『レインボーシックス シージ』から離れてしまったすべてのプレイヤーへ、3000時間を捧げた筆者が紹介するシージ今昔


筆者と『レインボーシックス シージ』の出会いは、2015年9月、都内でおこなわれた「Xbox One 大感謝祭 2015」だった。よくわからない屋内戦に「難しそうだな」と思ったことをよく覚えている。その年の年末、「そろそろ新しいFPSやるか」なんて言いながら友達と一緒に購入した。その友達は今年結婚した。

当時のFPSといえば、『Battlefield Hardline』や『Call of Duty: Black Ops 3』(どちらも2015年発売)といった、リスポーン有りの比較的カジュアルに楽しむタイトルが多く、PS4/Xbox Oneを購入して初めてのFPSがこの2シリーズだったプレイヤーも多いのではないだろうか。

そこに現れたのが『レインボーシックス シージ』だ。細かなエリア配置の屋内戦を主軸とし、リスポーンはなく、補強やバリケードといった、マップを直接利用することで自ら戦略の幅を広げて駆け引きをする。そんなハードコアさが特徴の本作は、見た目の通り難しく、さながら死にゲーのように何度も死を経験するだろう。

一方で、死を繰り返した数だけ、相手に仕掛けられる手札が増えることもまた事実だった。複雑なマップを匠(巧み)に活用し、一方的な射線を作ったり、それを潰すために入念にドローニングをしたりと、知識と策略が増えていくほど、本作は楽しくなっていく。シーズン1「BLACK ICE」でその魅力に取り憑かれた筆者は、学生時代のほとんどを本作に捧げ、熱を込めて追いかけてきた。

UBIDAY 2017では、本作の大会目当てに多くのファンが詰めかけた

『レインボーシックス シージ』は、今年で7年目を迎える。本稿では、その6年間の軌跡を振り返っていきたい。新規プレイヤーは、歴史の教科書をパラパラと見る感覚で、熱心なプレイヤーはノスタルジックな気持ちになっていただけると嬉しい。そして、本作と距離を置いてしまったプレイヤーは、願わくば、もう一度このゲームに触れてみてほしい。

リリース前からブレない軸

『レインボーシックス シージ』の成り立ちは、2014年6月まで遡る。その年のE3でおこなわれたUbisoft Press Conferenceにて、『Far Cry 4』や『The Division』と共に、久々の『レインボーシックス』シリーズの新作として発表されたのだ。

お披露目となった動画では、旧マップ「民家」で人質を救出する様子が描かれている。ブリーフィングやオブジェクトの形状など、細かい部分を除けば、ブリーチングチャージによる急襲やドローンを用いた索敵、壁の補強やバリケードなど、本作の根幹はしっかりと今にも受け継がれていることがわかる。

『レインボーシックス シージ』はその後、リリース延期や幾度のテストを経て、2015年12月10日、日本で発売を果たした。

総勢63名の個性豊かなオペレーター

本作ではリリース当初、合計20名のオペレーターが実装されていた。それがイヤー7シーズン1(以下、Y7S1)時点では、攻撃31名、防衛32名の総勢63名、実に3倍以上まで増えた。1年を4つのシーズンで区切る本作は、Y5S2までは各シーズン2名のオペレーターを追加し、その度に大きくメタ(ゲーム内の戦いにおける流行のようなもの)が変化してきた。

Y3S1が実装されたOPERATION CHIMERAのスクリーンショット


特に大きな変化をもたらしたのは、ブラックミラーで相手を一方的に視認できるMIRA(Y2S1)や、動く敵の位置をリアルタイムで感知できるLION(Y3S1)などだろう。とりわけLIONはOP(Over Powered/強すぎ)とされており、弱体化以前のアビリティは防衛オペレーターの身体の輪郭が赤くオーバーレイ表示されるというものだった。攻撃側は防衛オペレーターの位置を探ることが大きな目標となるが、敵の偵察デバイスをハックするDOKKAEBI(Y2S4)や、AMARU(Y4S3)など、囲い込みや急襲に適したオペレーターも大きく増えた。

バランスが重視される5v5タクティカルシューターということもあり、キャラクターの調整は随時おこなわれてきた。その一人が、KAPKANだ。リリース当初は敵をひとつのトラップにかけることでもれなく死亡(または負傷)させるものだったが、当時はトラップのレーザーが視認でき、プレイヤーの成熟によってトラップにかかる総数が減っていた。それを受け、レーザーが視認できないようになり、合わせてダメージが60へ、オペレーター自体のスピードも2へと上方調整された。現在では武器(9x19VSN)に1.5倍サイトが装備できることもあり、使いやすいオペレーターになっている。また、一つのドアにトラップを複数個設置が可能となり、リリース当初のようにひとつのドアを通れば即死、という状況も作り出せるようになった。

このほかに、本作随一のネタキャラクターとして愛されていたTACHANKAは、リワークという形で生まれ変わっている。これまで固定LMGであったDP27はメイン武器となり、固有アビリティとして焼夷グレネードを放つシュミハランチャーを与えられ、SMOKEのように敵の進行を食い止めるような役割を得た(関連記事)。

なんとか見どころを作ろうとするTACHANKA

このほか、防衛側の持つ一部の銃から2.5倍サイト(旧ACOG)が撤廃されるなど、武器を用いた調整もおこなわれている。現在では、攻撃側のエントリールートを一方的に見ることを防ぐため、防衛側で高倍率サイトを装備できる武器は、VIGILのダブルバレルショットガンBOSG.12.2や、ROOKのMP5など、ごくわずかだ。
【UPDATE 2022/04/04 16:10】高倍率サイトに関する記述を訂正



そんな歴史を持つサイトだが、Y7S1では、全サイトのリプレイスメントがおこなわれた。これによって、持っているサイトと同倍率のものはすべて解放された。つまるところ、等倍サイトは全解放されたわけだ。特定の等倍サイトしか装備できない武器などもあったが、今回の改修によって制限がなくなった。SPSMG9(CLASHのサイドアーム)などにのみついていたサイトも自由に選べるため、いろいろと試し甲斐が生まれている。


そして、本作には欠かせない、補強壁を破壊できるオペレーター(通称:ハードブリーチャー)も増えた。リリース当初はTHERMITEのみだったが、現在では4名(THERMITE・HIBANA・MAVERICK・ACE)まで増えている。といっても、最新のオペレーターがめっぽう強いというわけではない。THERMITEは補強壁を大きく開けることができるアドバンテージをしっかりと維持している。一方、最新のACE(Y5S2)は素早く開ける利点はあるものの、その大きさは控えめと、しっかりと差別化が図られている。

それだけでなく、サブガジェット(フラググレネードやブリーチングチャージと同じ位置づけの汎用アイテム)として「ハードブリーチングチャージ」というアイテムも追加された。これは補強壁の小さい範囲を破壊するほか、落とし戸を開けるものだ。BUCK(Y1S1)やZERO(Y5S3)などが選択できる。補強壁へのアプローチも、大きく変わったといえるだろう。


近年はゲームバランスや競技性を意識してか、オペレーターは各シーズン1名ずつの追加となっており、Y7S1では、3人目の日本人オペレーター「AZAMI」が実装された。AZAMIは、防弾性の「Kibaバリアー」を生成する防衛オペレーターだ。


AZAMIは本作で初となる「穴を塞ぐ」ことができる点が大きな特徴だ。攻撃側が通した射線や、破壊した壁を塞ぐことができ、それによって自分や仲間のポジションを調整するほか、遠くからの被弾を防ぐことができる。マップの知識量と比例してより強力なバリアーを生成することができることから、『レインボーシックス シージ』らしいオペレーターと言える。7年目の幕開けに相応しい、ゲームチェンジャーとなる存在だ。

増えたマップ・変わったマップ

オペレーターと同様、マップにも多くの追加とリワーク(マップの改修)がなされてきた。現在はゲームモードごとにマッププールが異なり、ランクマッチでは以下の画像の通りだ。


この14のマップの中で、リワークや改修がおこなわれていないマップは驚くことに「領事館」と「ヴィラ」の2つのみだ(厳密にはオブジェクトの細かな調整は行われているので、リリース当初から全く同じマップは存在しないだろう)。

オペレーターの追加によって攻守共にプレイの幅が大きく広がり、広さとして物足りないマップや、競技性の観点で攻守どちらかの陣営が強力なマップは、積極的に手が加えられている。

競技シーンでも馴染み深い「オレゴン」も、リリース当初は2階の東西を結ぶ廊下やエントリールートが狭く、攻守ともに立ち回りの幅が狭かったが、随所が拡張されたことにより、随所で戦いが起こるようになっていった。

現在ではもう見られない、夜の景色

合わせて、視認性の問題も徐々に改善していった。リリース当初はマップに昼夜があったが、夜は屋外の視認性が悪く、昼のみとなったことや、室内のライティングの改修、敵プレイヤーの輪郭を光らせるリムライトの実装など、現在はかなり綺麗で見やすいゲームとなっている。

プレイヤーとして、リワークによって馴染みのマップが変わってしまうことは、嬉しくもあり、悲しくもある。そのひとつが「民家」だ。本作のチュートリアルであるラーニングエリア(旧:シチュエーションモード)でも度々登場するこのマップは、比較的コンパクトであり、訓練場(旧:テロハント)でウォームアップに使っているプレイヤーも多かった。しかし、リワークによって広く複雑になってしまい、ウォームアップとしては使いにくくなってしまったことは否めない。

そんなプレイヤーに朗報がある。Y7S1で追加された「チームデスマッチ」だ。これは文字通り撃ち合いに特化したモードであり、特定のマップを舞台に、どちらかのチームが75キルに到達するか、制限時間の5分を迎えるまでひたすらガンファイトに勤しめる。ランクマッチ前のウォームアップや、武器を試したいときにも便利だ。

また、近年ユービーアイソフトは既存マップのリワークに熱心だったが、Y7S1では3年ぶりの完全新マップ「エメラルドプレーンズ」が追加される。イングランドのカントリークラブを舞台としたこのマップは、クラシカルさと、モダンさを兼ね備えているのが特徴的だ。競技性が確立されてから久しい本作だが、競技シーンにも登場するかを含め注目したい。

余談だが、リリース当初からゲームに存在する「バートレット大学」は未だ手付かとなっている。スポットライトが当たるのはいつになるのか。

さまざまなイベントモード

本作は、基本となるクイックマッチ(旧:カジュアル)やランクマッチのほかに、期間限定のアーケードモードの開催も積極的におこなわれてきた。エイプリルフールに合わせて実装された、ピンク色のオペレーターが印象的なキューティでファンシーな「Rainbow is Magic」や、どこを撃っても一撃死のゴールデンガンで戦う「Golden Gun」、年に一度の世界大会に合わせて実施される「Road to S.I.」など、さまざまだ。

3S1で開催されたアウトブレイク、今見ると『エクストラクション』と通じる部分も多い


中には、オペレーターの夢の中を舞台とした、リスポーン有りの5v5「Sugar Fright」や、未知の生命体と戦うCo-op型イベント「アウトブレイク」など、チームデスマッチや『レインボーシックス エクストラクション』の原型とも取れるものも存在していた。

これらの個性的なモードの一部は、Y7S4以降、週替りとして常設される予定となっている。カジュアルに遊べるモードが増え、よりゲームへ親しみやすくなるだろう。

また、バトルパスの導入も果たしている。2019年10月に配信されたミニバトルパスを皮切りに、シーズンごとにバトルパスが導入され、現在ではバトルパスを購入することで新オペレーターが解除される仕様だ(バトルパス未購入の場合、新オペレーター実装から2週間後に名声・R6クレジットで購入可能)。

Y7S1のバトルパスは、日本味が多く含まれている


そして、コスメティックアイテムも充実している。R6Shareと称した競技シーンで活躍するチームのスキンも販売されており、日本チームのスキンも登場している。売り上げの50%はチームへ還元されるため、応援になる点も嬉しい。

CYCLOPS athlete gamingのスキンには、選手の名前が漢字で刻まれている


この他にも、Netflixドラマ「ペーパーハウス」や、アニメ「リック・アンド・モーティ」とコラボした個性的なスキンも販売中だ。もちろん、バトルパスや、一定の確率で手に入るアルファパックなどでもクールなスキンがたくさん手に入る。

盛り上がりを見せる競技シーン

本作は競技シーンも盛んだ。特に世界大会「Six Invitational 2019」にて、日本チーム「野良連合」が世界ベスト4という栄光に輝いたこととは、『レインボーシックス シージ』の競技シーンだけでなく、日本のeスポーツシーンの歴史を語る上で外すことができない出来事であった。

現在では購入できない、野良連合のスキンセット


当時の野良連合のロースターは、散り散りになってしまっているものの、未だに現役選手として活躍するプレイヤーも見られる。昨年は、NTTドコモが展開する日本リーグ「X-MOMENT」が主催する「Rainbow Six Japan League 2021(RJL2021)」が開催され、日本競技シーンのレベルが大きく向上した。昨年はCYCLOPS athlete gaming(CAG)が無敗優勝という快挙を成し遂げたが、2022年3月より開催されている「RJL0222」では、アマチュアからプロ入りを果たした「SCRAZ(旧:Zepto)」がCAGへいきなり黒星を付けるなど、波乱の展開が起きている。

世界的なeスポーツチームFNATICや、サッカークラブで著名なパリ・サン=ジェルマンが有するPSG Esportsが日本人ロースターを迎えて参入するなど、本作のエコシステムの土台を作り上げたX-MOMENTの恩恵によって、日本国内の競技シーンは今後も大きく発展していくだろう。

もちろん、国外の競技シーンも大きく変化した。G2 Esportsでの華々しい活躍が有名なレジェンドプレイヤー「Pengu」の引退をはじめ、EU一強の時代は終焉を迎えている。昨年はラテン地域のチームが大きな躍進を遂げ、古くからほぼ同じロースターで戦うFaze Clanや、Team oNe eSportsといったラテンチームが国際大会で優勝を勝ち取り、ラテンの季節と呼ばれていた。日本が属するAPAC地域も、韓国チームDWG KIAが初の世界大会でベスト4へ勝ち進むなど、全体のレベルが上がっていることは明白だ。

国内リーグの模様はX-MOMENT公式チャンネル独占配信され、世界大会はレインボーシックス 日本公式チャンネルで視聴できる。気軽に覗いてみよう。

2021年10月に行われた国内大会は豪華なステージが組まれた


『シージ』は、次の一歩を踏み出す

ここまで語ってきた通り、6年の歳月を経て、さまざまな面で大きく進化した『レインボーシックス シージ』。次の一歩を踏み出すY7は、さながら小学校から中学校に進学するような、躍進の年となりそうだ。Y7S1ではチームデスマッチの実装や、3年ぶりの完全新マップ「エメラルドプレーンズ」など、多くの新要素が見られるが、これらは一端に過ぎず、一年を通じてさまざまな施策がおこなわれる。


まず、Y7S2ではチームデスマッチ専用マップ、射撃練習場(シューティングレンジ)が実装されるほか、オペレーターの使用例やドローンなど、本作特有の要素を映像付きでわかりやすく紹介するTIPS「オペレーターヒント」も実装される。知らないオペレーターがどんなアビリティを持っているのか、簡単に理解できるようになるだろう。

Y7S3では、「ランク2.0」と称したランクマッチの刷新もおこなわれる。これまでのランクマッチは、到達した最高ランクのチャームしか貰えなかったが、これが変化し、オペレーターカードや、下位のチャームも獲得できるようになる模様。高いモチベーションをもって挑むことができるコンテンツとなる。

そして待望のクロスプレイ・クロスプログレッション(複数のプラットフォームをまたぐ進行状況の共有)も、Y7の終盤にローンチ予定だ。コンソールからPC版へ移行したプレイヤーにとっては、嬉しいニュースだ。

最後に

6年という長い時の中で、進学や就職、人生の転換を迎え、本作から一度離れてしまったプレイヤーもいるかもしれない。しかし少しでも良い、『シージ』をやっていた時のことを思い出してみてほしい。

意味不明な射線で倒されたり、知らぬ間にプラントされて困惑したり、苦い思い出もあるだろう。一方で、とんでもないプレイで試合をひっくり返したり、完璧な連携で敵を囲い込んだり、ガジェットのタイミングで「今の刺さったな!」と仲間と喜んだり、楽しい思い出もあったはずだ。

たまには起動してみて、マップの探索やオペレーターを懐かしみつつ、変化したアタッチメントや、新たなオペレーターなど、成長を続ける『シージ』の今にも是非触れてほしい。この記事が、そのきっかけになれば幸いだ。

『レインボーシックス シージ』は、PC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中だ。Xbox/PC Game Passにも対応している。