Nintendo Switch移植を多数手がけるVirtuosにインタビュー。移植に際して掲げる目標とパフォーマンスとは

シンガポールオフィス
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開発会社として数々の実績を残しているVirtuos。シンガポールに本社を構えるほか、世界各国にオフィスを持つグローバルなスタジオだ。事業も多岐にわたっており、3Dアートや3Dアニメーション、コンセプトアートの作成。ゲームデザインのヘルプに、共同開発、そして移植。『Star Warsジェダイ:フォールン・オーダー』『デビル メイ クライ 5』など大規模なタイトルにも携わる一方、Virtuosは大型タイトルのNintendo Switch移植にも定評がある。

具体的には、先日Nintendo Switch向けに発売された『バイオショック コレクション』『XCOM2 コレクション』は、同社が移植を担当している。これらは他のプラットフォームで発売されてからしばらく経っている旧作とはいえ、持ち運びもできるハイブリッドハードに落とし込むには最適化技術が必要だ。今回はNintendo Switch移植をテーマに、Virtuosの活動体制やノウハウについて伺った。

回答いただいたのは、創業者/CEOであるGilles Langourieux氏とゲーム部門のバイス・プレジデントであるElijah Freeman氏。そして、成都スタジオのゲームエグゼクティブ・プロデューサーのLukas Codr氏と上海スタジオのゲームテクニカルディレクターのAndy Fong氏と同スタジオのゲームプロデューサーであるZhang Chengwei氏である。

創業者/CEOであるGilles Langourieux氏
ゲーム部門のバイス・プレジデントであるElijah Freeman氏
成都スタジオ ゲームエグゼクティブ・プロデューサーのLukas Codr氏
上海スタジオ ゲームテクニカルディレクターのAndy Fong氏
上海スタジオ ゲームプロデューサーのZhang Chengwei氏

───Virtuosについて紹介していただけますか。

Gilles Langourieux氏:
Virtuosは2004年に創業し、今年で16年を迎えました。全世界で6つのスタジオを含む12のオフィスを有し、1700名を超える従業員が所属するまでに成長してきたグローバル企業です。現在では共同開発、ゲームテクノロジーの最前線、そして世界を牽引するアートワークを提供するスタジオへと進化してきたという自負があります。

Virtuosは、未来のゲームクリエーションを形作り、ゲームを「より幅広く」、「より深く」していくことを何よりも重要ととらえています。「広く」とは、より多くのコンソールやプラットフォームで利用を可能にすることです。「深く」は、より多くのレベル、より大きなゲームの世界、そしてより多くの作り込まれたアセットを創造することです。Virtuosは、アートやエンジニアリング、ゲームデザインの分野において優秀な人材を集め、業界を牽引する技術やツールを備えさせることを核としています。そうした環境構築は、優れた人材が新しい最高のゲームを作ることができる、エキサイティングで刺激的な職場づくりに通じますよね。

───具体的に、どのような体制や分担で開発をしていますか。

Andy Fong氏:
チームには通常、プロジェクトのリーダーとしてプロデューサーとテクニカルディレクターを1名ずつ、リードプログラマーを1〜2名ずつ割り当てています。シニアプログラマーとジュニアプログラマーに関しては、プロジェクトに応じて3~30名を配置していますよ。

───今日はNintendo Switch移植について教えて下さい。このたびは『バイオショック コレクション』『XCOM2 コレクション』のNintendo Switchへの移植を担当されております。これらのゲーム開発に関わることになった背景・きっかけはなんだったのでしょうか。

Elijah Freeman氏:
Virtuosは毎年、移植業務において数多くの成功実績を出してまいりました。そして時間とともに、パートナーとの強固な信頼を築いてきました。移植は、リマスターやリメイク、新規開発と同様、Virtuosが提供するさまざまなサービスの一つです。多くのデベロッパーはメインゲームのSKU*を担当するコアチームを持っていますが、コアチームと並行して追加のSKUを開発するのに必要な人材を確保、また調整し、チームを拡大して対応するには、外部デベロッパーとの協力が必要になってきます。そこでお役に立てるのがVirtuosの強みです。

  • Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略。受発注・在庫管理を行う際の最小の管理単位。

Virtuosには、さまざまな最新技術に触れてきた長い歴史があります。それは長年にわたり、Nintendo Switchのプロジェクトにおいて経験を積み重ねてきたことを意味します。

Virtuosは、Nintendo Switchのハードウェアを最大限生かすという専門性を築き上げてきました。それぞれのプロジェクトを完成させるにつれて、より高精度に仕上げられるようになっていったのです。そうした成果が業界で評価されているのではないでしょうか。

『DARK SOULS REMASTERED』Nintendo Switch版も同スタジオが移植を担当した。


───実際にVirtuosは数多くのNintendo Switch移植を手がけてきましたが、Nintendo Switch移植専用チームなどは存在しますか。

Andy Fong氏:
はい、Nintendo Switchの開発プロジェクトには、エキスパートたちによる専任のチームがいます。上海チームは40名のプログラマー、成都チームは20名のプログラマーで構成されているんです。

Lukas Codr氏:
新しいプラットフォームへの移植は、プロジェクト全体をプロデューサーが統括し、各チームのエンジニアとアーティストを担当するテクニカルディレクターとアートディレクターと密接に仕事をしています。また、プロジェクトの内容に応じて操作方法やUIの調整を手助けするデザイナー数名、データマネージャー(ビルド作成、開発ブランチのセッティング等の責任者)、QA担当者もいます。

───『バイオショックコレクション』『XCOM2 コレクション』2作は、どのように最適化されましたか?

Andy Fong氏:
私たちは、まず対象となるデバイスでゲームを実際にプレイし、フレームレートがもっとも低くなるパフォーマンスホットスポットを見つけます。そして、問題の原因を特定するためにCPUとGPUの両方を分析します。すべてのホットスポットを収集・分析し、その後最適化のプランを作るんです。最適化のタスクを詳細化し、作業時間、人選、潜在的な利益と品質への影響を含め、それぞれのタスクの効率性を評価します。

CPUのパフォーマンスは解像度やグラフィックの設定を減らすことですばやく変更できるため、通常はCPUの最適化が優先されます。また、特定の機能がどうように実装されているかを詳細に理解し、CPUリソースを可能な限り変更または利用するための戦略を考える必要があるため、時間を要する作業になります。

私たちは常に解像度や画質の品質を下げる前に、まずMaxwell GPUでSwitch固有の機能を使うように心がけています。安定したフレームレートを確保することは、さらにパワフルなプラットフォームのバージョンからのグラフィックスの機能を維持するよりも、重要なことです。そのため、グラフィック機能を優先順に並べ、必要に応じて、優先度の低いものの一部を簡略化する、もしくは削除する場合もあります。


───具体的に、どのくらいのパフォーマンスの実現を目標としていますか。

Andy Fong氏:
ゲームの規模や使用している技術、クライアントからの要望などによります。たとえば、高精度なマテリアルレンダリングモデルを使用したオープンワールドの ハイスピードの飛行ゲームの目標水準は、固定カメラとトゥーンシェーディングを備えたアドベンチャーゲームの目標水準とは異なります。最高のターゲットパフォーマンスを目指しつつ、ハードウェア・予算の限界や私たちの能力を踏まえ、現実的な目標を設定するよう心がけています。

Lukas Codr氏:
あらゆるゲームのNintendo Switch移植では、オリジナルのゲームにできる限り近づける必要があります。NPCや敵の数が同じかどうかを確認し、時間経過によって日差しの加減が変わるようなダイナミックな時間表現を確実にするなど、最適化には多くの作業が伴います。

───TVモードと携帯モードのパフォーマンスの差はどのようになりましたか。

Andy Fong氏:
TVモードのGPUクロック周波数は携帯モードの2倍です。通常、携帯モードではこの差を補正するために低い解像度を適用します。たとえば、モバイルモードの解像度はTVモードの66%になり、TVモードで1080pの場合、モバイルモードでは720pにする、などです。

これまでの経験から、TVモードではパフォーマンスが良い場所や悪い場所を、簡単にかつピンポイントに特定できます。しかしながら、すべてのケースをカバーするために、QAチームは常に両方のモードをプレイし、双方のパフォーマンス指標を収集、比較しています。一般的に言えば、多くの透明なパーティクルや重いポストプロセスエフェクトのあるような場合は、TVモードのほうがパフォーマンスは低下しますが、必ずしもそうとは限らないため、ゲーム全体をテストする必要があります。私たちの目標は、解像度以外の点で、両方のモード間で同等のグラフィックを達成することです。そのため、両方のモードを最適化するために、できる限り最善を尽くします。


───開発中苦労した部分はありましたか。

Zhang Chengwei氏:
『XCOM2 コレクション』において一番の問題は、メモリの最適化でした。PC 版では7GB以上のメモリを使用しますが、Nintendo Switchではわずか3.2GBのメモリ使用に限定されます。継続的にゲームをプロファイルし、決定を下し、実装とテストをしてから再度プロファイルしなければいけません。メモリの最適化だけで約半年もの時間を費やしました。その期間、より効率的なファイルフォーマットを使ったり、不要なメモリ使用をなくしたり、しまいにはオリジナルコンソールのメモリシステムを変更したり、最適化したりと、さまざまな方法を試しました。このプロセスは、まさにスポンジから水を絞り出すようなものです。絞り出した水の量が多ければ多いほど、プロセスはより難しく、複雑になっていきます。

Zhang Chengwei氏:
ゲーム移植プロジェクトが直面する課題は、一般的なゲーム開発プロジェクトのそれとまったく異なるものです。まず、オリジナルのソースコードとデータがすべて揃っているかどうか明確にしておく必要があります。『バイオショックコレクション』では、初期段階でいくつかのデータロスが見つかり、解決に時間を要しました。

2つ目に、オリジナルゲームで使用されているエンジンとミドルウェアは多くの場合非常に古いもので、元々クローズド・ソースであったミドルウェアは特にそうです。たとえば『BioShock』と『BioShock 2』はHavokの非常に古いバージョンを使用しており、ベンダーに問い合わせて整理するだけに数か月の時間を要しました。

最後に、プレイヤーは移植ゲームの品質に対して非常に高い期待を持っています。YouTubeには必ずと言っていいほど、フレームレート、ビジュアルのクオリティ、読み込み時間などの比較動画が上っています。ゲームの品質を確保する方法も、私たちにとって非常に大きな課題で、多くの場合はプロジェクトのタイムラインとコストと密接に関連しています。

───結果として、Nintendo Switchにてどのようなパフォーマンスになりましたか。

Zhang Chengwei氏:
『バイオショック コレクション』については、TVモードは1080pの30fpsで、携帯モードでは720pの30fpsを達成できました。『XCOM 2コレクション』はTVモードで900pの30fps。携帯モードでは720pの30fpsとなりました。

───Nintendo Switch移植はそれぞれ、何人規模でどれくらいの時間をかけて実施されるものですか。

Zhang Chengwei氏:
『バイオショック コレクション』では、ピーク時には、40名ほどのチームメンバーがおり、開発スケジュールはおよそ10か月です。『バイオショック コレクション』について私たちが掲げた戦略は、“ワン・チーム”のコンセプトでした。1つのチームがリードして3つのタイトルを並行して開発します。これにより、知識の共有を最大化することができ、プロジェクトにおける収益を向上させることができます。またこれはチームでの開発プロセスの試金石でもありました。

Andy Fong氏:
『XCOM2コレクション』のチームもおよそ30名で、期間は10か月でした。

上海スタジオの様子


───Nintendo Switch移植におけるVirtuosの強みはなんですか。

Andy Fong氏:
まず初めに、私たちは10年以上におよぶ、様々な性能を持つデバイスへのゲーム移植開発、特に モバイルデバイスや携帯ゲーム機への移植経験があります。そのため、直面しがちなハードウェアの限界を把握した上で計画を立てることができます。

また、UE3/4やUnity、インハウスのゲームエンジンなどの商用ゲームエンジンを含む、さまざまな技術に関する経験を豊富に持っています。そのおかげで、各技術のアプローチを理解し、私たちの移植戦略の中に組み込むことができるのです。

Lukas Codr氏:
Nintendo Switch移植を事業にしている会社のほとんどは、段階的に移植技術を高めています。最初に取り掛かるプロジェクトでは、たいていは単純で安全な最適化をおこないます。なぜならば、開発陣はその段階ではまだ新たなプラットフォームについてリサーチしており、長所や短所などを学んでいる最中であるためです。複数のプロジェクトにて経験を積むにつれ、エンジニアやアーティストはレベルを段々と上げていきます。現在我々は4、5回目の段階におり、我々が得た経験とスキルは、経験が少ないチームと比べ数段階高いところにいると言えます。

───興味深いお話、ありがとうございます。Virtuosの今後の予定や展開について教えてください。

Gilles Langourieux氏:
ゲームクリエイターがより良い、そしてより大きなゲーム製作を考案する際、私たちVirtuosの名前が真っ先に浮かぶような存在を目指します。全世界で6つのスタジオと1700名以上のゲームのプロフェッショナルを擁する当社は、すでに開発力では手ごたえを感じています。私たちの計画は、主要なコンテンツ制作、そして業界を牽引するスタジオ、あるいは有望なスタジオとのパートナーシップに照準を合わせています。私たちのチームがクライアントのパイプラインに組み込まれることで、最良の仕事が提供でき、エンド・ツー・エンドのソリューションをお届けできるということを、長年にわたる経験から見出しています。オーナーシップを持ち、ゲームの最終的な品質を確認またはテストできる場合、仕事の品質も必然的に向上するからです。

実績としては、Nintendo Switch向けの『バイオショック コレクション』『XCOM 2コレクション』、Stadia向けの『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)』など、新しいプラットフォームに向けた移植、『Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー』 のレベルデザインとゲームプレイ、また、OculusやPlayStation VRといった最先端のプラットフォームでの開発など、大規模で複雑なプロジェクトが挙げられます。

Virtuosのロードマップは、ゲームコンテンツの制作において引き続き最善を尽くし、スタジオを新設または買収し、ゲーム開発のハブとなる全主要地域にて存在感を発揮することです。これによって、刺激的で活力のあるスタジオとより緊密に仕事をすることができます。近いうちに日本にもスタジオを持つことも、私たちのロードマップの一部です。

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