『Star Realms』 最強の布陣を目指すデッキ改良型ゲーム

『Star Realms』は宇宙国家の戦争をモチーフにした2人対戦カードゲームだ。『Magic: The Gathering』(以下、『マジック』)・『カルドセプト』・『Dominion』に熱を上げたゲーマーは、迷わず手にされたし。例にあげたゲームと同じく、テーマはカードデッキの構築だ。強力なカードを収集し、不要なカードを取り除き、自陣営を改良して勝利を目指す。本作の魅力は、その行程を1プレイに内包したハイテンポなゲーム展開にある。なお、本作には物理版もあるが、本稿ではデジタル版を取り扱う。

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Star Realms
発売日: 2014年7月4日
開発: White Wizard Games
プラットフォーム: Windows・Mac・Android・iOS
価格: 5ドル

拡張セット『Gambit Expansion』(4ドル)が2015年3月5日に発売。

 

 

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『マジック』のプロプレイヤーがゲームを設計したということで、ファンの期待は大きかったのだろう。2013年10月にスタートしたKickstarterでの資金調達プロジェクトは、目標金額の2倍以上となる5万ドルを達成し、同年12月には物理版(左画像)が15ドルで発売された。デジタル版は、無料体験版に加え、1アカウントで全プラットフォームの製品版を入手できる。手ごわいAIとの対戦プレイ、非同期ネットワークまたはオフラインの対人プレイ、ゲームの理解を助ける全15面のキャンペーンなど豪華な仕様だ。

 

ゲームイベントの出典に注力した物理版と、お得感あるデジタル版の長所を生かした営業の甲斐あってか、『Star Realms』は数々の賞を受賞している。ボードゲーム情報ポータルサイトBoardGameGeekが選ぶ2014年ゲーム大賞では、2人用ゲーム部門の最優秀を受賞。音楽・映画・インタラクティブの祭典「South by Southwest」では2014年テーブルトップゲーム部門の最優秀を受賞した。メディアの評価も高く、2014年のボードゲームシーンで成功をおさめたといえるだろう。もちろん、評価はゲームの出来映えで勝ち得たものだ。従来作の類似品にとどまらず、新たなプレイ体験をもたらしている。

 

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シナジーの追求とデッキの圧縮

『Star Realms』はデッキ構築型ゲーム(Deck-Building Game)に該当する。プレイ中に強力なカードを収集し、自陣営を強化して勝利を目指す。本作はここに、局面にあわせ有用性の低いカードを破棄する要素を加えた。これにより強力なカードを使用する回数が増し、ゲームを優位に運ぶ力が大きくなる。ゲーム終盤に向けて敵との応酬は苛烈になり、緊張感とカタルシスをもたらす。プレイ時間の短縮にもつながり、15分足らずで決着がつく。

ゲームの概要を説明する。プレイヤーごとに、自陣営を10枚の初期カードで始める。これをシャッフルし、裏向きに重ねて山にする。自分の軍隊が待機している状態と思っていただきたい。プレイヤーごとの裏向きの山はボードゲーム用語で「デッキ」と呼び、本稿でも以降の文でその名称を用いる。

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自分の手番でデッキからカードを5枚引いて手札とし、場に出すと通貨ポイント・戦闘ポイントを得る。通貨ポイントは購入に用い、市場に並ぶ強力なカードを入手し自分のデッキに加えていく。戦闘ポイントは攻撃に用い、敵本部のヘルスをゼロにすればゲームに勝利する。このように、プレイ中にデッキを構築し、勝利条件を満たすのがデッキ構築型ゲームというジャンルの由来だ。

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本作はデッキに2つの要素を追加し、構築だけでなく、より手早く相手を倒すための改良を可能とした。ひとつは、場に2枚以上同じ色のカードがあると追加効果を得られる仕組みだ。色をしぼって収集すると、同色カードの追加効果を得る確率が増す。もうひとつは、強いカードを引く確率を改善する仕組みだ。弱いカードをデッキから排除する、または「追加でカードを引く」効果のカードを使うと、強力なカードを引く確率が増す。このゲームを優位に運ぶ2つの要素は、『マジック』をはじめとするデッキを用いるゲームで、「シナジー」「デッキ圧縮」と呼ばれる高等テクニックだ。それを、同色カードを出すだけで発生するシナジーと、「カードを引く」「不要なカードを破棄する」の2点にしぼったデッキ圧縮で、わかりやすく提示している。簡単に難しいことができ、上達を実感しやすい。最強の布陣を目指してデッキを改良する本作は、デッキ改良型ゲームと呼ぶにふさわしい。

 

ツモを操作するイカサマ麻雀

プレイの流れを通じ、デッキの改良を具体的に述べる。本章では詳細を割愛し、ゲーム展開を中心に取り上げる。大きく分けて序盤・中盤・終盤だ。

 

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序盤は強力なカードを先に入手できるよう、通貨ポイントが高いカードを購入する。デッキの枚数が増えると強力なカードを引く確率が下がるため、デッキ圧縮の効果を持つカードも購入していく。場に残り永続効果をもたらすステーションや、それを破壊するための戦闘ポイントが高いカードも購入したい。

拡大画像:最初のターン。初期カードでは通貨ポイントが足りない)

 

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お互いの通貨ポイントが高くなる中盤では、市場を操作するカードの有用性が増す。これにより自分に不要なカードや、相手に有益なカードを排除できる。このあたりから、同色カードによるシナジーを発揮できるよう、以降に購入するカードは色をしぼっていきたい。

拡大画像:ステーションや通貨カードで、強力なカードが購入可能になる)

 

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初期カードをすべて除去し終えた終盤は、勝利に向けてさらにデッキを改良していく。通貨ポイントだけのカードも排除し、戦闘ポイントを持つカードを引く確率を上げる。不要な色カードも処分し、同色のカードを引く確率も上げる。両者ともにダメージが大きくなるので、戦闘ポイントと相乗効果の純度を少しでも上げたい。

拡大画像:緑色の追加効果でカードを引き、黄色の追加効果も得られた)

 

このように序盤は手広く展開し、中盤以降で"アガリ手"を意識するプレイは麻雀に似たものがある。シナジーという役ができるよう、デッキ圧縮でツモを操作するあたり、さしずめイカサマ麻雀といえる。手札の効果とカード購入を組み合わせ、都合良いカードを引く、または引いたカードを都合良いものにするのが本作の醍醐味だ。

 

カードシナジーとデッキ圧縮の一例。引き当てたカードで同色効果を得て手際よく勝利した。 ここぞという状況に最適なカードを引き当てる、通称"デスティニー・ドロー"が生まれやすい。
カードシナジーとデッキ圧縮の一例。引き当てたカードで同色効果を得て手際よく勝利した。ここぞという状況に最適なカードを引き当てる、通称"デスティニー・ドロー"が生まれやすい。

 


カードゲーム開発の進歩

 

序章にて、本作の好評は新たなプレイ体験をもたらした点にあると述べた。類似作の比較として、デッキ構築型ゲームというジャンルの背景を記しておく。

始めに『マジック』ありき。デッキを用いるゲームは『Magic: The Gathering』(1993年)で確立された。日本ではトレーディングカードゲームというジャンルで知られているが、コレクタブルカードゲームという別名が、ゲーム内容を表している。収集したカードでデッキをあらかじめ構築し、相手のデッキと競うゲームだ。プレイングだけでなく、カード収集やデッキ改良といった要素が人気を博し、多くのフォロワーを生んだ。『カルドセプト』などビデオゲームでも人気ジャンルとなり、現在、ソーシャルゲームの多くでカード収集要素が採用されている。また、アーケードゲームでは物理カードを読み込みビデオゲーム上のキャラクターとするものもある。

 

約20年前の『マジック』。多彩なカードイラストと、情緒あるフレイバーテキストで、カードが増えるごとに物語も広がる。 レアリティという概念を広く知らしめ、中には1万円以上で金銭トレードされるカードもある。
約20年前の『マジック』。多彩なカードイラストと、情緒あるフレイバーテキストで、カードが増えるごとに物語も広がる。レアリティという概念を広く知らしめ、中には1万円以上で金銭トレードされるカードもある。

 

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デッキ構築型ゲームはその支流だ。原文の"Deck-Building Game"を直訳すると、"デッキを作っていくゲーム"となる。あらかじめデッキを用意するのではなく、プレイ中にデッキを構築するゲームだ。代表作は『Dominion』(2008年)で、通貨ポイントで市場のカードを購入してデッキに加え、勝利ポイントカードの購入や妨害をする流れだ。プレイごとに違う市場の品ぞろえが勝利へのアプローチに変化をもたらす、高いリプレイアビリティで人気を博し、これまた多くのフォロワーを生みだした。日本でもクローンフォロワーが多く、ビデオゲームでもフォロワー作『ハートオブクラウン』がある。

 

『Star Realms』はデッキ構築型ゲームに該当するが、類似作の多くがカード収集を焦点とするのに対し、本作は効率化を競い合うデッキ改良の要素を持ち込んだ。さらに、前章にあげたとおりプレイングの要素も加えている。ゲームデザイナーが『マジック』のプロプレイヤーであり、彼らがプレイングとデッキ改良のプロであることを考えれば、納得のゲーム設計といえよう。デッキ構築型ゲームのカード収集に、トレーディングカードゲームのデッキ改良やプレイングを加え、デッキ改良型ゲームという新たなプレイ体験をもたらしたのだ。

 


デラックス版が欲しくなる

 

『Star Realms』の魅力は、トレーディングカードゲームの3つの要素、「カード収集」「デッキ改良」「プレイング」を1プレイに内包した点にある。プレイごとに収集できるカードが違い、デッキの改良点とプレイングも変化する。このリプレイアビリティは、いわば、プレイごとに『マジック』を新しく始めるようなものだ。デッキを用いるゲームに熱をあげたゲーマーなら、本作はマストバイだ。

 

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体験版を手に取り本作の購入を決めた方には、拡張パック『Gambit Expansion』もおすすめする。デッキ構築型ゲームは開始時のデッキが毎回同じで、序盤の展開はマンネリになりやすい。そこで追加カードを用いた上級ルールの出番だ。任意のタイミングで使用できる特殊能力カードは、従来では入手できなかった強力なカードを序盤から投入することで、新たな戦略をもたらす。また、アドバンテージが高いカードについては、代用となるカードを追加することで間接的にカードパワーを調整した。この上級ルールは、最強の布陣へいたるアプローチを増やし、デッキ改良をより奥深いものにするのだ。

 

カードゲーム部分の紹介を以上で締め、ビデオゲームとして改めて評価する。『カルドセプト』など類似作とくらべ、ビデオゲームの特色を活かした演出・BGMがないのは不満だ。デジタル上でカードゲームをプレイするだけの演出はさびしいものがあり、BGMも1曲しかない。プレイ体験を補強する演出が欲しくなる。AIを擬人化したキャラクターのセリフ、カードイラストを転用したカットイン、ヘルスやデッキの状況に応じたBGMの変化など、類似作から学べる点があったはずだ。また、キャンペーンモードもストーリーの演出はおろか、公式サイトに記載された各派閥の紹介文すらない。演出・BGMをビデオゲームの域まで高め、"Star Realms Universe"を一層楽しめるデラックス版があればと切に願う。

 

画面中央下部が、このターンで場に出したカードだ。カード効果があわさり10枚以上場に出した。 即死級の戦闘ポイントをビデオゲームとして演出すれば、大艦隊の斉射という見物になったであろう。
画面中央下部が、このターンで場に出したカードだ。カード効果があわさり10枚以上場に出した。即死級の戦闘ポイントをビデオゲームとして演出すれば、大艦隊の斉射という見物になったであろう。
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Hikaru Nomura
高校卒業後、ペンキ塗り・コンビニバイト・警備員・システムエンジニア・ネットショップの店長などで食いつなぐ。趣味はスーパーカブにまたがってのドライブ、海外SF小説(オールタイムベストは『スキズマトリックス』)、ゲーム実況、たまに同人活動。 宇宙ストラテジーと格闘ゲームを好む。リズムゲームとビジュアルノベルは苦手。FPSは酔う。中段や弾幕は見えない。Arcen Games信者であり、Stardockian(Stardock信者) でもある。英語は苦手だが、気合で翻訳して遊ぶ。 ゲーム大会の最高成績は2013年トライタワー末塔劇『チェンジエアブレード』部門第4位。 オールタイムベストゲームは『ニュースペースオーダー』。

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