“暴力ゲーム有害説”を示す研究を「ゲーマーは疑って遠ざけがちな可能性」。“レッテル貼り”と受け止め、読む気も削がれる心理

「暴力ゲームによってプレイヤーの攻撃性が高まる」とする研究に対して、ゲーマーは防衛反応から研究者の能力などを低く評価する傾向にあるという。

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ゲームが現実での行動にもたらす影響についてはさまざまな議論がおこなわれており、暴力的な表現を含むゲーム(以下、暴力ゲーム)によって、プレイヤーの攻撃性が高まるとする研究も存在。ただ、該当するジャンルを好むゲーマーはそうした研究の結果に対して、防衛反応から研究者の能力などを低く評価する傾向にあるという。

オーストリア・インスブルック大学のYashvin Seetahul氏およびTobias Greitemeyer氏は、論文「The High Score of Bias: Exploring How Violent Video Game Players Perceive Scientists in This Field and Engage with Their Research」を共同で執筆した。同論文は心理学系学術誌「Collabra: Psychology」に6月26日に掲載された。

ゲーマーの防衛反応

著者らによれば、暴力ゲームがプレイヤーの攻撃的な思考・感情・行動などを高めるか否かについては意見が分かれているという。たとえばアメリカ心理学会のタスクフォースでは、ゲームが暴力的な犯罪を引き起こすとは結論づけられないものの、プレイヤーの攻撃性の高まりとの関連が認められるとする見解を2017年に報告している。一方で、同年には同じくアメリカ心理学会が発行する学術誌「Psychological Bulletin」にて、暴力ゲームには短期的な悪影響があるといったエビデンスは誇張されたものだと結論付ける研究が掲載されている。

ただ、そもそも「ゲームが攻撃性を高める可能性を肯定する研究結果」に対してゲーマーは、自身の社会的アイデンティティを脅かすもの、または烙印(スティグマ)として受け取り、研究者の信頼性を疑うといった防衛的な反応を示す傾向にあるという。そこで研究者らは、暴力ゲームによる影響についての研究結果が、プレイヤーが抱く研究者の能力や親しみやすさにどのように影響するか、そしてプレイヤーのその後の科学研究への触れ方にどのような影響を与えるかを調べることにした。

本研究では、参加者が日常的にプレイしているゲームのジャンルを検証。先行研究や、暴力的な行動がゲームプレイの仕組みにおいて中心的な役割を果たしているという点を踏まえて、「アクション」「アドベンチャー」「アクション・アドベンチャー」の3ジャンルのプレイ頻度を暴力ゲームへの接触頻度とみなしている。

そのうえで本研究では2つの実験を実施。まず実験1では、788名の参加者を2つのグループに分けた。片方のグループには、「暴力ゲームが攻撃性を高めると結論づけたメタ分析・一次研究・プレス記事」を提示。もう一方のグループには、逆に攻撃性への影響はないと結論付けた同様の資料を提示した。各資料は架空の著者による架空の研究に基づくものであるほか、研究手法などはすべて完全に同一で、結論部分だけが異なるものとなっている。資料が提示されたあと、参加者は研究者に対する「能力(Competence)」と「親しみやすさ(Friendliness)」を評価し、結論への同意度を回答するという流れだ。その後、攻撃性の上昇を認めるものとそうでないものを半数ずつ含む実在の12本の論文要約を提示し、次にどの論文を読みたいかを参加者に選ばせた。

また実験2でも、788名の参加者を2つのグループに分割。今度は、「暴力ゲームが攻撃性を高めると結論づけるメタ分析3本と一次研究3本」、そして影響はないと結論づけるメタ分析3本と一次研究3本の、計12本の実在の論文要約を用意し、それぞれのグループで研究のメタ分析および一次研究の要約をランダムに1本ずつ提示した。実験1と同様に、参加者には研究者の「能力」と「親しみやすさ」について報告させたが、その後のタスクが異なっている。実験2では12本の論文要約を提示し、参加者がそれぞれの要約を読むのに費やした時間をさりげなく記録した。

結論だけ見て“レッテル貼り”に

実験の結果、まず日常的に暴力ゲームをプレイする参加者は、研究の結論が自身の信念と対立する場合には、その研究者の能力や親しみやすさを有意に低く評価する傾向が確認された。実験1で用意された研究はそれぞれ、研究手法が完全に同じで結論のみが異なるため、研究自体の質ではなく、結論に同意できるかが、研究者の能力や親しみやすさを評価する上で重視されているようだ。

また「選択的接触(Selective exposure)」、すなわち自分の考えと食い違う情報を避けようとする傾向については、実験1の自己申告による測定では明確な関連は見られなかったものの、実験2での時間の測定による調査では、日常的に暴力ゲームをプレイする参加者ほど、ゲームが攻撃性を高めると結論づける研究を読む時間は少なくなっていたという。なお因果推論モデルを用いた分析によって、上述した2つの傾向は連鎖していることが示されている。つまり、研究者の結論に同意できない場合に、研究者の能力に対する人物評価が低くなり、これによって同じような結論を提示する研究を避けようとするという流れのようだ。

ただし、著者らはこうした問題が“ゲーマー側だけの問題として扱うべきではない”ことも示唆している。社会における暴力がゲームのせいであるといった不当に烙印を押す言説(Stigmatizing language)によって、ゲーマーは研究者を自分たちへの“脅威”であると感じてしまい、結果としてバイアスが強まる可能性があるという。結びでは、ゲーマーが研究者に対して抱くバイアスを緩和するコミュニケーション手法を模索することの重要性が語られている。また今後の課題としては、そうしたバイアスの形成過程を探る研究や、研究者のバイアスの有無も考慮した研究などが挙げられている。

実際に世界では、暴力事件などが発生するたびに、ゲームのプレイが原因として取り沙汰されることがある。日本でも2000年代初頭に、ゲームのプレイによって子供が瞬発的に怒りやすくなる可能性があることを危険視する「ゲーム脳」の言説が提唱され広まったが、こちらは科学的根拠に乏しいことが指摘されている。今回の研究はそうした状況で、特に槍玉に上がりやすい暴力ゲームについて扱ったものだ。暴力ゲームを日常的にプレイするゲーマーはネガティブな研究結果を、自分たちへのレッテル貼りや脅威として受け取る可能性が示されたといえる。そうした傾向がゲームに限らず存在するかどうかも注目される研究トピックといえるだろう。

いずれにせよ市場規模の拡大に伴ってゲームは社会において存在感を増しており、その影響を科学的に解明することの意義は大きい。ただ研究によって得られた科学的知見がゲーマーコミュニティにとって否定的に受け取られうるものである場合、適切に伝えるためには軋轢を生まないようなコミュニケーション方法を探る必要があるのかもしれない。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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