『イースVIII』の“無機質”なローカライズに不満を抱く海外ファルコムファン、日本語のメールを作成し改善を求める


日本ファルコムより発売中のアクションRPG『イースVIII -Lacrimosa of DANA-(以下、イースVIII)』。国内向けにはPlayStation Vita版が昨年7月に発売され、PlayStation 4版は今年の5月に発売された。そして欧米向けには今年の9月にリリースされた。『イースVIII』はMetactriticにて85点を獲得するなど、すでに海外メディアから上々の評価を獲得しているが、その裏ではある問題を抱えているようだ。その詳細をOneAngryGamerが伝えている。

その問題というのは、ローカライズだ。指摘されている要素はメニュー画面での誤訳など多岐にわたるが、もっとも問題視されているのは「雰囲気付け」だろう。キャラクターたちの口調や、ゲーム内の描写が非常に堅苦しい無機質なものになっているという点に抗議が集まっている。日本ファルコムの作品は、ゲームシステムだけでなくキャラクターの魅力もひとつの特徴となっている。翻訳自体は間違ってはいないものの、キャラクターの魅力を含んだ世界観を彩る雰囲気付けがうまくできていないという主張だろう。さらに指摘を受けているのが「用語の一貫性の欠如」。シリーズ作品で出てきた用語の翻訳が変わっており、違和感が生じているようだ。

「はい、私の名前はアリソンです。アリソンと呼んでください。」単純に訳しただけでも、登場人物が喋るには無機質なセリフであることがわかる。

日本ファルコムの作品の海外向けの販売は、これまでマーベラス傘下会社のXSEED Gamesが担当していたが、今作からはNIS America(日本一ソフトウェア アメリカ)がおこなっている。おそらく、用語の一貫性の欠如はこうした会社変更により生じたのだろう。パブリッシャーが変わったことによりSteam版の日本語音声収録が予定されるなど、いくつか喜ばしい変更点も生まれ期待は高まっていた。しかしながら、ローカライズという点ではうまくファンのハートをつかみきれていないようだ。ちなみにSteam版『イースVIII』は発売日前日に延期が発表されており、発売時期は未定となっている。

今回のローカライズに不満を持ったファンは、ローカライズを担当したNIS Americaではなく日本ファルコムへの改善要求メールを作成。Pastebinでその内容が確認できる。メールの文面としては、英語でリリースされていることを感謝しつつ、ローカライズが一定のレベルに達していないと不満を述べる。さらに、PC版が発売日前日に延期が発表されたことも嘆いている。またこうした問題は、日本ファルコムの人気フランチャイズである『軌跡』シリーズへの影響を及ぼしかねないとも述べている。一方で、メールの作成に協力したredditなどのファンは日本ファルコム作品への愛情を強調しており、一部のユーザーはぎこちないテキストの翻訳の対案を提示するなど、好きな作品だからこそ高品質なローカライズをしてほしいという想いが節々に込められている。日本ファルコムは今回の翻訳に直接的には関係していないものの、コンテンツの創造主であるがゆえに、切実な願いが訴えかけられているのだろう。

「メフォラシュム」というボスは「メフォラシュムォ~」というどこか腑抜けた名前に

ローカライズは文章を翻訳するだけでなく、その背景にある文化やキャラクターを翻訳する必要があるなど、複雑な作業を要する。NIS Americaは他社から日本ファルコム作品のローカライズを「引き継ぐ」立場であり、その難しさは計り知れない。一方で、そういった部分はあくまで会社のしがらみであり、高品質にローカライズしてほしいというユーザーの主張に反論の余地はないだろう。

先日Steam版の『閃の軌跡』において日本語音声が入っていないことをめぐり議論が発生するなど、日本ファルコム作品のファンベースは欧米でも拡大しつつあることを感じさせる。大規模な抗議ではないものの、日本語メールを送るほどの情熱にあふれたその声は、日本ファルコムに届くのだろうか。