インタビュー セガ 木村裕也 [後編] 『PSO2』ゲームエンジンは完全に「キャラクリ」向け

中編から引き続き、『ファンタシースターオンライン(以下、PSO)』シリーズディレクター木村裕也氏へのインタビュー。キャラクタークリエイト向けに開発された『ファンタシースターオンライン2(以下、PSO2)』のゲームエンジンや、木村氏のルーツについてお話をうかがった。

 

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――PCとVitaとモバイルにて、クロスプラットフォームで同じキャラクターを共有できるオンラインゲームというと、まず思いつくのが『PSO2』です。こういう機能を実現する際に、大きなハードルやテクニカルな問題などはありましたか?

木村氏:

やっぱりVitaやスマートフォンに関しては、スペックがPCと全然違うので、単純なモデルのリダクションだとか、スペックを下げるなかでの作業に常にランニングコストは発生しています。ここはまあ大変なところですね。

あとはどうしてもロード時間の違いとかはでてしまう。最初、PS Vitaを導入しようとしたときに、PC版のユーザーさんから、「Vitaのユーザーと遊ぶことによって不利益があるんじゃないか」という意見があったんです。実際『PSU』の時に、PC版とPS2版のユーザーは同じサーバーでプレイしていたんですけど、やはりPS2の方がちょっとスペックが低く、一緒に遊ぶとPC版の人が「ちょっとなんかPS2の人は動きが遅いなあ」という感じもあったので。そういった不満がまたでるんじゃないかということで、すごくPC版のユーザーさんが、PS Vita版発表初期のころ心配されたんですね。

だからそういうことが極力ないように、まずVita版をしっかり作るというのがありました。あと、どうしてもVita版とPC版で一緒に遊びたくないという方のために、ゲーム内でブロックを分けて、Vita専用ブロックとPC専用ブロックと共有ブロックっていうのを作りました。ユーザーさんが選択できるような形にして、お互いのプラットフォームユーザー同士でトラブルが発生しないよう、配慮したというのがあります。これによって、実際に不満をもっていたPC版のユーザーさん、Vitaが入ってくることによってどうなるんだよって思っていたユーザーさんも特に不満がなくて、むしろユーザーさんが増えて嬉しいというような感じで。全員に意見を変えていただけたというか、いい印象に変えていただいたと思いますね。

あと単純な移植という面でみると、我々のゲームはキャラクタークリエイトというのが非常に特徴的なゲームとなってます。評価をいただいている部分ではありますし、オンラインゲームとしての技術と並列するぐらい、我々のタイトルの一番の強みの部分でもあるんです。ただもともと、PC版だけでも作るのに非常に苦労している部分でして。実はうちのゲームの作り方って、キャラクタークリエイトするためのエンジンに、オンラインゲームが乗っかってるみたいな感じなんですよ(笑)ほかのタイトルさんって多分、オンラインゲームのエンジンとか、3Dアクションゲームのエンジンだとかにいろいろ重ねていって、その中でキャラクタークリエイトがあるって感じだと思うんですけど。うちはキャラクタークリエイトをするために、全てエンジンを構築してるんですね。

 

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木村氏:

やっぱり新しいタイトルを創るときって、ライブラリの共有だとか、いまセガで使っているほかのゲームのエンジンとかを流用するっていうのは、当然コスト的に考える部分もあるんです。まあ今は、Unreal Engineとか各社いろんなものがあるので。うちの場合は、低スペックでいろんなキャラクターをクリエイトさせたいという課題がある以上、オリジナルでゲームエンジンを作らざるをえないんですね。なので、まずキャラクタークリエイトを低スペックでつくるためのエンジンというのを作って、そこにオンラインゲーム用のシステムをのせてという感じの作り方をしている。それぐらい、キャラクタークリエイトがすごく重要なゲームになっているので。

Vitaへの移植に関しては、低スペックのPCやノートでも動くように作っていたので、キャラクタークリエイトについては、主にリダクションとUIの変更ぐらいでした。ただスマートフォン版の『PSO2 es』に関しては、そもそもまったくエンジンが違ったんです。Unityを使おうと思っていたので、そこに対して落としこみをするのには、非常に苦労しましたね。実際に、サービスイン時期も一回スケジュールをズラさせていただいたりしているんですけど、これもキャラクタークリエイトを作りなおしというか、作りこみに時間かけたという感じでした。アルファテストみたいなのやったんですけど、その時にキャラクタークリエイトの出来で、ユーザーさん側からかなり不満が出てしまったところもあったので。ゲーム性を直すってのもあったんですけど、なんだかんだで一番苦労したの、はキャラクタークリエイトの実現といったところです。

 

――『ファンタシースターオンライン』を創る際、インスピレーションを受けたタイトルはあったでしょうか?

木村氏:

初代『PSO』に関しては、初期開発時に私はいなかったので、ちょっと正確ではないかもしれないんですが、当時のスタッフに聞くと、すごく『Diablo』を意識したというか、『Diablo』をみてオンラインゲームは今後すごい発展するんじゃないかと感じたそうです。そして『Diablo』はPCだったので、家庭用にオンラインゲームをだしたいと。さらに単に『Diablo』みたいなMOを家庭用にするんじゃなくて、世界初の3Dの家庭用オンラインゲームを出したいというような意思で、『PSO』を創ったというふうには聞いていますね。

『PSO2』については、開発が3年ぐらいかかって、運営が2年目なので、このタイトルを実際に起案したのは5年か6年ぐらい前です。その時期にでていたF2Pのタイトルとか、韓国のMOとかはひと通り触らさせていただきました。その中でちょっと近いかなと思うのは、韓国の『ドラゴンネスト』というタイトルですね。あれがやっぱりMOでアクション性も高かったので、こういう方向性がちょっと近いかなあと、見させていただいたというのはありますね。

あと『PSO2』を創るにあたって、いくつかコンセプトを掲げていて、その中のひとつにオンラインRPG最高峰のアクション性というものがあります。アクションゲームとして面白くしたいなあ、と思っていて。なので、その当時出ていた、他社さんの家庭用ゲーム機の3Dアクションゲームだとかは、結構参考にしましたね。

 

――日本では、PCゲームはいまだにニッチなジャンルだと思います。御社のような日本の大きなパブリッシャーが、『PSO』ほどよく知られているタイトルをPCメインに出すことは非常にめずらしいと思いました。『PSO2』をPCメインにしようと考えられたのには、なにか理由などありますでしょうか?

木村氏:

さきほどお伝えしたとおり、ゲームのプラットフォームとしてはニッチかもしれませんが、国内でも普及台数がトップなのは事実ですから、最終的には結果がついてくるかなと思っていたので、PCを選択したという形ですね。当然最初に「えっ」という声はあって、なんで家庭用ゲーム機じゃないのという反応は多かったんです。ただ、そこはすぐに蓋を開ければわかっていただけるかなあという感じでした。課金システムに関しては、成功するかどうか多少不安だった部分もありましたけど、プラットフォーム選択に関しては最初から最後までわりと計画通りというか。自信もあったし、想定通りの推移かなあと思ってます。

 

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――個人的にセガの他タイトルで機会があれば手がけてみたいタイトルやシリーズはありますか?

木村氏:

僕自身がですか、個人が(笑)セガのタイトルかあ、なんだろうな。それはオンラインとか関係なくってことですよね。あ、初音ミクの『DIVA』とかすごい興味ありますね。初音ミクすごい好きで、『PSO2』でもコラボとかしているじゃないですか。あれは実は僕の方で動いてたりして。まあ僕が『DIVA』を作ってもあんなによくはならないと思うんですけど(笑)

あとは『ぷよぷよ』みたいな、ほんとに沢山のユーザーさんに愛されているようなタイトルですかね。もちろん『PSO2』もそうなるようにしていきたいんですけど、やっぱり『ぷよぷよ』には勝てないと思うので。ああいうタイトルっていうのを、自分が手がけるってなったときに、どういう風に作るのか、どういう見せ方をするのか、ということは、なんかちょっと考えてみたりすることもありますね。

 

――今後『PSO2』で初音ミク以外のコラボは予定していますか。

木村氏:

いま発表させていただいているなかでいうと、11月下旬に「ゆるゆり」というアニメとのコラボが決定してまして。こちら11月末に劇場版の公開があるので、それに合わせてゲーム内に「ゆるゆり」のコスチュームだとか髪型だとか実装されます。

あとは年末にですね、これも「宇宙戦艦ヤマト」の劇場版がありまして、こちらとのコラボが決定してます。これもそのヤマトクルーの制服だとか、髪型とかが実装される予定となっています。あとは自社タイトルですと、10月からアニメも始まった「セガ・ハード・ガールズ」ですね。これのドリームキャストという、擬人化のキャラクターのコスチュームが入ったりもする。まあセガタイトルに関しては、今後もやっていくかなあと思っているんですけど、近々で発表している内容はそんな感じですね。

ただ、年明け以降も2か月に1回か、空いても3か月に1回のペースで、社内ふくめてなにかしらコラボというのは積極的にやっていきたいなと思っていますね。

 

――クリエイターになりたい、ゲーム業界に入りたいというきっかけになったようなゲームはありますか?

木村氏:

小学生のときにやった『真・女神転生』というタイトルですね。スーパーファミコンだったと思うんですけど、これをやった時に「おおなんかゲームって結構色々できるんだな」と思っちゃったというか。当時、ファンタジーモノだとか普通のアクションゲーム、シューティングゲームだとかが僕の中のゲームというものだったんです。『真・女神転生』も普通のRPGなんですけど、現実を舞台に物語が進行して、あとお話もすごくシリアスだったりして。あ、ゲームってここまでやっていいんだみたいな、広がりをすごく感じたんですね。

なんかモノづくり自体はもともと興味があって、絵を描いたりだとか、図工で工作したりとかすごく好きだったので、将来は職人系になるかな、モノつくる人になるかなあとはずっと思っていたんです。それが『真・女神転生』をプレイしたことで、ゲームクリエーターと言う具体的な職業を意識するようになりました。

そのあとタイミングもよかったのか、1年後ぐらいに『RPGツクール』っていうゲームがスーパーファミコンとかで発売されたんですけど、それをずっとなんかいじってました。まあ大したものは作れなかったんですけど(笑)すごく熱中してやっていた気がします。

ただ最初のスーパーファミコンのやつって、そんなに複雑なことってできなかったので、ちょっと物足りなくなっちゃって。親にせがんで、中学入ってすぐに安いPCを買ってもらいました。PC版のRPGツクールの方がいろいろできるんですよね。自分で絵が描けたりとかして。だからRPG部分つくるのとりあえず置いといて、まずは絵からだろうと思って、ずっとドット絵書くだけで終わってるみたいな。駄目なパターン(笑)

だから僕は学生の時は結構ドット絵とか書いてました。けど、そんなこともあって、中学2年生のころには、もうゲームクリエイターになろうと心の中では決めていましたね。

 

――生まれて最初に遊んだゲームとか、所持したコンソールは覚えていらっしゃいますか。

木村氏:

えっと、ファミコンですね。ファミコンで最初に買ったのが……『スーパーマン』だったと思います。青いカセットの。あとは『スーパースターフォース』とういう、シューティングゲーム。多分最初にその2本買ってもらったんじゃないかな。

 

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――AUTOMATONの読者、あるいは『PSO2』ファンに対してメッセージをいただけますか。

木村氏:

『PSO2』も2周年をむかえて、いま3年目というところです。その3年目の開始と共にエピソード3も始まりまして、非常にユーザーさんに好評をいただいていて、我々もその反応をみてモチベーションをさらにあげて開発に取りくんでいるという状況です。

まあサービスインの時から最低10年やりますという目標をかかげているんですけど、やっと2年たったというところで。これをもう8年なんとか続けていきたいという思いでやっています。アップデートが繰りかえされていく中で、マンネリ化しないよう常に新しい展開や驚きをユーザーさんに届けているように。ただ続けるんじゃなくで、楽しい10年を続けていきたいという思いでやっているので。今後も『PSO2』を遊んでいただけるユーザーさんには、ご期待いただきたいなと思っています。

あとサービスが始まって2年がたったとことでで、『PSO2』って名前は聞いたことあるけど、いまから新規で入るのはなと思っている方もいらっしゃると思うんです。けど『PSO2』は、新しいアップデートをする際には常に、はじめて入られる方とか初心者の方に対してのコンテンツや対応も同時にやっています。単純なバランスの緩和とかもそうですし、チュートリアルとかわかりにくい部分を改善したりだとか、はやく上級者に追いつけるような施策とかですね。初心者の方がどこで止まってしまっているのかを、常に分析してしていたり、古参のユーザーさんと同じぐらい新規や初心者のユーザーさんを大事にして運営しています。常に遊びやすくなりつづけているので『PSO2』は今から始めてもすぐに追いつけるゲームです。

これについては今『PSO2』をプレイしているユーザーさんのほとんどが同意していだけるところかと。それに新しいユーザーさんに対しては寛容というか、温かく受けいれてもらえるユーザーさんが多くいるゲームなので。もし『PSO2』というタイトルにですね、ちょっと興味あるなあという方がいらっしゃったら、ぜひ無料ですので(笑)

あとさきほど言った課金ポリシーで、基本的にお金を払わなくてもすべてゲームは楽しめるようにできています。ぜひ気軽な気持ちで始めていただけたならなあと。オンラインゲームを遊んだことが無い方もぜひオンラインゲームの第一歩として『PSO2』を遊んでいただければと思います。

 

――ありがとうございました。

 

[聞き手: James R. Mountain]

[写真: Mon Gonzalez]

 


 

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