国税庁動画チャンネルが突如“確定申告アドベンチャーゲーム実況動画”を公開。スマホ申告アピールのため、急にゆるくなる国税

 

国税庁動画チャンネルは1月31日、『Kakushin Simulator β版』なるゲームの実況動画を公開した。実況者はかんしんgames氏で、6分19秒の短い動画である。

『Kakushin Simulator β版』はポイント・アンド・クリック形式のアドベンチャーゲームとされる。主人公の関信太郎は某県在住の平凡な会社員。昨年度、病気や怪我が重なったことで病院にお世話になった太郎には、多くの金銭的な負担があった。そのことがプロローグで語られると一転して場面はオフィスに変わり、太郎は病院の領収書や源泉徴収票など、確定申告に使う書類を集めることになる。実況者のかんしんgames氏はゲーム内での唐突な語りや急な場面転換、少し無理のあるアイテム収集などに淡々と(ときには半笑いで)ツッコミを入れながらゲームを進めていく。

エンディングで太郎は、スマートフォンもしくは紙媒体にて確定申告をおこなうことになる。スマートフォンを用いて確定申告をするルートでは、簡単に申告ができることが語られる。医療費控除額や申告額も自動で計算してくれるため、太郎はそれほど苦労せずに還付が受けられるようだ。


一方、紙媒体にて確定申告をするルートでは、太郎は自分で計算をして確定申告をしなければならない。書類提出のために税務署に行く必要もある。還付こそ受けられるものの、「はぁ」という言葉からは太郎の腰の重さが感じられる。

実況動画を見ると、『Kakushin Simulator β版』エンディング到達までは2~4分ほど。超短編ゲームということもあって価格は10円だそうだが、筆者が調べた限りではどのストアでも『Kakushin Simulator β版』は販売されていない。

それもそのはず、かんしんgamesが投稿した『Kakushin Simulator β版』なるゲームの実況動画は、すべて架空のものなのだ。動画は確定申告がスマートフォンから出来ることを周知するための施策としての広報動画で、実況者の「かんしんgames」という名前も国税庁の地方支分部局である「関東信越国税局」から取られたものと見られる。低予算で制作されたゲームとそれに困惑する実況者という筋書きも、すべて広報のために作られたというシュールな動画である。

国税庁のTwitterアカウントでは今回の動画投稿に際して上記のようなツイートがされており、ゲーム実況風動画のほかにも、ジンジャーポークやタッカルビを食べながら唐突にスマホで確定申告の話が始まる怪しげな動画が投稿されている。「ジンジャーポークを作って、チーズタッカルビをたくさん食べて、ゲームを実況しました」というおよそ官公庁の公式Twitterの発言とは思えないゆるさだが、お堅い広告を目にするよりも確定申告がスマートフォンでできることが記憶に残るのは確かだろう。

令和4年分の確定申告期間は2月16日から3月15日までだ。対象者は必要な書類を集め、スマートフォンから申告できるよう準備をしておこう。筆者もそろそろ重い腰を挙げて準備をするつもりだ。今年はスマートフォンから、便利に申告できることを知ったのだから。



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