ワンショットカルト狙撃ゲーム『Children of the Sun』、“売上が想定以下”との推測を販売元が真っ向否定。調子イケてっから心配ない

 

パブリッシャーのDevolver Digitalは4月9日、開発者のRené Rother氏が手がけた『Children of the Sun』をPC(Steam)向けにリリースした。本作の売上について、マーケティング・コンサルティング会社のスタッフが「パブリッシャーの想定を下回るのではないか」とコメント。パブリッシャー側が真っ向から否定し、その様子が話題となっている。

『Children of the Sun』は三人称視点のパズルシューターだ。主人公は一人の少女。彼女は己の人生を狂わせたカルト教団への怒りを胸に、一本の狙撃銃を手にして復讐の旅路に向かう。本作では、たった一発の弾丸でその場のカルト信者たちを一網打尽にする必要がある。少女の特殊能力によって、着弾地点からふたたび弾丸を飛翔させることができるのだ。弾道を曲げたりといったテクニックも駆使して、ステージ上の敵を一筆書きのように仕留めていくわけである。

本作は4月9日にリリース。本稿執筆時点で約170件のSteamユーザーレビューを集め、うち95%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。また、Metacriticにおけるメタスコアは81(100点満点)と、メディアレビューでも高評価。また、集計されたレビュー件数も32にのぼっており、同規模作品としてメディア注目度が比較的高い様子もうかがえる。


そうした好評を受ける『Children of the Sun』について、「売上が販売元の想定を下回るだろう」との推察が投じられた。マーケティング・コンサルタント会社ICO PartnersのLewis Burnell氏は4月10日、X(旧Twitter)上にて本作について投稿。「多くのメディアに取り上げられ、高評価を獲得した」としつつ、Steamでは発売当日で最大同時接続プレイヤー数208人に留まったことに言及した。同氏はこのデータから、「おそらく今後1週間での売上は5000本程度となるだろう」と概算し、間違いなく発売元Devolver Digitalの想定を下回る売上となるだろうとした。

こうした推察は、Burnell氏の経験に基づくのだろう。同氏は配信後20日以内に16万本を売り上げたインディーゲーム『Big Ambitions』や、プレイヤー数1000万人を超えたという大ヒット作品『バルダーズ・ゲート3』などのマーケティングに携わった人物。そうした経験を背景として、Steam同時接続プレイヤー数から売上予測を立てたかたちと思われる。

しかし、Burnell氏の推測は外れていたようだ。同氏のポストからおよそ12時間後、開発元Devolver Digitalが同氏の推測を真っ向否定したのである。Devolver DigitalはBurnell氏のポストに対して「ご興味を持ってくださってありがとうございます」とリプライ。続けて「『Children of the Sun』はすでにあなたの初週売上予測を突破しています」として、本作のセールスが好調であると丁寧に伝えた。

ただし、別ユーザーから「ビジネス調ではなく下品な言い方で」とリクエストされたDevolver Digitalは「調子イケてっから(Shit’s cool.)」と同パブリッシャーらしい尖った言い回しで返答している。自社パブリッシングタイトルが勝手に売上不調扱いされ、なかなか腹に据えかねた部分もあるのかもしれない。

Burnell氏のポストには、『Children of the Sun』を開発した本人である個人開発者のRené Rother氏も反応。「このゲームがもっと注目されるべきだと思ってくれてありがたい」としつつ、Burnell氏の示したデータから予想されるより、作品のセールスは好調であると伝えた。Burnell氏は販売元・開発者いずれからも、推測を否定されたかたちになる。

とはいえ、前述の通りBurnell氏はマーケティングについて経験のある人物。『Children of the Sun』がDevolver Digitalの手腕によって、同氏の経験則に沿わない売れ方をしているとも考えられるだろう。また、Burnell氏は普段からインディーゲームをサポートする姿勢を見せてもいる。今回のDevolver Digitalの“ツッコミ”に対してもすぐさま「(売上がいいのは)素晴らしいニュースだ」と返答していた。


今回のBurnell氏の投稿やDevolver Digitalからの返答は数百件のシェア数を得て、業界関係者やゲーマーらから多くの意見も寄せられている。目立つのが、ゲームの「見つけやすさ」について論じる声だ。インディーゲームの隆盛によって、年々ゲームのリリース本数は増加。そうした中で、小規模デベロッパーがゲームを宣伝しユーザーに届けること、そしてユーザーが好みのゲームを見つけることが難しくなっているのでは、との議論がある。

『Children of the Sun』についても、Burnell氏が「数多くのメディアで取り上げられた」と紹介したものの、今回の一件によって初めて本作を知ったというユーザーや、“ニッチな”ゲームだと認識しているという声も散見される。メディア露出などを重ねても、大量のゲームが常にリリースされる状況では埋もれがちになる側面もあるのだろう。

Burnell氏の元の投稿も、そうしたゲーム宣伝の難しさに触れる文脈で、『Children of the Sun』のSteam同時接続プレイヤー数が振るわないと伝えたものであろう。しかしいずれにせよ、本作は高評価で売上も好調のようである。

『Children of the Sun』はPC(Steam)向けに販売中。ゲーム内は日本語表示にも対応している。