『あつまれ どうぶつの森』が「中国のショップ」から一斉に姿を消す

 

『あつまれ どうぶつの森』パッケージ版が、中国の小売店から一斉に姿を消していると報告されている。『あつまれ どうぶつの森』は、中国大陸向けには正規販売されていない。もともと中国で正規販売をするためには、中国政府からの審査を受け、ゲームライセンスを獲得しなければならないので、複雑な手続きを要求される。手続きを受ける時間は長く、ライセンスが認可される確証もない。それゆえに、ローンチ時には正規販売されていないのだろう。一方で、グローバル版には中国簡体字が収録されている。グローバル版を入手したプレイヤーたちが、中国で『あつまれ どうぶつの森』を楽しんでいた。その海外版が、小売店から一斉に消えたというのだ。Weiboなどで騒がれている。

同作が中国のショップから姿を消したことは事実のようだが、一方でその理由については明らかになっていない。ただし、「一斉に」消えたという事実は、そこになんらかの大きな動きが発生していると考えられる。その理由について、推測が飛び交っているのが現状だ。

もっとも指摘されているが、デザインの自由度が高すぎたゆえに、危険視されたという説。本作においては服装から床までに、細やかにデザインをすることが可能。一方で、そのデザインを利用して、香港デモをゲーム内で試みるプレイヤーの動きが注目されていた。弊誌でも伝えたほか、Bloombergのような大きなメディアも、その活動内容を報道している。

また、習近平国家主席のイラストを描き葬式かのような建築をしたり、新型コロナウイルスを武漢肺炎と揶揄するデザインを作り出すユーザーも確認されていた。ゲーム内容がどうであれ、中国の威厳を損ねるようなコンテンツを生み出すことができれば、愛国者および政府からマークされかねない。こうした事態を重く見た業者が、自主規制をはかった可能性があるだろう。あるいは、中国政府が小売業界に自主規制を迫ったとの噂も流れている。

理由は定かではないが、とにかく小売店からグローバルなパッケージ版『あつまれ どうぶつの森』が消えているようだ。一方で、こうした状況下でもゲームを売ろうとするたくましい業者もいるようで、タオバオでは「猛男之森(真の男の森)」といった“隠語”で同作を出品する動きも確認できる。状況的には、弊誌で報じてきた『バイオハザード RE:2』(関連記事)『龍が如く7 光と闇の行方』(関連記事)『バイオハザード RE:3』(関連記事)と同じような状況である。

日本のユーザーにとっては無関係の出来事であるが、中国ユーザーは海外版の入手すら難しくなりそうだ。自由なデザインが原因というのも、あくまで推測に過ぎない。そして来週になればパッケージ版は販売再開されている可能性もある。ただ、ゲーム自体にまったく問題がなくとも、クリエイションツールが存在していれば、そこから政治的主張が生まれ、政治的主張に反応するユーザーや組織も生まれてくる。自由度の高いゲームを、中国向けに展開することの難しさを垣間見るだろう。