されてるみたいな感触は一切自分の中にありませんでした。こういう人も出るくらいのタイトルになったんだ、よかったなというところが大きかったですね。

────めちゃくちゃポジティブですね。

渡邊氏:
うちの社員は、僕も含めて割とそんな感じです。

※ 『グーニャファイター』公式Twitterアカウントは当時、100円セールを自虐するような内容も投稿


────『グーニャファイター』の当時の2750円という通常価格は、どのように設定されましたか。

※ なお同作の定価は、のちに1500円に引き下げられた

渡邊氏:
弊社としては、受託でAAAを作れる人材が開発したゲームではあるので、ギリギリ一番高いところを狙いたいなと考えてました。まず2000円台後半というのをざっくり決めてから、具体的な価格として2750円になりました。実は大人気ゲーム『オーバークック2』は定価2750円なんです。ニンテンドーeショップで、価格でゲームを並べたときに、『オーバークック2』の隣に来るからという理由で、2750円にしました。

────そこまで考えてるんですね。新規IPのゲームで2750円というのはかなり強気ですが、セールすることも考慮していたのでしょうか。

渡邊氏:
セールも考慮した値付けです。ダウンロード専売に関しては、セールをするときに売れ、セールをしてないときにはあまり売れないことが多いんですよね。セールを使って、売れるときと落ち着くときの波を、うまく作りなさいというアドバイスをいただいていたんです。波を作る以上はある程度、価格はギリギリ高めの設定にしておかないと、苦しくなってくるだろうなというのは予想していたので、そうした経緯で2750円にしました。

────ありがとうございます。売る側としてはしっかりと考えられているとは思います。一方で定価で買った人は、100円で売られると心中複雑なんじゃないかなと思いました。そうした点はどのようにお考えでしょうか。

渡邊氏:
定価で買った人には、『Sky Ride』や『ひっくりガエル』が安く買えるセット販売をさせていただいたりしています。穴埋めというか、できる限りのサービスはしていこうと努めています。そのほかにも購入者向けのサービスはやっていて、何かしらバランスがとれるような施策は社内で考え続けていました。


────定価で買った人を突き放す意図はないと。

渡邊氏:
ないです。もちろん、返金するだとかそういうのは難しかったので、そういう意味では突き放していると感じられてしまうかもしれません。ただ、そんな中でもできることないのかは常に模索してきました。

100円セールをしたのは、過去3回です。ゲームはしっかり作ったから、とにかく注目を集めよう、いろんな人に知ってもらおうという施策でした。ただその後はしっかりと、『グーニャファイター』の元々の価値が定価の2750円であるということをユーザーさんたちにわかっていただけるような動きを、時間をかけてもいいのでしなければいけないというオーダーをプロモーションチームにしてきました。

もう100円セールをやる段階は終わった

────ぶっちゃけ100円で売った期間も含めて、『グーニャファイター』は、利益は出たのでしょうか? 赤字なのか黒字なのか、関心あるユーザーも多いかなと。

渡邊氏:
ゲームの開発は1回作って売り始めちゃうと、全部売り上げで原価がほぼかからない。プロモーション費用ぐらいしかかからないので、何をもって赤字か黒字かというところは非常に難しいです。100円セールをしたり、今定価を下げたり、さまざまな分野のコンテンツと協力したコラボDLCを追加したり……。そうしたことを経て『グーニャファイター』というプロジェクトをトータルで見ると、ざっくりいえば開発費に対して黒字で、トントンぐらいでは売れてます。

また、発売までに開発にかかったコストは、すでに回収できています。ただ、その後もDLCを作り続けたりとか、プロモーションをやり続けたりしているので、かかる費用と売上とはまだまだ変わっている状況ではあります。

────どのタイミングで、開発にかかったコストを回収できましたか。

渡邊氏:
2020年に入ってからですね。

────そんな『グーニャファイター』ですが、もう100円セールはしないとお聞きしました。なぜでしょうか。

渡邊氏:
100円セールでいろんな方に知っていただいて、その後も500円セールや3桁円台のセールは何度かやらせていただき、Nintendo Switch版は17万本以上を売り上げました。ほかのプラットフォーム展開やコラボもできるようになって、売り上げも少しずつ上がってきております。

そういう意味では、「誰も見てくれない、これを何とかしないと」という状況は脱せたと思っています。ですので、100円セールはもうやっていません。先程も話したように、『グーニャファイター』のもっている価値というものを正しく皆さんにお伝えしていくことが一番大事なんです。100円で売ることで、多くの人に知っていただくターンは終わったのかなと。『グーニャファイター』は今定価1500円なんですが、1500円でしっかりと遊べて楽しく、みんなでワイワイパーティーゲームができるものなんだよというのをしっかりと広めていく段階に入ったかなと思っています。

『グーニャファイター』だけでなく、弊社MUTANというデベロッパーの存在も100円セールをやる前に比べると、露出することが多くなりました。今回こうやってインタビュー記事を書いていただけるようになったのも、『グーニャファイター』が100円セールで皆さんの目に留まったのもあると思います。そこで終わらず、しっかりと地固めをし、我々のことを知っていただいたお客さんがある程度いる中で、今やっていることや目指しているものを証明したいと思っています。


────そう考えると、『バーチャファイター』や『ボーダーブレイク』コラボ、アーケード進出などにもメッセージ性を見いだせます。こうしたプロジェクトは何がきっかけで進んだのでしょうか。

渡邊氏:
実は結構行き当たりばったりで、フラッシュアイデアを一つ一つ叶えていくことがメインでしたね。アーケードに関しては、『グーニャファイター』はダウンロード専売で、棚に並んでないから人の目につかない、ならばパッケージを作った方がいいんじゃないかという話が前提にありました。何か人の目に付くところに置いたりとかできないかなと。そんな中ディレクターが、ゲームセンターに置いたらずっと稼働しているし良いんじゃないかと提案してくれたんです。

ゲームセンターといっても、デパートの屋上にキッズコーナーがあったりしますよね。意外といろんな人が見てくれる可能性があるんじゃないかなということで、アーケード版をやってみようという話になりました。当時タイトーさんとセガさんと、もう一つ違う基盤を作っているアーケードの業者さんと話をして、いずれも反応が良くて、最終的にセガさんのアーケード筐体にさせてもらいました。

そこから縁ができたセガさんと、何かコラボできるIPはないかと相談していたら、当時『バーチャファイター』のリブートが進んでいると聞き、コラボに至りました。加えて、それを見ていたセガさんの『ボーダーブレイク』のチームの方にも声をかけていただき、『ボーダーブレイク』ともコラボができました。計画的に展開してくというよりは、そのときそのときのフラッシュアイデアで皆さんがポジティブに動いてくれたところが大きいかなと思います。

────なるほど。ちなみにまた新たな作品を展開する際には、再び100円セールもしくは低価格セールをする予定はありますか。

渡邊氏:
低価格セール路線に関しては、正直いうとやりたくはないなと思ってます。あれはせっかく僕たちが作ったものを世の中に出したのに、誰にも知られないという深刻な問題に直面して出てきた、苦肉の策なので……。

そもそもあれをやるとき、僕らは1回負けてるんですよね。できればそうならないように、新作が発売日までにしっかり盛り上がって、ユーザーさんに期待していただいて、期待通りのものが作り上げられている状態にしたいなと思っています。今は専任の広報もいますし、「ヤバい売れない、じゃあ100円だ」みたいなことはしたくないなとは思っています。

ただ、今後の展開次第ではありますが、Xbox Game Passや、PS Plusのフリープレイ、Nintendo Switchのいっせいトライアルなど、多くの方に手に取っていただける施策に関しては検討を進めていきたいとも思っています。

────ありがとうございます。なぜかちょっとほっとしています。ちなみにMUTANさまはずばり今新作を作られているのでしょうか。

渡邊氏:
はい。弊社には“いいからゲームつくろうぜ“という社是があり、ただただゲームを作る会社なんです。柱は基本ふたつあって、一つは受託開発。大手さんから発注いただいたゲーム制作をおこなう。もう一つは、オリジナルタイトルの開発と販売。この2本の軸はしっかりと続けていきたいなと思っています。『グーニャファイター』がもう発売して2年経ちまして、いろんなプラットフォームへの移植も終わり、展開も落ち着いてきました。来年は新作を発売できるように、そしてそれが『グーニャファイター』よりも良い成果を出して、より皆さんに楽しんでいただけるような作品が提供できるといいなと思っております。

────ありがとうございます。『グーニャファイター』はMUTANとしてはかなり規模の大きな作品というお話でしたが、新作はやっぱりそれよりも規模が大きくなりますか?

渡邊氏:
『グーニャファイター』より大きいですね。最低でも2~3倍以上の規模になってます。しっかり作ってますので楽しみにお待ちいただければと思います!

────楽しみにしています。本日はありがとうございました。

[聞き手/編集:Ayuo Kawase]
[執筆 : Ryo Agawa]

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