『スーパーマリオ64』かつて「人力再現ほぼ不可能」とされた手法で世界新記録が樹立。しかし“1秒更新”という結果に走者は不満げ

 
Image Credit: puncayshun on YouTube

スピードラン走者のpuncayshun氏は10月13日、『スーパーマリオ64』のスピードランにおいて世界記録を1秒更新し、クリアタイム1時間37分34秒を記録した。今回のスピードランは、人力での実現が現実的となった進行チャート「Carpetless」が採用された初めての世界記録でもあった。

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Speedrun(スピードラン)とは、日本ではRTA(リアルタイムアタック)とも呼ばれる、ゲームクリアなどの目標を達成するまでの時間を競いあう競技だ。スピードランの対象となっているゲームやレギュレーション、世界記録ランキングなどはSpeedrun.comで確認することができる。今回世界記録が更新されたのは「120 Star」と呼ばれる、『スーパーマリオ64』のゲーム内に登場するすべてのスターを集めたうえでゲームをクリアするレギュレーションだ。

今回120 Starで世界記録を更新したpuncayshun氏は、以前より本作のRTAについて複数のレギュレーションを走っていた。120 Starのカテゴリーでは今年8月より個人クリアタイムを数度更新しており、9月17日には自身の個人ベストクリアタイム1時間37分54秒を記録していた。そして10月13日、同氏は今まで採用してこなかった進行チャート「カーペット無し走法/Carpetless」を採用し、ついに1時間37分34秒のタイムを叩き出してそれまでの世界記録を1秒短縮した。

今回世界記録達成の鍵となった「Carpetless」は、つい最近新しい実現手法が提案された進行チャートだ。本作のステージ「レインボークルーズ」には「てんくうのおやしき」というスターがあり、獲得するには従来はカーペットを乗り継いでいく必要があった。そのカーペット地帯をスキップして時間短縮を図る「Carpetless」はタイムの大幅な短縮を狙えるが、人間には再現困難なレベルの精密な入力が必要とされ“非現実的”とされていた。ところが、本作のスピードランについて検証をおこなっているKrithalith氏によって、「Carpetless」の人間の操作での実現が容易になる手法が提案された(関連記事)。

人力で実現可能な「Carpetless」再現手法の確立によって、「てんくうのおやしき」の大幅なタイム短縮は現実的なものとなった。120 Star以外のレギュレーションで記録を残しているスピードランナーSuigi氏が実際にこの手法を試行したところ、11回連続で成功し、かつ成功したすべての試行で45秒以上タイムを短縮できたという。そうした手法を利用することで、このたびpuncayshun氏が新しい世界記録を叩き出したわけだ。

しかし、今回の世界記録更新についてpuncayshun氏はあまり喜んでいないようだ。puncayshun氏は、X上で世界新記録を更新したことを報告しつつも、「Carpetless」を採用したにもかかわらずタイムを“1秒しか”短縮できなかったことについて言及。カーペット地帯の短縮には成功したが「たかいたかいマウンテン」や「チックタックロック」など、ほかの区間でのロスが積み重なった結果、マイナス1秒に留まってしまったようだ。puncayshun氏は、そうした背景もあってかいずれ記録が抜かれて負けることも受け入れられると語っている。

https://twitter.com/puncayshun/status/1712607093520302149

今回の記録は1秒という短めの更新にとどまったが、「Carpetless」採用チャートによる120 Starの完走が現実となったということでもある。また、その他区間でのタイムロスがあったにも関わらずクリアタイムが短縮できている点は、「Carpetless」によるタイム短縮の大きさを物語っている。

今回の更新を皮切りに「Carpetless」を採用したランが増えていき、いずれは1時間36分台に突入する大幅な更新もありえるだろう。『スーパーマリオ64』の120 Starスピードランからは、今後も目が離せなさそうだ。