『風来のシレン6』開発者インタビュー。長き時を経て新作が出る理由、ローグライクゲームとしてのこだわりが熱く語られる

スパイク・チュンソフトは、2024年1月25日に『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』をNintendo Switch向けに発売する。本稿ではディレクターの櫻井啓介氏とプロジェクトマネージャーである篠崎秀行氏への合同インタビューセッションの内容をお届けする。

スパイク・チュンソフトは、2024年1月25日に『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』をNintendo Switch向けに発売する。本作はスーパーファミコン時代から続くローグライクRPG『風来のシレン』シリーズの作品で、およそ14年ぶりの完全新作となる。

『風来のシレン(不思議のダンジョン)』シリーズは“1000回遊べるRPG”を掲げる作品だ。1980年に発表された『ローグ(Rogue)』が持っていたランダムに生成されるダンジョンや、死ぬと持ち物やステータスを全ロストしてしまうなどといった要素を備えた作品となっていて、現代では「ローグライク」と呼ばれるジャンルを日本で広く浸透させた立役者といえる。

弊誌では試遊レポートを掲載しているため、ゲームの詳細はそちらを確認していただくとして(関連記事)、本稿ではディレクターの櫻井啓介氏とプロジェクトマネージャーである篠崎秀行氏への合同インタビューセッションの内容をお届けする。

――本作は『シレン』シリーズの完全新作として14年ぶりとなる作品です。復活に至ったきっかけはなんだったのでしょうか。

篠崎秀行氏(以下、篠崎):
DS版の発売以降にリリースしたPS Vita版、NintendoSwitch版、STEAM版、iOS/Android版と多くのプラットフォームでリリースさせて頂きました『風来のシレン5Plus』が各プラットフォームで想定以上のセールスを行うことができた、ということが理由になります。特にNintendo Switch版は想定を遥かに超えるセールス、反響を頂く事ができました。一番の決め手となったのはこのNintendo Switch版の大きな反響や、セールス達成できたことで、本当に開発陣としても待望となる続編の作成を行うことができました。本当にユーザーの皆様には感謝しております。本当にユーザーの皆様ありがとうございます!

『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』。画像はSteam版のもの。

――近年のゲームシーンでは「ローグライク」や『ローグ』とはジャンルが異なるが一部要素を採用している「ローグライト」と呼ばれる言葉が浸透し、数々の作品がリリースされています。一方で、『風来のシレン』のようなターン制RPGタイプの正統派「ローグライク」はあまり多くないと思います。そんな中で、『風来のシレン』を復活させるにあたって意識したことや、ローグライク・ライトに慣れたゲーマーに向けてどのようにアプローチしたいと考えていますか。

櫻井啓介氏(以下、櫻井):
『風来のシレン』シリーズははじめから完成しているフォーマットがあり、まずはそれを踏襲するということをかなり意識しています。初代『シレン』はローグライクの源流に近い形なので、受け入れてもらえるだろうと考えています。

篠崎:
ローグライク・ライト系のゲームは私も好きでよく遊んでいます(笑) ただ、『シレン』がアクション要素を入れた「ローグライト」になっていたら、やはり「これじゃない」と言われるのではないかなと、感じています。

『ローグ』がアスキーアートで描かれたターン制の作品であり、それをグラフィカルに進化させた『不思議のダンジョン』が約30年前に発売されました。今作では「原点回帰」を掲げ、企画検討を始めた際にまず、『シレン』とは何か、『シレン』のどういうところが楽しいのか、というところから検討を始めました。


まずは開発陣として本作が楽しいものであると自信を持って出せるものにする、ということが大切であり、その上でシレンをこれまでプレイしてくれているユーザー皆様が楽しいと感じられるものである、ということがとても重要なポイントである、と考えています。その上で結果的にローグライク、ローグライトファンの方にもプレイして頂けたらいいな、と考えています。

――過去作にあった夜のダンジョンや技といった要素は今回もあるのでしょうか。

篠崎:
今回は昼夜や技といった要素は実装していません。すでに発表している通り本作では「原点回帰」を中心に考えています。このシレンの本質の面白さ、といった部分を見直していった中で、夜のシステムは今作には不要という判断を致しました。

――今回の試遊の中で、海賊に関連するイベントが発生しました。仲間システムなどは登場するのでしょうか。

篠崎:
今回は他キャラへの操作切り替えなどはありません。ただ、シナリオを進めていく中でプレイヤーと同行するというシステムはあります。

Nintendo Directの告知映像の中にはアスカの登場シーンもありましたが、ダンジョンの中を徘徊しているアスカに話しかけると仲間になってくれるという従来の仲間のなりかたと同じです。


――今回の試遊で敵が巨大化する「デッ怪」システムを拝見させていただいたのですが、巨大化した敵を倒すメリットはあるのでしょうか。また、どのようにゲームプレイに絡んでくるのでしょうか。

櫻井:
実は、倒すメリットはありません。このモンスターは強くて倒せないからここは避けて歩こう、とダンジョンを回る順番を考えるような仕掛けとして導入しています。 

篠崎:
「デッ怪」モンスターはHP自体はあまり多くなく、まったく歯が立たない相手というわけでもありません。前と横はバリアを張っていてほとんど攻撃が通らないのですが、弱点となるような道具で攻撃すると比較的簡単に倒すことは可能です。

倒せる…んですが、攻撃力はとても高いため、そこで油断していると次の「デッ怪」が出てきてサクッと殺された……といったこともありますので油断は大敵だと思います。
櫻井も話している通り、倒すメリットはありませんので、一歩引いて、いつもと違う順番で回ることを考えたり、次はこっちに「デッ怪」がでそうだから、こっちに行っておこうか、といった作戦を考えつつ遊んで頂けたら嬉しいです。

――本作のグラフィックは久しぶりにドット絵から3Dポリゴンに変わりましたが、こだわりポイントを教えていただきたいです。

櫻井:
私はディレクターという役職ですが、実はグラフィックチーフでもありますので、こだわりがあります。今回は3Dを採用していますが、前作までのドット絵であったことでのグリッド上の操作感は壊さないことは大前提に考えました。本作はほぼ真上に近いところから見下ろすようなスタイルですが、シレンや敵の顔がちょっと見えるような絶妙な角度を模索しました。


また、道中のロケーションにもこだわっています。探索を進めるごとに景色が変わっていくというのはモチベーションの維持にも繋がると考えており、「ここまで来たんだ」と感じられるよう贅沢に3Dを使っています。

篠崎:
ダンジョンはずーっと潜っていると、どうしても絵が変わらず地味になりがちです。もちろん背景は変わっているのですが…。ただ今回のストーリーは「とぐろ島でお宝を探す」という設定になっています。途中でアップダウンがあり、さまざまな背景や街並みが続くことで「ここまで来たんだなぁ」ということを感じさせつつ、ボスまで楽しんで進んで頂けたらと思います。

『シレン』はよくコアなユーザーから「メインシナリオはチュートリアル」なんて言われていると認識しておりますが、コアなユーザーの皆様にはまずそのメインシナリオをしっかりと楽しんでいただいて、クリア後のダンジョンをゆっくり楽しんでいただければと思います。

――『不思議のダンジョン』シリーズは階層や条件の異なるダンジョンが多数用意されていますが、過去作に比べてボリュームはどのように変化していますか。

櫻井:
ダンジョン数としては、ニンテンドーDS頃の『4』や『5』などの移植を除いたナンバリングタイトルに比べれば増えています。

篠崎:
最終調整中ではありますが、総数としてはクリア後ダンジョンも含めて15から18ダンジョンくらいを想定しています。

――発売前に体験版の配信予定はありますか。また、開発進捗はいかほどでしょうか。

篠崎:
体験版は、現在のところ予定はありません。開発進捗についてですが、現在98%ほどのところまで進んでおります。あとはデバッグやバグ修正、一部の最終的なバランス調整などを残すところになっていますので、1月25日の発売日に関しては問題ないと考えています。

――初めて『不思議のダンジョン』を知るユーザーと、コアなユーザーそれぞれに向けてのコメントをお願いします。

篠崎:
モンスターや罠などが出現したときなど初めてのことが起こった際にチュートリアル画面が出るようになっています。熟練のシレンジャーの方々であれば飛ばしていただいても大丈夫だと思うのですが、初心者の方はこれを読んでいただければ本作への理解を深めていっていただけると考えております。またこれらの一度見た説明は、ゲーム中いつでも見ることができるようになっています。気になったら即確認、といったことができますので、もし読み飛ばしてしまったとしてもあとでも確認ができます。今作がシレンシリーズ初めてという方はこういった機能を活用して是非とぐろ島の最奥部まで到達しとぐろ島の怪物を退治して頂けたら嬉しいです。


コアなユーザーに向けては、ショートカットボタンに4つまで設定できるようにしたり、矢以外に杖も設定できるようになっていたり、方向転換のときにシレンから直線が伸びて大部屋探索の際にもちゃんと敵が同軸にいるかわかったり、マップ上で歩いた場所がわかるようになっていたり、他にもとても細かい点ですが、プレイヤーがより遊びやすくなることを考えて手を入れておりますので、ぜひプレイして確認していただきたいです。

また、「ライブ探索表示機能」についても壺の中身等表示される内容を改善しており、より使いやすくなったのではないかと思っています。

そのほか、手帳という要素も用意しております。これは道具の値段やモンスター情報などのデータをゲーム内で確認できるようになりました。ゲーム内で簡単に確認できるようになったことで、初心者でも上級者でも快適に遊んでいただけるのではないかなと思います。


今作は、特にメインのシナリオについては、武器や盾を鍛えて、しっかり準備をして挑むぞ!という感じではなく、毎回新たな気持ちで手ぶらで挑むような、初代『風来のシレン』のような気軽さを考えています。うまく育てた装備品をロストしてしまい、しばらくプレイしない…と相当なショックを受けた………という話を聞いたことがありましたが、今回はより気軽にプレイして頂けたらと思います。それでも鍛えた武具を失ったらショックですが…。

1プレイごとにここまで行ってみようというような軽い気持ちで楽しめるようにしていますし、死んでしまってもサブシナリオがどんどん進行していきます。目標を徐々に伸ばしてどんどん進めてもらうことで、プレイヤーのスキルや経験が積み重なっていき、気が付けば先に進めるようになっていた、というように楽しんでいただければと思います。

――ありがとうございました。

『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』は、Nintendo Switch向けに2024年1月25日発売予定だ。本作の先行プレイからわかった魅力については別途先行プレイレポートを掲載しているので、そちらをご覧いただきたい(関連記事)。

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Mio Tsukuru
Mio Tsukuru

ゲームの歴史が好きなフリーライター。FPSやADVを主食とし、新旧コンソールゲームからPCゲームまで気になるゲームを幅広く遊ぶ。Nintendo Switchでレトロゲームを買い漁るのが趣味。

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