『スマブラSP』のホムラ/ヒカリのお着替え参戦に見る、スマブラのライン。何がOKで何がNGなのか

 

任天堂は2月18日、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』(以下、スマブラSP)の84体目にあたるファイターとしてホムラ/ヒカリを発表した。待望の『ゼノブレイド2』からの参戦となる。任天堂の人気タイトルから選ばれる順当な参戦となったが、その裏には“彼女たちの着替え”があったようだ。


『ゼノブレイド2』のホムラは、天の聖杯と呼ばれる伝説のブレイド。主人公のレックスと運命的な出会いをはたしたホムラは、少年と共に楽園を目指す。ヒカリは、ホムラのもうひとつの姿。容姿と性格ごと違っており、穏やかでおっとりしたホムラに対し、強気でツンツンなヒカリ。しかしどちらもレックスにとっては重要なパートナーである。『ゼノブレイド2』は、200万本ほど売り上げている任天堂の人気タイトルであり、かねてからレックスの参戦が期待されていた。Miiコスチュームでの参戦は果たしていたものの、望まれていたのはやはりファイターとしての参戦だ。だがホムラとヒカリが選ばれるという、やや意外なかたちで『ゼノブレイド2』キャラの参戦が発表された。これもまた『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズだろう。

しかしホムラやヒカリの参戦には、壁があると予想されていた。その衣装だ。彼女たちの衣装は率直にいってなかなかセクシャルなのである。ホムラもヒカリもスタイルは抜群。ホムラは胸部より上は厚手の衣装なのだが、腰回りや太ももは大胆に露出している。またバストそのものは衣服に覆われているが、背中もがっつり開いていることから、かがむシーンなどはドキリとさせられる。ヒカリはというと、胸元が出ているほか肩や太ももが大きく露出している。脚の部分は全面的に肌を見せており、オーソドックスでありながら王道な肌露出である。「楽園追放」などのキャラをデザインしたイラストレーターの齋藤将嗣氏らしい、かわいくもセクシーなキャラたちに仕上がっているわけだ。


彼女たちの参戦にあたり立ちはだかるのは、CEROを代表としたレーティング機関の壁だ。『ゼノブレイド2』は対象年齢15歳以上のCERO C。「セクシャル」アイコンがついており、青年らを対象としていることがわかる。一方で『スマブラSP』はCERO A。すなわち全年齢対象のレーティングであり、小さな子供でも問題なく遊べる内容にしなければならない。『スマブラSP』のディレクター桜井政博氏は、これまでにもさまざまなコンテンツをCERO Aに収める苦労を語ってきており、モンスターの部位切断や銃表現の変更など、あの手この手でコンテンツが“全年齢向け”に最適化されてきた。CERO C生まれのホムラとヒカリとて例外ではないだろう。ではホムラとヒカリは、『スマブラSP』に参戦するにあたり、どのように着替え、もしくは最適化されたのだろうか。細かく見ていこう。


まずホムラについて。まず目を引くのが太もも部分。新たに黒のスパッツを履いている。太ももそのものは透過しているが、露出は多少おさえられているように見える。……しかし変更点はただこれだけ。背中はガッツリ空いたままで、脇腹の露出も変わらず。スパッツを履くことで大幅な着替えから逃れている。一方ヒカリについては、ガッツリ手が入っている。まず胸元は完全にブロック。ぱっくり空いていた谷間は布に覆われている。さらに脚も黒タイツ着用で、生足は拝見ならず。ホムラのタイツよりも黒く透過も抑えめで、絶対に脚を見せないという意思が感じられる。

かくして、ホムラは薄めのスパッツを着用し、ヒカリは上着ごと変えて黒タイツを履くことで参戦を果たしたわけだ。こうした着替えを強いられたのは『ゼノブレイド2』の彼女たちが初めてではない。『ファイアーエムブレムif』の女性マイユニットであるカムイは、『スマブラ』参戦に際して黒スパッツを新たに着用。オリジナルのデザインでは内太ももが見える状態だったが、『スマブラ』では確認できない。


実はヒカリ自身は、もともと『スマブラSP』で洗礼を浴びている。『スマブラSP』発売時点で、ヒカリはスピリッツとして参戦を果たしていた。その際には、すでに胸元は閉じられ、黒色のスパッツを履いた状態であった。表現の是非に限らず、谷間や太ももはヒカリにとってのアイコンのひとつ。それらが失われることを心配するユーザーの声もあったが、開発元のモノリスソフトが“スマブラSP版ヒカリコスチューム”を原作ゲーム内に実装。黒タイツ姿を正史にすることで、キャラクターの個性の乖離が防がれた(関連記事)。


今回のヒカリのコスチュームはスピリッツ版がベースとなっている。原典からすでに“お墨付き”をもらった状態で参戦を果たしているので、通な人にとっては大きな驚きはないかもしれない。ただしホムラについては、スピリッツ時には太ももが露出されていたが、ファイターとしての参戦時にはタイツが着せられている。

Image Credit : Wikiwiki


気になるのは、何がアウトで、何がセーフかというラインだろう。ホムラ・ヒカリやカムイの例を踏まえると太ももの露出がダメなように見える。しかし他の参戦キャラを見ていくと、そういうわけでもないだろう。ゼロスーツサムスはカラーチェンジすることで、ホットパンツを着用し太ももをガッツリ見せる。アシストフィギュアでおなじみの『ファイアーエムブレム 烈火の剣』のリンは、かなりしっかり太ももを見せている。『ファイアーエムブレム 風花雪月』から参戦した主人公のベレスは、基本的にはタイツを履いているが、カラーによっては太ももを丸出しにする。太ももが一律NGというわけはなさそうだ。ではなぜホムラはスパッツを履いたのか。スピリッツ参戦時には非着用だったことを踏まえても謎は残る。


ただし胸の谷間の露出が基本的にNGなのは濃厚。主要キャラで乳房の狭間を見せている事例はなく、しいていうなら『ペルソナ5』ステージの背景で、“パンサー姿”の杏がうっすらと映るぐらい。やや基準が曖昧な太ももとは違い、谷間はかなりアウト寄りであることはわかる。もうひとつの注目ポイントは、胸揺れだ。『スマブラ』では胸部が揺れる表現がNGと噂されることもあるが、この点についてホムラとヒカリはそうした演出が盛り込まれている。

前出のベレスにおいてもそれらしき表現は散見されることもあり、胸揺れは基準に含まれないのかもしれない。なお桜井氏により公式に出禁を宣告された『餓狼伝説』シリーズの不知火舞は、太もも・谷間・胸揺れすべての表現を網羅している。

『SNKヒロインズ Tag Team Frenzy』公式映像より


考えれば考えるほど謎が深まる“スマブラのNGライン”。結局のところ、明確なラインが設定されていないのかもしれない。コンテンツはあまりに多く、絶対的な指標を設け厳守しようとすると表現の幅が狭まる。それはコンテンツを大切に思う桜井氏としても、開発チームとしても不本意だろう。ある程度の基準は決められつつ、ケースバイケースに判断されるというのが有力な考え方である。それゆえに、ある程度の基準のバラつきが生まれるのかもしれない。

セクシャルな表現については、なにも女性キャラにばかり厳しいわけではない。同作では男性の裸体表現についても、原作と変わっている場合がある。つい先日、ようやく“視認できる色の乳首”を有したセフィロスが参戦したばかり(関連記事)。みんなが安心して遊べるゲームを実現するためには、男性であっても女性であっても着替えの強要も辞さない。桜井氏と開発チームの、ドリームゲームを守るために風紀管理は、これからも続いてゆく。