Steamにて早期アクセス配信中のサバイバルゲーム、放棄されそのまま起動不可能に。『Population Zero』は“人口ゼロ”となった

 

あるゲームが早期アクセス配信中に放棄され、そのままプレイ不可になったとして問題になっている。近年、SteamやEpic GamesストアなどをはじめとするPC向けゲーム販売プラットフォームにおいては、開発途中にあるゲームがリリースされることは珍しくない。このような販売形態は一般的に早期アクセス(アーリーアクセス)と呼ばれ、購入したユーザーは完成前の作品を先行してプレイ可能。一方、開発元は、開発を継続しつつ、作品の完成に向けてユーザーからのフィードバックや開発資金を調達できる。なかでも十分な開発資金を事前に確保しづらい小規模スタジオのゲームにおいては、早期アクセスを通じて販売されるケースは多い。

このように、早期アクセスはゲーマーと開発者、双方にとってメリットのある販売モデルとして確立されており、この販売方法を経て、華々しく正式リリースを迎えたゲームも数多い。

しかし、その一方で、早期アクセス期間中に開発元からの報告が途絶え、実質的に開発が放棄されているゲームも存在する。サバイバルMMO『Population Zero』も、そのうちのひとつ。早期アクセスタイトルでありながら、長らく開発進捗の報告がない状態にある同作。そんな同作について、先日よりゲームプレイが不可となったことがプレイヤーから報告されている。
 

 
『Population Zero』は、ロシアのゲームスタジオEnplex Gamesが手がける、オープンワールド・サバイバルMMORPG。本作は、2020年の5月にSteam向けに早期アクセスタイトルとしてリリースされた。プレイヤーは多様なバイオームからなる広大なフィールドを探索し、惑星を開拓していく。世界が7日間(168時間)でリセットされるシステムを特徴としており、サバイバルゲームとしての定番要素は押さえられつつ、SFを題材にした独自の世界観や、オンラインプレイヤーとの交流を通じたサバイバル体験を楽しめる作品となっていた。

そんな『Population Zero』であるが、先日よりプレイが不可となっているようだ。この報告は4月13日、同作のSteam内の掲示板にてプレイヤーから寄せられた。「The game doesn’t work(ゲームが動かない)」と題されたそのスレッドには、「このゲームを動かせないのは自分だけ?」と、困惑の書き込みが。それに対し、ほかのユーザーからいくつかの返信コメントが寄せられており、その中では、『Population Zero』のサーバーが停止していること、そしてそれだけでなく、WebサイトやDiscordも閉鎖されているとの情報も提供されている。
 

 
はたしてこれらの情報は事実なのだろうか。筆者が実際に『Population Zero』を起動してみたところ、確かに一切ゲームをプレイできなかった。そもそもゲーム画面が立ち上がることもなく、テクニカルサポートへの連絡を促すポップアップがエラーメッセージとともに表示されるのみ。さらに、その連絡先として公式サイトへのリンクが貼られているが、クリックしてもアクセスできない。掲示板にコメントを寄せたユーザーの報告どおり、現在『Population Zero』は完全にプレイ不可となっており、その公式サイトも削除されている。
 

 
こうした状況の中、現在『Population Zero』のSteamレビュー欄には、同作の購入を控えるようにと、注意喚起のメッセージが複数投稿されている。特にゲームが起動しないことについては過去1か月以内のレビューで集中的に言及されていることから、ゲームプレイが不可となった時期もここ最近だと考えられる。つまり、『Population Zero』のサービスは、開発元から一切のアナウンスなく突然終了したわけだ。それどころか、公式サイトも閉鎖され、開発スタジオのホームページさえ消失している。開発元に一体なにがあったのか。

ここからは推測の域を出ないが、おそらく突然の『Population Zero』サービス終了の裏側には、プレイヤー数の低迷と、売れ行きの不調による資金難が関わっているだろう。同作は早期アクセスリリースを果たした昨年5月当初、Steamレビューでは「賛否両論」と大きく評価を分けることに。当時のレビューでは、作品テーマの独自性やポテンシャルの高さを評価する声もあった一方、MMO作品としての機能不足や各面でのクオリティの低さなどを指摘する声も多く、決して順調な滑り出しとは言えないスタートを切ることになった。
 

 
さらにプレイヤー数については、リリースされた5月当初はピーク時2000人(同時接続プレイヤー数)を超えていたものの、次月には約40人と急激に低下。データベースサイトSteamDBを参照すると、ピーク時からわずか1か月で同数値が98%も下がり、多くのプレイヤーが離れていったことがわかる。それから今月に至るまでプレイヤー数は低下の一途をたどり、直近1か月のプレイヤーのピーク数はわずか2となっている。本稿執筆時点では0だ。

これらのデータを見る限り、開発元が『Population Zero』の開発・運営において苦難に直面していたことは想像に難くない。事実、開発者のひとりであるDmitry Muratov氏は、早期アクセスリリースをはたした約1か月後に、海外メディアGamesIndustry.bizにて、リリース時に犯した失敗について綴っている。その中では、一部コンテンツの販売にユーザーの不信を招くような方法を採ったことや、MMO作品として基本的な機能が不足していたことなどが反省点として語られている。また、売り上げに伸び悩んでいるとも打ち明けており、開発者としても『Population Zero』がたたき出した結果には満足していなかったようだ。
 

 
以上のことを踏まえると、今回の『Population Zero』の事実上のサービス終了は、ある意味で必然だったと言えるかもしれない。特にMMO作品となると、プレイヤー数の減少はかなり痛手。規模にもよるが、ある程度の人口を維持できないのであれば、サービスを運営し続けることは難しい。実際、『Population Zero』のアップデートについては、昨年7月以降一度も実施されておらず。また、開発元からのニュースについても、同月にアナウンスされたTwitchでのイベント予告以来、現在に至るまで途絶えている状態だ。

一方、リリース後しばらくはバグ修正パッチを配布し、7月には大型アップデートを実施するなど、正式リリースに向けて活発に開発・改善を続けていた時期も見られる。また、いくつかのレビューには開発者が直々にコメントを残していることもあり、まったく開発を続ける意欲がなかったわけではないのだろう。しかし、結果的に『Population Zero』は、事実上、開発が放棄された状態になってしまった。そして遂には、ゲームを起動することすらできなくなってしまったわけだ。
 

 
だが、真の問題点は、開発元Enplex Gamesの対応のずさんさにあるだろう。何らかの理由によってサービスの維持が難しくなり、そのまま幕を閉じるゲームはそれほど珍しくない。その際は、公式からアナウンスがある場合がほとんど。しかし今回のケースは、公式から一切の説明や告知もなく、ひっそりとゲームを終了させている。それだけでなく、WebサイトやDiscordのコミュニティまでいつの間にか消えている始末。売り逃げといっても過言ではない状況だ。『Population Zero』を購入したユーザーからすると、かなり悪質な対応だといわざるを得ない。

開発元には一刻も早い説明が望まれるところであるが、本稿執筆時点で公式からの声明はない状態だ。Steamページはもちろん、公式Twitterを覗いても昨年7月26日以降更新が止まっており、何の動きも見られない。絶対にないとはいい切れないが、開発元の沈黙具合を踏まえると、今後サービス終了についての声明が出される可能性は低そうだ。公式サイトにもアクセスできないことから、そもそも会社が存続しているかどうかもわからない。すでにSteam上では、同プラットフォームからプレイ不可能な『Population Zero』を削除するべきとの声も出ており、Steamの動き次第では同作がストアからなくなる可能性も十分あるだろう。

『Population Zero』は、Steamにて3090円で配信中。購入してもプレイできないため、買わないように。