『ヘルダイバー2』開発元トップいわく、「新世代のフロム・ソフトウェアや(昔の)Blizzardを目指したい」。良いゲームを作れる、働きたくなるスタジオを目標に


HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』を手がけるArrowhead Game StudiosにてCEOが交代。新たなCEOを迎え入れつつ、元CEOであったJohan Pilestedt氏は今後最高クリエイティブ責任者(CCO)として同作の開発などにより深く携わっていくという。CEO交代に際して、同氏および新CEOのShams Jorjani氏に向けて海外メディアGamesIndsutry.bizがインタビューを実施。このなかでスタジオの今後の展望などが明かされている。海外メディアGames Radar+が伝えている。

『HELLDIVERS 2』は、見下ろし視点型シューター『HELLDIVERS』の続編となるTPSだ。開発はArrowhead Game Studiosが手がけている。本作は最大4人でのオンライン協力プレイに対応し、PC版とPS5版の間でのクロスプレイもサポート。プレイヤーはエリート兵士ヘルダイバーとなり、宇宙生物のムシ(ターミニッド)や、オートマトンと呼ばれる殺人ロボットの大群に立ち向かうミッションに挑む。

本作は2月8日にPC(Steam)/PS5向けに配信開始され、Steamではピーク時の同時接続プレイヤー数が45万8709人を記録する絶好調の船出を見せた(SteamDB)。開発元が想定外とする盛況ぶりから、一時サーバー問題も発生し、緊急の対応がおこなわれていた。そうしたロケットスタートを切ったこともあってか、5月4日時点で売上1200万本を突破したことが伝えられている(関連記事)。


トップの交代

今回、Arrowhead Game StudiosのCEOを務めていたJohan Pilestedt氏は、新たにShams Jorjani氏を迎え入れ、CEOの職をShams氏に譲り渡すことを発表。Shams氏はこれまでParadox Interactiveの最高事業開発責任者(CBDO)などを務めてきた人物だ。一方のPilestedt氏は、今後スタジオの最高クリエイティブ責任者(CCO)を担当するという。これによってPilestedt氏は開発チームとより密接に関わり、ゲーム開発とコミュニティとの関係に100%集中できるとしている。

今回の体制変更にあたり、海外メディアGamesIndsutry.bizはPilestedt氏およびShams氏へのインタビューを実施。『HELLDIVERS 2』発売後のスタジオの状況や今後の展望などが明かされている。

たとえばPilestedt氏は、今月初めには本作Steam版でのPSNのアカウント連携必須化を巡って大きな批判が巻き起こっていた件について言及。ユーザーの批判を受け、ソニー・インタラクティブエンタテインメントはアカウント連携の必須化を見直すことを表明していた。

この騒動に関して、Pilestedt氏はArrowhead Game Studiosのデビュー作である『Magicka』のリリース時に同様の経験をしていたと述べている。同作は2011年にリリースされたものの不具合などの課題を抱えていたことからユーザーの批判を受けていた。同氏によれば、今回のアカウント連携を巡る騒動はそれよりはるかに大規模であったものの、当時の経験からコミュニティとの交流を続け、ユーザーにはできる限り正直に何が起こっているのかを伝えることに努めたという。結果として先述のSIEによる見直し発表後、コミュニティは和やかさを取り戻していた(関連記事)。

そうした問題を乗り越えて、Pilestedt氏はShams氏にCEOの職を譲り、今後はCCOとしてゲーム開発に取り組んでいく運びだ。ちなみにSham氏とは、先述の『Magicka』以来の縁があるという。同氏はかつてスウェーデンのゲーム開発コンペティション「Swedish Game Awards」のパートナーマネージャーを務めており、『Magicka』は同コンペティションにて優勝を飾っていた。さらにShams氏はその後Paradox Interactiveに入社。同社は『Magicka』のパブリッシャーを務めており、Shams氏は同作やスタジオの第2作『The Showdown Effect』のパブリッシングに携わっていたという。そうした縁もあり、今回Shams氏はCEOを任されるに至ったようだ。


今後の展望

Arrowhead Game Studiosの展望も明かされており、Pilestedt氏は開発チームのワークフローの改善や最適化を掲げている。同氏によれば(『ヘルダイバー2』の成功をうけて)スタジオはより野心的になっているといい、もっと多くのゲームやコンテンツを開発していきたいとのこと。

またPilestedt氏には、今回Shams氏を迎え入れ、今後“どこまで高く飛べるか”を試してみたい想いがあるとのこと。さらに同氏は、Arrowhead Game Studiosには「次なるフロム・ソフトウェアやBlizzard Entertainment(next From Software or Blizzard)」のポジションを狙えるポテンシャルが十分にあると考えているそうだ。ちなみにBlizzard Entertainmentは、同氏が子どものころに働きたいと願っていたスタジオだという。当時の憧れも反映された発言なのだろう。なおPilestedt氏はインタビュー記事へのユーザー反応に返答するかたちで、ここでの言及は“2004年以前のBlizzard”を指していたことを強調している。


そうした野望もある一方で、Pilestedt氏はArrowhead Game Studiosが“500人規模の会社”になる必要はないとも述べている。会社の規模を拡大して、さまざまな面での苦痛を生じさせたくない考えがあるそうだ。なおスタジオの求人ページによれば、Arrowhead Game Studiosのスタッフは現在約120人。過去には『HELLDIVERS 2』のサポートにおいて人手が不足している内情も伝えられていたものの、少なくとも現時点では数百人規模の増員をおこなう予定はないようだ(関連記事)。

またPilestedt氏によれば独立系スタジオ(independent studio)であることにも誇りをもっているそうで、現時点では株式を公開してどこかに買収されるつもりはないとのこと。開発チームが素晴らしい品質のゲームを作れる働きやすい職場を維持できるように、適切な成長をしていくと伝えた。

『HELLDIVERS 2』にて大きな成功を収めたArrowhead Game Studios。CEOの交代という新たな体制での今後の野心も示されたものの、無理な拡張ではなく、チームの働きやすさや開発されるコンテンツの品質が重視されていくようだ。先日には開発元スタッフにより『HELLDIVERS 2』のアップデート間隔を少しゆっくりにする方針も伝えられており、そうした理念がさっそく反映されているのだろう(関連記事)。新たな体制のArrowhead Game Studiosが手がける『HELLDIVERS 2』のこれからの展開や、新作については注目される。

『HELLDIVERS 2』は、PC(Steam)/PS5向けに配信中だ。