ドワンゴ、特許庁による「ゆっくり実況」などの商標出願拒絶を“歓迎”。ゆっくり独占を防ぐ取り組み続く

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株式会社ドワンゴ(以下、ドワンゴ)が運営する動画コミュニティサービス「ニコニコ」は2月16日、「「ゆっくり○○」商標についてのお知らせ」というタイトルで声明を発表した。「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」の商標出願について、特許庁から拒絶理由通知を受領したという。商標登録がかなわなかった結果を、むしろ歓迎する内容となっている。

本件については、昨年「ゆっくり茶番劇」という文字商標が登録されたことが発端となっている。ゆっくり茶番劇とは、ニコニコやYouTubeといった動画共有サービスにおいて、特定の動画ジャンルを指す単語だ。特徴としては、音声合成エンジン「AquesTalk」を用いた音声が使用されていることが挙げられる。また同ジャンルの動画では、『東方Project』に登場する博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラクターをモチーフとした、「ゆっくり」と呼ばれるキャラクターが登場することもある。このゆっくりたちが喋っているように動画がつくられていることから、AquesTalkは「ゆっくりボイス」と呼ばれることも多く、ユーザーに広く浸透している。

現在、ニコニコではAquesTalkなどを用いたゲーム実況動画に「ゆっくり実況プレイ」というタグがつけられ、60万本近く存在している。ほかにも、ゆっくりたちが特定のコンテンツについて解説する「ゆっくり解説」といった動画をはじめ、「ゆっくり○○」という呼称は幅広く使用されている。ニコニコに限らずとも、ネット上でこうした形式の動画を目にしたことはあるはず。ゆっくり茶番劇も、それらに含まれる呼称のひとつといえる。


多くのユーザーがゆっくり形式の動画を投稿している中、2022年2月に「ゆっくり茶番劇」が商標登録されたことで、ネット上では物議を醸した。というのも、ゆっくりというキャラクター自体は、『東方Project』の二次創作ガイドラインの対象である。しかし権利をもたない第三者が商標登録をおこない、この単語を利用する動画投稿者に対して利用料を徴収しようとしたことから、反発意見が相次ぐ結果となった。

この騒動は企業が動く事態にまで発展。ドワンゴは「コミュニティが築き上げてきた文化を独占・私物化するような行為に憤りを覚えている」として、2022年5月に商標の無効審判や「ゆっくり」の商標登録に関する記者会見をおこなった。『東方Project』の原作者・権利者であるZUN氏と継続的にコミュニケーションをとりながら、複数のアクションを起こすことにしたのだ。

ドワンゴが打った手は、「ゆっくり茶番劇」商標権の放棄交渉。「ゆっくり茶番劇」商標登録に対する無効審判請求。使用料を請求された人への相談窓口の設置。そして、商標登録による独占の防止を目的とした商標登録出願だ。なお、「ゆっくり茶番劇」の文字商標について、現在はすでに放棄による抹消登録がされている。

一連のアクションを起こした際に、さらなるゆっくり関連商標の独占防止を目的として、ドワンゴから商標登録が出願されていたのが、「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」といった文字列だったのだ。まず、この出願は権利行使するためではないとドワンゴは前置き。その上で「インターネットを利用しておこなう映像の提供において、ジャンル・カテゴリーを指す表示として一般的に使用されている」ことを理由に、特許庁が商標登録を拒絶すれば、誰も商標登録できないことが明らかになるとドワンゴは説明していた。

騒動はひとまず収まりを見せていたものの、今後似たような出来事が起こることを防ぐために、企業自らが商標登録できないという事例をつくろうとしたわけだ。もし商標登録がされてしまったとしても、ドワンゴは取得した商標権について一切の権利行使しないことを表明していた。どちらに転んだとしても、「ゆっくり○○」を利用しているユーザーにとっては喜ばしい結果になるというわけだ。

そういった経緯でドワンゴから出願されていた商標登録だったが、このたび特許庁により拒絶されたことが明かされた。半年以上の歳月が経過して、ようやく続報が届いた形となった。

*画像はニコニコ公式Twitterアカウントより


ドワンゴによれば、2月13日付けで、特許庁より拒絶理由通知書を受領したという。拒絶理由通知書では、「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」という文字列が、「ゆっくりしていってね!!」や「ゆっくり」と呼ばれるイラストや、日本語音声合成ソフトから生成された音声が用いられている、さまざまな物事を解説する動画を表すものとして広く使用されていること。また、動画が多くのユーザーによって作成・配信されていることなどを理由に、これらの文字は商標として登録すべきではないという判断が示されているとのことだ。

ドワンゴは今回の結果について、そもそも「ゆっくり○○」は動画のジャンルやカテゴリー、動画の内容を示す表示として広く一般的に使用されていることを指摘。特定の企業や、個人が独占すべき文字列ではないと考えていることを強調している。拒絶理由通知書で示されている内容は、ドワンゴの見解とおおむね一致しているとして、今回の結果を歓迎している。また、インターネットミームのようなネット文化に対して、丁寧な審査がおこなわれ、拒絶理由についても丁寧に説明されていることについて敬意と感謝を表明している。今後の具体的な対応方針は検討中であるものの、ひとまず喜ばしい進捗であることをユーザーへと知らせた。

本件に関するこれまでの経緯や、今回の詳細についてはこちらから確認することができる。

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