中国で販売が禁止されている『バイオハザード RE:3』を売るために、売り手は「なぞなぞ」を強いられる
今月4月3日に全世界に向けて発売された『バイオハザード RE:3』。前作『バイオハザード RE:2』がヒットしたことによって、その注目度は俄然高い。しかし、全世界といっても、中国はその中に含まれていない。中国では正規なルートで『バイオハザード』シリーズの製品版を入手する手段がないのだ。中国在住のゲーマーたちは、SteamやPS4(もしくはXbox One)の香港サイトで、デジタル版を購入するほか道がない。また、香港サイトもすべて中国政府から公認されているわけではない。いわば「違法サイト」なのだ。
中国では、PS4、Xbox One、Nintendo Switchなどのゲーム機は正式販売されたものの、どのプラットフォームでも「大作」ゲームがほとんど販売されていない。たとえば、今年の1月にようやく正式販売を果たしたNintendo Swtichは、発売から3か月が経ったところ、未だに2つのゲームしか正規販売されていない状態だ。その原因は、中国政府のあらゆる文化的作品への検閲にある。そして、ほとんどのゲームは「暴力、性的なもの、宗教の描写、中国国家安全を損害するもの」のどれかに当てはまり、中国での正式販売が不可能な状態になっている。
しかし、政府から正式な販売を禁止されたとはいえ、中国で生活しているゲーマーたちの情熱は消えない。「やはりゲームを購入して遊びたい!」という需要に、「闇市」が応じた。実際、いま中国で大フィーバー中の『あつまれ どうぶつの森』も、ほとんどの人が「闇市」でゲームを入手し、プレイしているのだ。しかも『あつまれ どうぶつの森』は正式に販売されていない「存在しない」ゲームでありながら、中国公安は感染症対策や防火マナーを、ゲームを使って説いているのだ。
また、ここで強調したいのは、「闇市」という名前は怪しいながら、裏路地に行くようなものではないということ。正式販売されていないゲームとゲーム機は、中国のもっとも大きな通販サイト「タオバオ」で普通に売られている。ほとんどのゲームは、タイトルを入力すれば簡単にヒットするし、すぐに注文ができるのだ。
さて、『バイオハザード RE:3』ももちろんこの「闇市」から入手できる。ただし、他のゲームと比べて、『バイオハザード』シリーズを見つけだすのはややトリッキーだ。なぜなら、直接タイトル名で検索しても、このゲームに関する情報は一切出てこない。その原因は複雑だが、簡単に言えばコンシューマゲーム自体の販売はグレーゾーンであり、政府は見てみぬフリをしている状態だが、『バイオハザード』シリーズについては、政府から直々に「暴力、青少年に害を及ぼす」などの理由で「指名BAN」された数あるゲームタイトルの一つなのだ(具体的な原因は諸説あり、おそらく『バイオハザード6』にある中国の描写が問題視されたのだろう)。
しかし、困難は乗り越えるために存在するものだ。「タイトルが使えないとすれば、変えればいい」と、多くのゲーム小売店が思ったのだろう。「暗号」や「隠語」などを使って、名前すら言えないゲームを売ろうとしている。
たとえば下記の画像では、『プラントVSゾンビ3』というタイトル(およびパッケージ)を使って、『バイオハザード RE:3』を売り出している。
また、ゾンビにちなんでいなくとも、同じカプコンが発売したタイトルが、『バイオハザード』シリーズを指す表現として使われる場合も多い。
ほかにも、ゾンビとは関係ないが、なぜか『バイオハザード RE:3』の隠語として使われているゲームタイトルをいくつか紹介する。
また、数少ないが、ゲーム内のスクリーンショットなどを使って『バイオハザード RE:3』を売り出す店もいくつかある。
実際、中国の多くのゲーマーは、このような“なぞなぞ”を解いてゲームを探し出して買っているわけではない。なぜなら、普通にコンシューマゲームを売っているお店を探し、オンラインのスタッフに直接たずねてみたほうが手取り早いからだ。ゆえに、下記のように全く不可解な商品ページもいくつか見つかった。
筆者も、今回タオバオで『バイオハザードRE:3』を探し出すには苦労をした。友人からの助言で「PS4+発売日」で検索をかけることで、ようやくこれらを見つけ出した。大変であった。
今回のように「隠語」と「暗号」を使ってゲームを売るのは初めてのことではない。去年発売された『バイオハザード RE:2』も、今年発売された『龍が如く7』も、全て同じ手法にてインターネットで販売されている。中国のゲーマーと売り手のアイデアには、筆者はまたしても脱帽した。
さて最後にまた質問。下記のゲームは、何を指しているのだろうか。