クトゥルフ神話の影響受けるオープンワールドADV『The Sinking City』日本語対応で年内発売へ。狂気に蝕まれた沈みゆく街の謎を追う

 

ウクライナに拠点を置くインディースタジオFrogwaresが、「クトゥルフ神話」で知られる作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの著作の世界観から影響を受けた、オープンワールド・アドベンチャーゲーム『The Sinking City』を現在開発中だ。本作はPC/PlayStation 4/Xbox One向けに2018年内の発売が予定されており、弊誌が問い合わせたところ、ゲームは日本語表示に対応するとのこと。

『The Sinking City』の舞台は1920年代のアメリカ。ニューイングランド・マサチューセッツ州に位置する架空の街「オークモント(Oakmont)」に、本作の主人公である私立探偵が訪れる。この街では不自然な水位上昇が発生しており、危機的な状況を迎えつつある。私立探偵は、何が原因で水位が上がり続けているのかを突き止めるため、この街の調査を始める。

本作のゲームプレイについてはまだ多くが謎に包まれているため、これまでに公開されている、舞台となるオークモントの情報を中心に見ていこう。この街は港や繁華街、工業地帯、住宅街など、さまざまなエリアを擁しており、オープンワールドゲームとして自由に探索できる。浸水被害に遭っているため、ボートに乗って移動せざるを得ない場所もある。オークモントの興りは17世紀から始まるが、本土の都市とはほとんど交流することないまま発展した(川か海で隔てられた島であるようだ)。そのため住民はよそ者を好まず、自分たちのしきたりや伝統を重んじているという。原因不明の水位上昇は、そのような孤立した土地で発生した。地元自治体はさじを投げ、すでに多くの命が奪われており、この状況が外部の人間への不信感に拍車をかけている。

この街を作り上げるにあたってFrogwaresは専門家を雇い、1920年代当時にあった実際の建物の様式など、その雰囲気をできるだけリアルに再現することに努めたそうだ。一方で、街は非現実的な災害に見舞われている。プレイヤーは自然と不自然が混じり合う中で、奇妙な没入感を覚えることになるだろうとしている。

調査を進める中では物理的な手がかりだけではなく、目に見えない“何か”を発見することもあるという

ゲームではプレイヤーはさまざまな人と出会うことになり、同時に数多くの事件やクエストも用意されている。街の住人は一様に浸水被害に悩んでいるようだが、より密に接してみると住人はどこか様子が変なのだという。超自然現象が人々をゆっくりと蝕み、正気を失わせていっているのだ。その原因は、水位の上昇だけではないらしい。中には「Unknown」と呼ばれる存在に変貌を遂げている者もおり、さらには恐ろしい異形のモンスターが街に潜んでいる。主人公の探偵は銃を持っているが、人間は弱い存在である。常識では説明のつかない現象や、凄惨な出来事を目の当たりにすれば、いとも簡単に狂気を誘発してしまうだろう。

本作は、ラヴクラフトが探求した未知なる存在や絶望、孤独感といったテーマに従って構築されており、インスマスやアーカムからほど近い場所に位置するオークモントでの、謎の水位上昇はそれを表す表現の一つだそうだ。住民は誰も原因が分からず、疑心暗鬼に陥り、もはや助けも期待していない。それでも、誰もこの街から離れようとしない。そこには、本土とは隔離された保守的な社会だから、というだけでない何か隠されているようだ。

オークモントの街には、何キロにも延びる道路に数千の建物がある。すべてではないが、中に入れる建物もかなり多いという。それらを一つひとつ制作し配置していたのでは何か月もかかってしまうため、Frogwaresは「City Generator」と呼ばれるUnreal Engine 4用の独自ツールを制作した。このツールでは、基本となるさまざまな種類の建物を用意しておくと、目的に応じて見た目を自由にカスタマイズすることができる。そして街の通りをグリッドで引き、住宅街や工場、また浸水エリアなどを設定。すると、用意した建物がそれぞれのエリアに自動で配置されていく。その後で、専門家の監修のもと個別の建物の修正や入れ替えをおこなえば、オークモントの街が完成だ。さらに街の陰鬱とした空気感の表現に関しては、絵画作品などを参考にしたライティングにより実現されている(関連記事)。

このCity Generatorツールを用意したことで、マップの制作期間を大幅に短縮できたという。なお、このツールは本作の発売に合わせて一般に公開される予定だそうだ。Unreal Engine 4ユーザーであれば、これを使ってオリジナルのマップを生成し、キャラクターやクエスト、シナリオを組み込むこともできるようで、詳細は今後発表するとのこと。

本作の開発元Frogwaresは、『Sherlock Holmes: The Devil’s Daughter(シャーロック・ホームズ 悪魔の娘)』など、シャーロック・ホームズのゲームを多数手がけてきたスタジオだ。同じ“探偵モノ”として本作には共通点もあるが、オープンワールドでの自由な探索と調査、そしてノンリニアなストーリー展開を特徴とする本作では、プレイヤーにゆだねられる部分が多いという。どういった事件を追い、情報を得るためにどこを調査し、誰に話しかけるのか。ゲーム側から誘導することはほとんどなく、すべてはプレイヤーの選択次第となる。そして、探偵としてどのような歩みを辿ったかによって、異なる結末を迎えるという。

この『The Sinking City』は、今週開催されるGDC 2018を皮切りに、各イベントにてプレイアブル出展される。プレイヤーはこのオークモントの街でどのようなことができるのか、ゲームプレイの具体的な情報はこれから明らかになってくるだろう。