『ドキドキ文芸部!(DDLC)』開発者は『ヨッシーストーリー』世界記録持ち。『スマブラ』もプロ級な驚くべきゲーマー遍歴

 

インディーデベロッパーのTeam Salvatoは、人気ADV『ドキドキ文芸部!(Doki Doki Literature Club!、以下DDLC)』の開発元だ。同スタジオ設立者のDan Salvato氏は、『DDLC』コミュニティにおいて任天堂ファンとしても知られている。しかし、Salvato氏の任天堂ゲームへの熱意は並大抵のものではないようだ。この記事では同氏の、ゲーム開発者とは少々ちがった側面を紹介したい。


Salvato氏率いるTeam Salvatoが2017年に無料配信した『DDLC』は、ちょっとした仕掛けの施された恋愛アドベンチャーゲームだ。ゲームのSteamストアページには「精神的恐怖」のタグがつけられ、中身が一癖あることを物語っている。過去にも『君と彼女と彼女の恋。』など、本作と趣を同じくする仕掛けを施した恋愛ADVは存在したものの、ジャンル全体としては非常に稀な存在だ。その衝撃的なゲームプレイとゲームとしての質の高さから、『DDLC』はファンコミュニティから高い評価を受けた。


リード開発者であるSalvato氏個人もファンコミュニティに親しまれており、Redditにおいては「Ask me anything(何でも聞いてね)」スレッドを立ててファンとの親交を深めるなどの活動をしている(2017年当時のreddit AMA)。また、Twitterにおいては任天堂関連のニュースをしばしばリツイートしている様子が見られ、かなりの任天堂ゲーム好きである様子がうかがえる。同氏の任天堂ゲームへの熱意は、想像を遥かに超えるものだ。というのも、Salvato氏がゲームコミュニティにその名を馳せたのは、『DDLC』のヒットが初めてではないのである。

実を言うと、Salvato氏は『DDLC』の開発に携わったほかにも、ゲームコミュニティにいくつかの特別な足跡を残している。『大乱闘スマッシュブラザーズ』プレイヤーとしての側面と、ゲームのスピードランナーとしての世界記録だ。まず、Salvato氏は記事執筆現在、NINTENDO64向けゲーム『ヨッシーストーリー』のスピードラン世界記録をふたつ保持している。いずれもAny%(なんでもあり)カテゴリーで達成された記録で、欧米版『ヨッシーストーリー』においては堂々の1位、日本国内版においては、国内スピードラン走者のみりい氏と並んで同率1位となっている。


なお、Salvato氏は欧米版『ヨッシーストーリー』のAll Melonsカテゴリーにおいても、世界2位の記録を保持している(1位は前述のみりい氏)。同カテゴリーは、バナナやスイカなど多種存在するフルーツのうち、メロンのみ食べてクリアするというものだ。同作では30個のフルーツを食べるとステージクリアとなるが、メロンは各ステージ上に30個ちょうどしか存在しない。残機の問題など他の要素も絡み合い、難易度の高い縛りプレイとなっている。そして、Salvato氏が世界2位の記録を樹立したのは2014年のこと。その後には、極めて専門的な同カテゴリー挑戦のガイド動画も公開している。つまり、Salvato氏は『DDLC』を手がける遥か以前から、筋金入りの『ヨッシーストーリー』走者だったということだ。

Salvato氏の意外な顔はそれだけではない。同氏が『DDLC』の前に携わっていたのが、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』用Modである「20XX Tournament Edition」だ。こちらは同作に多数の調整や要素の追加をおこない、より大会向けのゲーム体験を目指したものだ。本体の改造などの必要なく、メモリーカードだけでModの適応が可能という機能性を持っている。ただ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズへのMod適用については、任天堂側の裁量に存続を委ねられているグレーな二次創作である。しかしながら、そうした技術面での同氏の能力の高さが、ゲーム開発にも一役買っていると考えられるだろう。

技術面だけに留まらず、Salvato氏は『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の選手としても名を馳せている。同シリーズの海外コミュニティWikiであるSmashWikiでは、プロプレイヤー(現在は引退)として記載されているほどの腕前だ。使用キャラクターはリンク一筋のようで、記録によれば2012年頃より同作の大会にたびたび出場。大規模eスポーツ大会「Apex 2016」では、同作シングルストーナメントにて、159人の参加者中13位(同率は4名)という結果を残している。

Salvato氏がTwitterに投稿したジョークツイートでは、『DDLC』登場キャラのモニカのMoniと「Money」をかけて「誰か賭け試合する?(Anyone tryna money match?)」というダジャレに、ゲームキューブ用コントローラーを持つモニカの画像が添えられている。勝負用のタイトルはおそらくニンテンドー ゲームキューブ版『大乱闘スマッシュブラザーズDX』なのだろう。

以上のことから浮き彫りになるのは、『DDLC』開発者として名を馳せる以前から、Salvato氏が特別な技能を持つゲーマーであったということだ。ゲーム開発者にゲーム好きが多いことは想像に難くないが、Salvato氏のような実績を持つ例はやや珍しいのではないだろうか。

『DDLC』本編に長編サイドストーリーや新規CGを収録した拡張版、『ドキドキ文芸部プラス!(Doki Doki Literature Club Plus!)』は海外向けに発売中(PC版は日本語訳あり)。国内版は10月7日、PlayStation 4/PlayStation 5/Nintendo Switch向けに発売予定だ。

同作の国内含むアジア地域での販売は、弊社アクティブゲーミングメディアのインディーゲームブランドPLAYISMが担当している。なお、国内版発売に合わせてPC(Steam)版の日本語訳は、PLAYISMが監修したものに差し替えられるとのことだ。詳細は弊誌関連記事を参照されたい。

なお、元となる『DDLC』はPC(itch.io/Steam)向けに無料配信中だ。才気あふれるSalvato氏に興味を持った未プレイの読者は、ぜひ一度同作を体験してみてほしい。