「ゲーム実況でストーリーのオチを見た後、そのゲームをプレイしたくなるか」。ある研究者のTwitterアンケートが反響、その結果は

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ゲーム研究者・下田紀之氏が募ったあるアンケートが反響を呼んでいるようだ。その内容はずばり、「物語が重要な作品において、ゲーム実況でそのストーリーをまるごと見た後、そのゲームをプレイしたくなるか?」というアンケートだ。
【UPDATE 2022/5/26 13:40】
タイトルに、アンケートの形態がTwitterを利用したものであることを追記。あわせて本文を調整。


ゲーム実況は、今や定番人気コンテンツのひとつであるほか、公式的な“市民権”をも得てきている。規約さえ守れば、大手メーカー作品でも収益化も可能なゲームは多い。ゲーム実況コンテンツそのものにバリューが生まれ人気が出たことで、ゲーム実況をされることが販促につながりつつあるというのが、こうした認可の背景にあるだろう。つまり、人気実況者がゲームを遊ぶことで、そのゲーム自体の露出が増え、販促になるという考えだ。

しかし、物語主体の作品はやや扱いが別。アドベンチャーゲームなどは、ゲーム実況・配信が禁止のものが多いのだ。たとえば怒涛の物語が魅力の『ダンガンロンパ』シリーズ本編は一貫して実況・配信は1章までに制限されており、昨年発売された『月姫 -A piece of blue glass moon-』も原則実況・配信禁止。先日発売されたスクウェア・エニックスの『春ゆきてレトロチカ』も、原則実況・配信禁止である。メーカーや作品によって方針は違うものの、ストーリーのギミックがウリとなっているゲームでは、実況・配信禁止されることが多い。ストーリーを知ることこそがプレイの主体となっており、リプレイ性も低いことから、他タイトルと比べて物語を知ることによる、実況・配信による買い控えが起きやすいと考えられているわけだ。


長らくの間、物語主体のゲームのゲーム実況・配信可否について議論されるなか、下田氏が5月25日に興味深いアンケートを展開した。下田氏はかつてセガに在籍していた。『ボーダーブレイク』や『アフターバーナー クライマックス』『ゴースト・スカッド』などにプロデューサーとして携わっており、下田Pとして親しまれていた人物だ。現在は岡山理科大学の情報理工学部・情報理工学科にて、デジタルゲーム・メディアコースの専任教員としている。同コースでは、ゲームプランニングやプログラミングなどを学べる(コースリンク)。ゲーム制作への深い造詣やアカデミックな観点ゆえに、下田氏はゲーム研究者と名乗っているのだろう。

ちなみに、岡山理科大学の情報理工学部・情報理工学科のデジタルゲーム・メディアコースでは、下田氏のほかセガで『龍が如く』シリーズなどさまざまなゲームのプログラムに携わった大山和紀氏もまた、教鞭をとっている。


下田氏のアンケート内容と、質問案は以下のとおり。

質問:
ゲームのストーリーがオチまで通してよくわかる実況配信を観た後に、そのゲームをプレイしたくなりますか?RPGやアドベンチャーなどストーリーを楽しむことが中心となるゲームの実況配信で、あなたはそのゲームを未プレイとします。

回答:
・観るだけではなく、プレイもしたくなる
・観るので満足、プレイはしたくならない
・結果だけ見たい

同アンケートは、1万5755件の意見が寄せられる反響を呼んだ。Twitter上で展開されている以上フォーマルなアンケートではないものの、多重投票がしづらいことを踏まえると、かなりの反響である。では結果はどうなったか。「見るので満足、プレイはしたくならない」が40.6%でトップ。次いで「観るだけではなく、プレイもしたくなる」は39.9%。接戦の末、“ストーリー志向のゲームの実況を見ると、該当作をプレイしたくならない”との意見が多くなった。


弊誌AUTOMATONのTwitterアカウントもこのアンケートをRTしているので、回答者層が多少偏った可能性もある。下田氏のフォロワーやAUTOMATONの読者は、積極的に自分でゲームをしたがるユーザーが多いと筆者は考えている(信じている)。そんな条件下でも、“ストーリー志向のゲームの実況を見ると満足し、ゲームをプレイしたくならない”との意見が上回ったということが興味深い。

下田氏に今回のアンケートについて、感想を聞いてみた。まず結果については、「思いのほかに反響が大きく、プレイヤーの皆さんにとって身近で重要な問題であることを認識しました」とコメント。「Twitterでのアンケートは厳密な調査にはなりませんが、いただいた多くのコメントから、ゲームによってプラスの効果もマイナスの効果もあることは確実です」と語った。「完成度の高いゲームがプラスの効果を得やすいのは当然として、プレイヤーの選択が重要なゲームはプラスの効果を得やすいようです。見るだけではなく、実際に選択を体験したくなるということでしょうか」と推察している。

また今回の結果についての分析についても尋ねてみた。すると「得られた結果から考えると、重要な選択肢があって自らの意志でストーリーを進めていけると感じられるようなゲームが実況配信でプラスの効果を得やすいでしょう」とコメント。「たとえ実況配信で結果を知っていたとしても、自ら選んだことに価値があるようなゲームです。例えば『ドラクエ5』の結婚相手選択は結果を知っていたとしても自分で選ぶ体験に価値がありますよね。今後のストーリー主体型ゲームではこのようなタイプが増えていくのではないでしょうか」と語っている。さらに「秘密が重要となる推理ゲームのようなタイプにはどのような影響が出てくるのか気になるところですが、これも犯人側を主人公にして捕まらないように様々な挑戦をするといった工夫ができるかもしれません」として、回答を締めた。


今回のアンケートは、前述したように簡易的な調査に近い。あくまで参考にするかどうかといった程度の精度だろう。しかしながら、ユーザーからさまざまな意見が寄せられている。アドベンチャーでも複数ルートがあるゲームであればプレイするという声や、作品を好きになったならば遊ぶという声。あるいは既プレイのゲームしか実況を見ないという意見も。実況を見ることで買わなくなる層は、そもそも購入層ではないと考える意見もある。一方で、ゲーム実況を見るだけでゲームを買わない人が多いとしても、そもそもゲーム実況がなければ、そうした層に作品の周知が届かなかったという可能性はある。購入につながるかさておき、ゲーム実況がゲームそのものの露出の幅を広げていることは確かである。

人の数ほど意見はある。だからこそ、ストーリー主体型のゲームの実況・配信対応について、会社・作品ごとにバラつきがあるのだろう。そこに正解はないのだ。ゲーム実況を巻き込んだ体験共有型が人気を博すなか、ストーリー主体型のゲームはクラシックな形態のひとつになりつつある。そんな中でも、物語によってプレイヤーに感動や新たな体験を届けてくれるゲームが、今後も生まれていくのを願う人はまだまだ多いことだろう。我々プレイヤーが、そうしたゲームの存続に貢献できる有力手段は、ゲームを“買う”ことである。ゲームを買おう。

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