Steamにて「パブリッシャー10社に断られた」を宣伝文句にするゲーム現る。手段を選ばないヤケクソプロモーション

 

個人開発者のGrant Tabler氏は10月18日、『Rubble』のSteamストアページをオープンした。個人制作の小規模ゲームのようだが、ストアページを見る限りかなりヤケクソなプロモーションをしているようだ。

『Rubble』は、一人称視点のシューティングゲームだ。アトラクション番組である「Most Extreme Elimination Challenge」や「風雲!たけし城」に『Portal』をかけあわせたようなゲームとのこと。ゲーム設定としては、ディストピア世界のテレビ番組が舞台になっているといい、不思議な銃を用いてコースをクリアしていくという。破壊表現がふんだんに盛り込まれており、壁を壊してトンネルを通すなど、地形を破壊しながら先へ進んでいくのだ。氷上を滑ったり足場を乗り継いだり、足場を渡るなど多彩なギミックが待ち受けているという。


ゲームとしては50ものステージが用意されているほか、それぞれのステージでタイムが測られており、タイムアタックを楽しめるという。そのほか時間経過を遅くしたり、重量の度合いを調整したり、ジャンプ数を増やすといったアシスト要素も存在。スピードランもしやすいように設計しているそうだ。と、こうした説明を見ると個人制作の普通のゲームに見える。しかしよく見るとこのストアページ、かなりヤケクソなのだ。

まずゲーム概要欄には「このゲームは個人開発で数年取り組んでいます。開発は小規模で、お金もありません。どれだけストレスがあるか想像できるでしょう」と付されている。またタイムアタックの項目には「速さ勝負する時はリーダーボードではなくRedditに書いて競って」と注記。ゲームプレイトレイラーでも「チェックポイントがしょっちゅうある」「アンリアルな物理挙動」など売りになるかも怪しいコピーが並んでいる。


さらにおかしいのは、最新トレイラーである。Steamストアページの一番左にある映像では、ゲームが紹介されると思いきや、数々の会社のコメントが表示される。具体的には「著名パブリッシャーと、そのパブリッシャーに断られた際のコメント」が紹介されているのだ。最初に映るのはDevolver Digital。最近では『Cult of the Lamb』をヒットさせるなど、言わずとしれた巨大インディーパブリッシャーだ。どうやらTabler氏はDevolverにパブリッシングをオファーし「今回は自分たちに合わない(Not a fit for us at this time)」として断られたそうだ。

パブリッシャー断られ特集はまだまだ続く。『Starbound』の開発販売や『Eastward』販売などドット絵ゲームの販売に定評のあるChucklefish Gamesにも声をかけていたようで、同社からも「今のところ自分たちには合わない(It’s not a good fit for us right now)」と断られている。さらには『Hello Neighbor』や『Streets of Rogue』などを贈りだしてきたtinyBuild GAMESからは「今の自分たちや今後の会社のパブリッシング計画にも合わない(We don’t think it’s the right fit for us and our publishing plans for the near future)」と断られている。


『ITTA』や『Jet Lancer』をプロデュースしたArmor Games Studiosにも「自分たちがこのゲームにとってのベストなパブリッシャーだと思えない(We don’t feel like we’re the best fit for this title as a publisher)」と断られ、さらには11bit studiosからは「自分たちが探しているのは『This War of Mine』や『Frostpunk』のようなプロジェクトなので、合わなそう(It is not a fit for 11bit as we are looking for projects similar to This War of Mine or Frostpunk)」と断られたそうだ。さらには、5社からは“返答なし”として断られたとコメント。

このトレイラーだけでも断られたパブリッシャーの数は10にわたる。そうした結果をもって誰にも(パブリッシュ作品として)求められないゲームであるとPRしているわけだ。パブリッシャーへの持ち込みを断られた際の文言を勝手に晒し、それを宣伝に使っているので、何から何までめちゃくちゃである。


ちなみにどの会社も「fit」という表現を使っている点は注目したい。内容の良い悪いではなく「自分たちに合わない」という表現を使いやんわり断っている。あくまで相手をリスペクトして、見送りするスタンスが見て取れる。自分たちよりも良い会社があるよと言わんばかりである。角の立たない断り表現としてはなかなか穏当であるだろう。

一方で、Tabler氏は「fit」の“意味”は理解しているようで、それゆえに「どのパブリッシャーにも求められていない」と打ち出しているのだろう。ここまでヤケクソな宣伝をするのは、前述したようにTabler氏が個人開発者でお金がないことに起因しているのかもしれない。リリース時期についても「マーケティングを諦めたときにリリースする」としている。今はなんとかあの手この手を使って作品認知度を上げている段階なのかもしれない。

『Rubble』はPC(Steam)向けに発売予定。Tabler氏がマーケティングに諦めたときにゲームはリリースされる。