第四の壁を越えた2Dアドベンチャー『OneShot』、最新アップデートにより新エンディングへの扉が開く

 

RPGツクール製の2Dパズルアドベンチャー『OneShot』に新たなチャプチャーを追加する最新アップデートが3月26日に配信された。本作は2014年にRPGツクール2003版が、そして2016年12月にRPGツクールXPを用いたアップデート版がSteamにてリリースされている(弊誌参考レビュー)。

『OneShot』は、見知らぬ世界で目覚めた猫のような少年「Niko」を主人公とした2D見下ろし型のアドベンチャーゲームである。プレイヤーは少年「Niko」を操作し、太陽が失われた世界に光を取り戻すべく、また少年が本来の居場所へと帰れるよう、彼を導いていく。旅の道中では「Niko」を救世主と呼ぶャラクターたちとの会話や、アイテムを組み合わせたり扉のパスワードを探したりといったパズルを通じて、プレイヤーと「Niko」、「Niko」とゲーム内世界、プレイヤーとゲームとの関係性が明らかになっていく。

「Niko」がプレイヤーに直接話しかけてきたり、謎解きの鍵がゲーム外の空間に配置されていたりと、「第四の壁」を平然と飛び越えてくるのが本作の特徴でもある。メタレベルに踏み込む物語およびゲームデザインは最後の最後まで一貫しており、ラストシーンでの選択が招く代償もまた、ゲーム世界の壁を突き抜けてプレイヤーの前に差し出される。

「第四の壁」を物語・ゲームプレイの両面で活かした『OneShot』はリリース時点の状態でも、ひとつの作品として完成していた。だが本作には「その先に別のエリアが存在する」と明示しながらも、先へ進む術が与えられなかったロケーションが複数存在し、また2017年3月20日にむけたカウントダウン・タイマー付きの扉がファンの期待を膨らませていた。3月20日といえば春分日。今回のアップデート自体「Solstice(至点)」アップデートと明記されており、本作のキーアイテム「太陽」を意識した、重要な日程であることが窺える。そしてタイマーがゼロになった今、「Niko」と太陽なき世界の物語は、新たな可能性に向けて再び始動する。

とはいえ、もう一度ゲームをプレイし直すことを億劫に思う方もいるだろう。その点は心配いらない。本作を周回プレイ済みであれば、すぐに新チャプターをプレイできる。ごく一部を除けば、同じ謎解きを繰り返す必要はない。反復作業を避けながら、これまでに描かれてきた物語と同様に「第四の壁」を行き来し、その過程で残された伏線を綺麗に回収していく。「アップデートにより追加されたコンテンツ」という体裁すらも作中で意味を持ってくる。アップデートという行為を物語の一部として組み込んだ『OneShot』は、本アップデートをもって真の意味での結末を迎えたといえるだろう。


元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)