『No Man’s Sky』、過去のインタビューなどから「実装されなかった要素」リストがユーザーによって作成される

ゲーム機やPCのスペック向上により、ゲーム開発も年々規模が大きくなってきている。3Dゲームはもちろんのこと、オープンワールドのようなスケールの大きな作品になってくると、最初に企画していた仕様をすべて実装するのは至難の業だろう。イギリスに拠点を構えるHello Gamesは、約15人という規模で宇宙を舞台とした広大なオープンワールドゲームを生み出した。彼らが世に放った渾身の力作『No Man’s Sky』もまた、最終的には大幅な仕様変更が強いられたゲームであることが、ユーザーの手によって明かされつつある。

fans-try-to-uncover-what-is-no-mans-sky-actually-doesnt-include-001

『No Man’s Sky』は発表当初から注目を集めていた作品だ。宇宙を探索し無数の惑星に着陸できるという野心的なコンセプトは、多くの人々を振り向かせた。その注目度からディレクターのSean Murray氏はさまざまなメディアのインタビューを受けており、その様子がYouTubeを中心とした動画サイトには残っている。情報に飢えた熱狂的な海外ユーザーは、これらインタビューから情報を収集しながら、ゲームへの期待を膨らませていった。そして記念すべき発売を迎えると、コミュニティは多くの声で溢れた。しかし生まれた声すべてがポジティブなものとは限らない。発売前から熱心にゲームを追いかけていたユーザーのなかには、前情報と異なる点に疑問を持つ者も少なくなかった。

こういった声を検証すべく立ち上がったのはredditユーザーMeetWayneKer氏だ。氏は、前述した大量のインタビューを中心に、過去に公表された『No Man’s Sky』にかんする情報を洗い尽くし、「発売前に示唆されていながら製品版に実装されなかった要素」をリスト化し始めた。

どの要素が実装されなかったか

氏の列挙したリストはとにかく膨大であるので、要点をかいつまんで紹介していきたい。まずは宇宙にまつわる仕様について。『No Man’s Sky』ディレクターのSean Murray氏はGame Informerから、宇宙にある小惑星に着陸できるかと問われ、できると答えているが、実装には至っていない。また宇宙ステーションなどを破壊できるとも明かしているものの、こういった体験も製品版ではできない。NPCにかんしては、種族の違う異星人同士での同盟や対立などが存在し、介入できるといった要素が示唆されていたが、こういった場面は見受けられない。特に太陽系に関連する要素はかなり削除されたようで、太陽の近さによって生態系や天候が変わるといった性質や、惑星がゆっくりと太陽をまわるような要素も製品版には登場しない。

ほかにも動物同士が捕食しあい惑星の生態系が変化するといったシステムや、巨大建造物やアニメーションする建物、ビーコンやラジオといった多くの要素の存在を事前のインタビューでほのめかしていたが、実装に至らなかったようだ。

とにかく多くの“実装されなかった要素”が並べられているMeetWayneKer氏の検証リストは圧巻。このリストはほかのユーザーのフィードバックを受けながら現在進行系で編集されており、まだまだ検証と改善が続けられるだろう。

fans-try-to-uncover-what-is-no-mans-sky-actually-doesnt-include-002

確かに『No Man’s Sky』の多くの要素が、製品版からなくなってしまった可能性は否定できない。しかし、留意しておきたいのは、これらの要素のなかで、Murray氏がはっきりと「実装する」と宣言していたものはそれほど多くない。例えば小惑星への着陸にかんしては「yeah, at the moment you can land on the asteroid(現時点では惑星に着陸できる)」と“現時点では”という言葉をまじえ慎重な回答をしている。宇宙ステーションの破壊についても「May be(多分)」と答え、断言するようなコメントはしていない。そのほかの要素も、基本的にはインタビュアーが「こういった要素はありますか?」という質問にYes/Noのみで答えているものが多い。文字のインタビューで残っている太陽系の周辺の仕様は、惑星と太陽の関係性など突っ込んだ話をしているものの、Murray氏は映像のインタビューではいつもやや緊張しているような様子を見せており、“ついのせられて話をしてしまう”ような人柄にも思える。

小さなスタジオだからこそ生まれた誤解

このように、Murray氏はあることないことを吹聴している印象を受けない。しかし、多くのメディアから注目されインタビューされるなか、まだ実装予定であったり、実装できるかわからなかったりする要素を、サービスでイエスと言ってしまった可能性もある。こういったことは恐らく、Hello Gamesが小規模のスタジオだからこそ生まれてしまった誤解なのかもしれない。Sean Murray氏はHello Gamesの社長であるのと同時に、開発スタッフでもある。会社のリーダーとして広報を担当しているが、専門家ではない。そしてHello Gamesがこれまで開発してきたのは『エキサイトバイク』と『Trials』を融合させたようなレースゲーム『Joe Danger』シリーズのみだ。言葉は悪いかもしれないが、今回のような注目に慣れているはずもない。

最初に述べたように、ゲームを生み出すうえで、コストやスペックの問題で内容や仕様を削減するというのは珍しいことではない。我々の知らないところでも、そういった最適化はおこなわれているだろう。Murray氏は、メディアのインタビューに不慣れゆえに多くのことを話し、実際に実装されなかったことによって、間接的にその削減のプロセスをユーザーが把握できてしまったのが問題だろう。大手パブリッシャーでは、専門の広報が存在し、情報のコントロールをおこなっており、過剰なサービスや不必要な情報公開は基本的にはおこなわれない。ゆえに、今回のような騒動が生まれてしまったのはHello Gamesが広報を設置しない規模のスタジオだからかもしれない。

今回のような検証からもわかるように、Hello Gamesに対しては賞賛と批判が交差しており、良くも悪くも大きな注目を集め続けている。『No Man’s Sky』は、PC版の不具合を改善するためのベータパッチをすでにリリースするなどアップデートが始まっており、ユーザーの目は依然として光り続いている。酸いも甘いも体験した彼らにとっては、むしろここからがデベロッパーとしての正念場なのかもしれない。

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog