Steamデジタルボドゲ『Moonbreaker』、ビジネスモデルが急激転換。マッハで課金要素を根こそぎ撤廃

 

Unknown Worlds Entertainmentは10月28日、Steamで早期アクセス配信中のターン制ストラテジーゲーム『Moonbreaker』に向けて新アップデート「Zax’s Story Update」を配信開始した。同アップデートでは新マップなどのコンテンツが追加。さらには、コミュニティのフィードバックを受けて本作の「ビジネスモデル」が大幅調整された。少額課金システムが根こそぎ撤廃される、急進的で珍しい方針転換が実施されている。

『Moonbreaker』は、ミニチュア・ボードゲーム風のターン制ストラテジーゲームだ。開発を担当するUnknown Worlds Entertainmentは、『Subnautica』などを手がけたスタジオ。SF作家Brandon Sanderson氏が手がけた世界観をベースに、デジタルミニチュア体験ができる作品として配信されている。ゲームプレイとしては、ユニットを率いて戦略性あるターン制の戦闘を繰り広げていく。カスタマイズした個性豊かなミニチュアを利用して、AIと、あるいはプレイヤー同士での戦いを楽しめるわけだ。

本作は9月30日からSteamにて早期アクセス配信開始。配信開始当初は同時接続者としては900人前後で推移し、Steamユーザーレビューは400件以上が寄せられ、本稿執筆時点で79%のユーザーが好評とする「やや好評」ステータスとなっている。一定の評価は受けつつも、問題点の指摘も寄せられる状況だ。なかでも比較的目立つのが、本作における少額課金要素を問題視するユーザーらの声だった。


というのも、『Moonbreaker』は、3180円(米国向けには29.99米ドル)にて有料配信されている作品。その一方で、本作には少額課金要素も盛り込まれていた。具体的には、有償購入となるゲーム内通貨Pulsarsが存在していた。このPulsarsは、新しいユニットが封入されたパックであるBoosters購入や、一人プレイモードであるCargo Runをプレイするのに必要なチケット的存在であるContractsを購入するのに利用可能だった。こちらは購入せずとも、1日1回無料での入手も可能となっていた。

なお、Pulsarsを有償購入せずともよい仕組みも用意されていた。PvPモードなどで手に入ったBlanksと呼ばれる通貨だ。こちらは、課金などせずPvPモードなどを通じて入手可能ながら、Pulsarsと同様にBoostersおよびContractsの購入にあてられる仕組みとなっていた。しかし、そうした無課金の手段が用意されているとはいえ、有償ゲーム内通貨でユニットを購入可能な仕組みや、Cargo Runのプレイ回数制限は一部ユーザーにとって不満の種となっていたわけだ。Steamユーザーレビュー投稿のなかでは、「有料タイトルなのに、基本プレイ無料作品のようである」として、本作のビジネスモデルに異議を唱える者も散見される状況だった。


そうした声を受けた開発元の行動は素早かった。まず、10月6日にはCargo Run Updateと称して、Contractsがゲームから完全撤廃された。Contractsの購入に使われたPulsarsあるいはBlanksはプレイヤーに返還。プレイヤーたちは無制限にCargo Runを遊べるようになったわけだ。そして、開発元の決断の連続はそこに留まらなかった。

次の一手である今回のZax’s Story Updateにて開発元は、有償ゲーム内通貨そのものを撤廃してしまったのだ。上述のPulsarsはゲームから消え去り、ゲーム内ストアは終了。Pulsarsやそれで購入したアイテムは、Steamウォレットに向けて返金となる。また、Blanksも同様に撤廃され、以前存在していたMeritsとよばれる別のゲーム内通貨がSparksへと名称変更。こちらにさまざまなゲーム内通貨の機能が統合されることになった。

さらに、ユニット封入パックを購入する上述のBoostersも撤廃。プレイヤーたちは、即時全ユニットを利用可能となった。少額課金要素の緩和どころか、もう跡形もなくなってしまったわけである。サービス型ゲームのビジネスモデルの変更としては、稀に見る急激な舵切りだ。開発元はPulsarsの購入および使用の停止について「during Early Access(早期アクセス配信期間中)」と前置き説明しており、将来的に同システムが再登場する可能性は残している。それにしても、現状ではユーザーたちの意見を第一にすべきという判断だろう。


また、Redditの本作コミュニティ上では、「課金をせずとも快適に全ユニットの解除が可能」とする複数の意見も見られる。Cargo Runの制限は別としても、本作は現状、ブースター購入などによる少額課金での売上を、ビジネスの軸としていなかったとも考えられる。そして本作が早期アクセス配信開始から約1か月という若さだからこそ、素早く急激な方針転換が可能だったことだろう。本作開発元は、今後もフィードバックを受けて『Moonbreaker』の開発に反映させていく方針を示している。これほどの冒険を実行した開発元が、今後本作をどのように作り上げ運営していくのか、プレイヤーたちにとっては目が離せないだろう。

『Moonbreaker』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。価格は3180円。なお、本作向けには追加バンドルのFounder’s Packが2680円で配信中。こちらはかつてPulsarsとBlanksが付随していたが、今回の変更によりスキンやペイントなど、コスメティックアイテムのみの内容となっている。