電池なしで動作するゲームボーイ互換機を、研究者らが開発。太陽光と、ゲームプレイ時のボタン押下で発電


オランダ・デルフト工科大学やアメリカ・ノースウェスタン大学に所属するJasper de Winkel氏ら研究者グループが、「Battery-free Game Boy」すなわち電池なしで動作するゲームボーイ互換機を開発した。

電池を使わないデバイスはさまざま存在するものの、インタラクティブな体験を得られる分野についてはこれまで探求されてこなかったという。そこで同グループは、携帯型ゲームに焦点を当てることにしたとのこと。

電池なしで動作するゲームボーイ互換機とは言っても、電源は必要となる。そこで研究者グループは2種類の発電装置を用意した。ひとつは太陽光発電だ。ディスプレイの周囲など筐体の前面にソーラーパネルを配置し、これで発電をおこなう。そしてもうひとつは、ゲームプレイ時に常に触れることになるボタンである。十字キーの4方向およびA・Bボタンに、発電機能を持つスイッチを採用した。内部に強力な磁石とコイルがあり、ボタンを押して離す動きによってコイル内の磁石が移動して発電する仕組みだ。これらを同時に利用し、生み出した電力は即座にゲームボーイを動作させるために使用される。

ハードウェアはARMマイクロコントローラを中心に構成。電力効率も考慮してクロック周波数96MHzのARM Cortex-M4 MCUと、512KBのFRAMを採用した。ディスプレイはジャパンディスプレイ製の液晶。サイズは26.02×27.82mmと、オリジナルのゲームボーイと比べると縦横共に2cmほど小さいが、解像度は176×176ピクセルと向上している。大きなディスプレイは必要とする電力も大きいことなどから、搭載することは困難だったそうだ。また、電力効率の面から電子ペーパーを採用することも検討したが、リフレッシュレートの遅さから断念したとのこと。


ゲームボーイの互換に関しては独自のエミュレーションにて対応。オリジナルのカートリッジを使って、基本的にすべてのゲームボーイ向けタイトルをプレイ可能だという。ただし、ボタンを押す頻度の少ないゲームの場合、発電量不足に陥りプレイ不可となることもあるそうだ。また、太陽光発電にしても常に安定して発電できるわけではなく、突然電源が落ちてしまうこともあり得る。そこで本機では、ゲームプレイの進行状況を常にトラッキングし、電源が落ちてしまっても同一フレームから再開できる仕組みを導入している。

Battery-free Game Boy」は、環境発電とその断続的な電力を用いたインタラクティブなシステムが構築可能であることを示すための研究であるため、販売予定はないそうだ。ただ、ENGAGE(Energy Aware Gaming)と名付けられたこのシステムは、オープンソースとして公開するとのこと。知識のある方なら、それを参考に自作してみるのも良いかもしれない。