『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のリンク、「弓の引き方が変」と突っ込まれる。ただしめちゃくちゃ変ではない

 

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』における、主人公リンクの“弓の引き方”が、にわかに注目を集めている。というのも、その引き方がかなり変則的なようなのだ。専門家による指摘の動画は、TikTok上で多数の反響を集めた。海外メディアPolygonが伝えている。


弓は、ゲームにもしばしば登場する武器だ。その歴史は古く、昔から人類の狩猟や戦争の歴史と共に歩んできた。現在でも国外では狩猟に用いられるほか、アーチェリーや弓道などのスポーツ・武道としても多くの人々に親しまれている。また、世界各地で弓の製法・材質や扱い方の文化にも違いが見られる。一方、ゲームでは魔法の矢や爆弾矢など特殊な性質が付与される場合が多い。また、ゲームシステムとの兼ね合いで現実離れした使い方をされるケースもあり、かねてから「ゲームにおける弓」には、アーチェリー専門家などからツッコミが入ることもあるのだ。

そして今回、「リンクの弓の引き方がおかしい」と指摘する動画が、多くのユーザーの反響を集めている。動画を投稿したのは、アメリカのオレゴン州で乗馬アーチェリー教室「Ridgeline Mounted Archers」を営むCarolyn Norland氏だ。同氏は1月25日投稿のTikTok動画にて、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』におけるリンクの弓の引き方を再現して「この引き方は最悪です」と断言。狙いをつけたのと逆の方向に矢が飛んでしまうとの見解を示している。同動画は記事執筆時点で5万件以上のいいねを集めているほか、多数ユーザーのコメントが寄せられている。

@careyelmring

Reply to @im.the.trash_man #greenscreen Ask me how he draws in other games #archery #archer

♬ original sound – Carey


実は、上述の動画に先んじる1月10日には、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』ディレクターの桜井政博氏がリンクの弓の引き方を取り上げていた。同氏は自身のTwitterアカウント上に、同作のファイターである「リンク」と「こどもリンク」の弓の引き方の比較画像を投稿したのだ。同じリンクでも、引き方が違う。そのような細部にもこだわっているという意図が垣間見える。

画像では確かに、リンクが手のひらを外側に向けた、やや見慣れぬ引き方をしているのが確認できる。よく見る弓の引き方とは、手の上下が逆になっているともいえるだろう。この特殊な引き方は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』作中でも同様だ。Norland氏の指摘が、桜井氏のツイートに端を発するかは定かではない。しかし、この「リンク式」がかなり特殊な引き方なのは間違いないようだ。


Norland氏は後続のTikTok動画で、矢をセットする向きによってはリンク式も利用できるものの、「体に負荷がかかるからやっちゃダメ!」と呼びかけている。筆者がアーチェリー関連の資料をあたった限りでは、リンク式を利用している選手はほとんど確認できなかった。そして、アーチェリー関連のQ&Aリソースなどでも「やらない方がよい」との意見が主だった。つまり、リンク式は極めて特殊な引き方であると考えられるのだ。

ただし、リンクと同様の引き方を実践している選手も実在する。アイスランドを拠点とする選手、Gummi Gudjonsson氏だ。同氏は、世界アーチェリー連盟に加盟する「World Archery Iceland」の会長でもある。世界アーチェリー連盟公式YouTubeチャンネルでは、同氏が実際に“リンク式”で弓を射る様子が投稿されている。この引き方に至った理由についてGudjonsson氏は、「弦を引くゆとりを取るため」であると語っている。また、左利き用の弓を利用するなどの工夫をしているようだ。同氏は自身のスタイルが特殊であることを認めつつ、「自分に合ったやり方を見つけてほしい」と呼びかけている。また、YouTube上では、別の人が同様のスタイルで弓を射ている様子も見られる


Norland氏の動画には「リンクに道理は通用しない」といった旨のコメントのほか、「カッコよければ気にしなくていい」との意見も寄せられている。そもそも、ゲーム内に現実のセオリーを持ち込むのが野暮との見方もできるだろう。またリンクには奔放で天才肌な側面もあるため、我が道を行く独自の射法を使っていても違和感がないのは確かだ。単に体の動くままに弓を引いたら逆手がしっくり来たのかもしれない。

また、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』におけるリンクの弓の持ち方であれば、順手で弓を引き絞ろうとするといったん手首を反す必要が出てくる。同作には空中で急いで射撃するシーンなども多いため、「モーションの変化や違和感を減らしてスムーズに射撃に入れるように」など、ゲームシステム上の工夫もあるかもしれない。

「やらない方がよい」とのNorland氏の見解も一理あるものの、逆手で引くのが自分に合っていると感じる人も実在するようだ。また、ゲームにおいては、カッコよさやシステム上の利点が何より優先されるのはやむを得ない。ただ、実際に弓を射る機会があった際には、インストラクターのいうことをよく聞いた方がよいだろう。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は現在続編が開発中。次回作のリンクはどのように弓を射るのだろうか。