月はどの国の領土なのか?米放送局NBCが『マインクラフト』を使って複雑な「月協定」を分かりやすく解説

 

いまから48年前の7月20日、アメリカが打ち上げた宇宙船アポロ11号が月に着陸し、ニール・アームストロング船長らが人類として初めて月の大地を踏んだ……なんて話をうっかりお子さんにしてしまうと、「じゃあ、月はアメリカの領土なの?」と難しいことを聞かれるかもしれない。だが安心してほしい。そんな素朴な疑問に対して、NBC Left Fieldが少し変わった方法で答える動画を公開している。

アポロ11号の月面着陸から10年後の1979年、国連で「月その他の天体における国家活動を律する協定」いわゆる「月協定」が採択され、1984年に発効した。その内容は、平和的な利用に限り、地球上のいかなる国であっても月を活用することができるというもの。ただし、計画は国連事務総長への報告が義務付けられており、武器の持ち込みは禁止など順守すべき事項が定められている。その中には「領有の禁止」もある。月の資源は人類共有の財産と見なしているためだ。ただ、月協定には17か国が批准しているが、皮肉なことに現時点でどの国も有人宇宙飛行技術を有していない。

このような内容を、NBC Left Fieldはなんと『Minecraft(マインクラフト)』を使って伝えている。NBC Left Fieldはアメリカの放送局NBC Newsの一部門で、今年6月に設立されたばかり。TwitterやFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアで流すことを前提に、世界中の話題を短い映像にまとめて配信している。扱う題材は多岐にわたり、たとえばウクライナの子供たちがロシアを敵視する軍隊式サマーキャンプに参加する様子や、スウェーデンの博物館Museum of Failureが所蔵する“売れなかった失敗製品”の紹介。あるいは見映えのいいマーブル模様の作り方など、所属ジャーナリストやカメラマンらがジャンルにとらわれず取材・制作している。決して『マインクラフト』などのゲームを使うことを前提にしているメディアではない。

「50年後のアイルランドはどうなっているか考えてみよう」というテーマの『Minecraft: Education Edition』向けマップ)

『マインクラフト』についてはあらためて説明する必要はないだろうが、Mojangが手がけたこのサンドボックスゲームではユーザーが自由な発想で世界を構築できるため、たとえばデンマークの政府機関が教育用途として国土を再現したことは大きな話題になった。また、教育現場向けには『Minecraft: Education Edition』がリリースされており、サンプルでは人間の目の仕組みを学ぶマップが提供されている。NBC Left Fieldが今回『マインクラフト』を利用したのは、映像表現としてのビジュアル的な面白さとともに、扱ったテーマに合わせて、こういった教育目的に利用されている実態を反映させたのかもしれない。

ちなみに、アメリカは月協定に批准していない。ただし、それとは別の「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」いわゆる「宇宙条約」には批准しており、こちらで天体の領有禁止を受け入れている。したがって、月はアメリカの領土なのかという問いの答えは「違うよ。どの国のものでもないんだよ」ということになる。