大阪は IIJ 関西支社の一会議室にて、”関西初の Oculus Rift イベント”をうたう「第1回 Oculus Game Jam in Japan 関西」が開催されました。その名の通り Oculus Rift を使用したゲームの製作を目的としたゲームジャムイベントです。ただし、現実重視の立ち回りということか丸一日投入して徹夜作業をするタイプではなく、10時開始の18時終了というややマイルドなハッカソンタイプが採用されていました。主催は山本昇平氏。
アルコールよりも中毒性が高いかもしれない Oculus に誘惑され集結した開発者は27名。6チームに分かれそれぞれ思い思いのゲームを創っていました。すべてのチームに Oculus が配布されているのは当然として、なんとモーションキャプチャー用の機材一式を持ち込む猛者まで登場。ただでさえ山盛りの HMD のせいで怪しげな会議室の中ですら、ひときわ異彩を放つ存在となっていました。なお、使用目的は「クリケットのゲーム」。
私が会場入りしたのは16時ごろ。すでに開発は佳境に突入しており、十二分に温まっていました。当然ながら、5チームすべてに Oculus Rift が配備されており、会場は熱気とあわせていささかシュールな雰囲気があったこともつけくわえなければならないでしょう。
さて、タイムアップ。……のところが、予定調和として30分ばかり延長戦。発表直前、各チームがほぼ完成にこぎつけにわかにもりあがっていたのが印象的でした。なお、このことについて一部開発者からは「こうしたイベントで全チームがきちんと創りあげるのはめずらしい」とのコメントも。
いざ発表開始です。一番手は『JUMPING FLASH』。
タイトルからそのまま伝わってくるとおり、PS『ジャンピングフラッシュ!』を意識した作品です。コントローラで操作しつつ Oculus で視界確認と「Oculus 的には普通」の内容ですが、それゆえに相性は絶好でしょう。なお、タイトル画面からゲームオーバー画面までゲームとして一連のシーケンスが完成していたうえ、複数のステージが用意されていたのも印象的。会場からは「これ500円くらいで売れるんじゃないの?」の声も。
私はこれでセガ『モンキーボール』をプレイしたくなりました。
見ての通り、モーションキャプチャを導入していたチームです。「Oculus は発表が難しい」という伝説があるそうですが、ゲーム画面をプロジェクタに出力するのに苦戦。結局、ひとまずプレイしている様子だけをプレゼンテーションすることからスタートしたのですが
ボールになかなか当てることができず会場を歩きまわり腕を振り回すというじつにシュールな光景が繰り広げられていましたが、ゲームとしてのコンセプトは Oculus Rift にたいへんマッチしています。というのも、「ボールを打って壁に跳ね返って、さらにそれが後ろ側の壁に跳ね返ってきたものを打ち返す」という、Oculus の立体性を存分に活かしたものだからです。本物をやれば? と思わず突っ込みたくなるゲームは良いゲームに違いありません。
次はチーム『MMD』。まずプレゼンの切り出しをそのままお伝えします。「ぼくたちチームおっぱいは、おっぱいシューティングということで、おっぱいが飛んで行くという理論から始まって、おっぱいをタッチしていくというゲームにしました。おっぱいがシューティングしてくる!ということです」。
迫り来るキャラクターの胸部を Razer Hydra でタッチしてゆくという(率直な)アイデアです。Unity と性的要素の相性の良さを示すサンプルがまた1つ増えてしまいました。ゲーム自体に特筆すべき部分はありませんが、やたら創り込んである手のモデリング(わざわざ揉むモーションまで製作)や、開発者によるコメント「ミクではおっぱいが小さすぎて当たり判定が厳しかった」などからは、あらたな伝説の夜明けを感じさせます。会場から最も笑いを獲得していたのは文句なく本作です。
冬らしく、雪山を下っていくゲームです。当初はキー操作でオブジェクトを避けられるようにしようとしたが時間内には実装できなかったとのこと。「とりあえずスリルを味わってもらうゲーム」としていましたが、何故か突如起こる爆発、乱れ飛ぶクマのぬいぐるみなどからは何を味わうべきかすぐには判断できませんでした。開発者による 「クリスマスを意識した」 というコメントについては即座に「終了のお知らせじゃねえか!」と会場からの反撃が。
引き続いてチーム『通信じゃんけん』。
プレイヤーがそれぞれミクさんになってじゃんけんをする作品。手のモーションは LEAP MOTION で感知し、通信部分は Photon Cloud にて対応しています。LEAP MOTION の仕様か、いささかグー・チョキ・パーのセンシングに苦戦している様子でしたが、内容はかなり前進的です。なお時間切れで実装はできなかったものの、当初のコンセプトでは「じゃんけんしてからあっち向いてホイ」の予定だったとのことです。
トリを務めるのは『みくさがし』。
Oculus で周囲を見回して、ヒゲのついたニセミク100体のなかから本物を見つけ、お互い見つめ合うとクリアというもの。いわく、「(膨大な数の初音ミク)みんながこっちを見るので遊んでて非常に気分が悪くなってきます」とのこと。最初は全員を同じ方向を向けていたところ、シカトされてるみたいだったから却下したそうです。いい具合に笑いをとっていました。
Oculus Rift は知名度こそ国内でも高まっていますが、購入にあたっての障壁は低くなく、実際に触る機会もあまりありません。そんな状況下でにありながら、関西で、しかも開発系のイベントがひらかれ、さらには全チームがほぼ”完成”にこぎつけていたのはなかなか興味深いことです。ゲームジャムやハッカソンが関東の専売特許でなくなる時代は、Oculus あるいはそれに類する VR デバイスの普及とワンセットで到来するかもしれません。
[フォトレポート]