「大作ゲームのPC最適化不足問題」議論が過熱。一方で、「900通り以上の環境を想定するPC最適化の難しさ」を強調する開発者意見も注目集める

 

Naughty Dogにてシニア・キャラクターアーティストを務めるDel Walker氏は4月29日、PC向けゲーム開発の難しさについてTwitterに投稿。これが海外ゲーマーの間で大きな反響を呼んでいる。


Walker氏は、4月28日に発売された『Star Wars ジェダイ:サバイバー』について報じる、海外メディアPC Gamerの記事を引用しながらコメントしていた。記事では、Steam版のユーザーレビューも取り上げながら、同作のPC版のパフォーマンス面の問題を指摘。要件を十分に満たした環境のPCであっても、フレームレートの低下や起動エラーなどの問題が頻発するとして、Steamでは不評レビューが多数投じられ、ユーザーレビューステータスは「ほぼ不評」に落ち込んでいた。

同作においては、発売初日のパッチ配信と、パフォーマンスの改善とバグ修正を発売後数週間に渡っておこなうことが、発売前日に告知され話題となった(関連記事)。販売元EAは、あらかじめ本作の問題を認識したうえで、発売に先立って問題の解決を約束したが、ユーザーレビューにて不評を受けることは免れなかった格好だ。なお、同作ではその後パッチが配信され、Steamのユーザーレビューは現時点で「賛否両論」ステータスまで持ち直している。

ただ前出のPC Gamerは、『Star Wars ジェダイ:サバイバー』のように不十分な状態でリリースされるAAAクラスのPCゲームが相次いでいるとして、同作だけにとどまらない問題の根深さも指摘している。たとえば今年だけでも、Naughty Dogの『The Last of Us Part I』やコーエーテクモゲームスの『Wo Long: Fallen Dynasty』といった大型タイトルが、ローンチ時にパフォーマンス面の問題に直面しユーザーレビュー評価を下げている。特にマルチプラットフォームタイトルにおいて、PC向けの最適化が十分になされないままリリースされることが、PCゲーマーの不満をさらに増大させているようだ。

そうした不満の声に対してDel Walker氏は、コンソール向けとPC向けのゲーム開発の違いについてコメント。コンソールゲームは、いわば1セットのドライバ/ハードウェアに向けて開発するようなものであるが、PCのゲーム環境は統一されておらず、900通り以上のPC環境を想定して開発しなければならないという。特に、高度なグラフィックと複雑な構造をもつ近年の作品は、開発が非常に困難になっているとのこと。

そのため、開発中には本当に準備が整ったと認識していたとしても、実際のところは数百万人のユーザーに向けてリリースしてみないと分からないという側面もあるそうだ。そしてWalker氏は、最適化不足のままリリースされたとしても、それは決して開発者が怠けていたわけではないのだと主張した。

『Star Wars ジェダイ:サバイバー』の開発元でもあるRespawn Entertainmentにて、『Apex Legends』のソフトウェアエンジニアを務めるTyler Owens氏も、Walker氏の意見に賛同。ゲーム開発環境の整備が進む一方で、ユーザーのPCの構成は年々複雑化しているとし、依然として開発は困難を極めるとのこと。また、QA業務などをおこなうLionbridge GamesのBlaine Biehle氏は、数千種類の構成のPCを用意しテストしても、すべての問題を把握することはできないと述べている。


Walker氏のツイートは、現時点で約3000件のリツイートと、約3万件のいいねが投じられるほど大きな注目を集めている。反応を見てみると、同氏の意見に理解を示す人もいるが、反発する意見も少なくない。価格に見合わない品質であるならば、ユーザーには文句を言う権利があるだろうというものや、ユーザーを使ってテストプレイさせているといった厳しいコメントも。また、開発チームに十分な時間を与えない会社側こそ非難されるべきだという意見もみられる。

今回の件では、特にAAAクラスの大作について語られており、そうした作品への期待度の高さや、いわゆるフルプライス価格が60ドルから70ドルへと値上げされている状況も相まって、いざ最適化不足や不具合に直面した際の不満が大きくなっている側面もあるのだろう。また開発における事情は、ユーザーにとっては関係のないことだという心情が批判する人にはある模様。そんななかでWalker氏やOwens氏は、決して怠けているわけではないと強調しながら、開発者が置かれた難しい状況を吐露することとなった。