狩猟アクションRPG『Atlas Fallen(アトラスフォールン)』は、実は『モンハン』と全然違う。砂塵狩りゲーの内容を紹介

 

「大型のモンスターとの死闘と駆け引き」、「装備を組み合わせたビルド構成」、「武器を使い分け部位破壊を狙うバトル」この紹介を聞いて大半の人の頭によぎるのは『モンスターハンター』シリーズではないだろうか。『Atlas Fallen(アトラスフォールン)』は、“ハンティングアクション”のとおり『モンハン』の影響を感じさせる要素が見受けられる。しかし実際は方向性が異なる。広さや奥行きには欠くものの、「砂」をモチーフにした世界観とアクション要素を味わうことができる作品だ。


本作はDeck13 Interactiveが開発し、Focus Entertainmentが発売を行うアクションRPG。PS5版日本国内でのパッケージ販売はセガが担当している。今回は先行して同作の遊ぶ機会をいただいたため、本記事では『Atlas Fallen』の内容を紹介しよう。あわせて、本作が『モンスターハンター』とどう違うのかに焦点を当てていく。なお本稿に記載しているスクリーンショットは英語のものであるが、製品版は日本語でプレイ可能だ。

舞台への没入感は際立つが、基本的に進行はリニア

舞台となるのは、神の怒りによって文明が失われつつあるポストアポカリプスな世界。その影響で辺り一面が砂だらけになっている。物語は、過酷な状況に身を置きながらも懸命に生きていた主人公が、ニャアルという存在が取りついたガントレットを偶然見つける場面からはじまる。ガントレットは砂を操りさまざまな武器へ形を変えることができ、「レイス」と呼ばれる強大なモンスターたちを狩猟する力を得たことで、主人公と世界の運命が動き出すという導入だ。


メインストーリーは世界のどこかにあるガントレットの強化パーツを集め、「ダブルジャンプができるようになる」、「砂を隆起させられるようになる」というフィールドアクションを強化するのが目的となる。それによって行ける範囲が増えていき、徐々にゲームを開拓する楽しさを見つけられる。移動方法も「砂」というモチーフを活かしており、砂がある場所であればサーフィンのように滑ることが可能。『Marvel’s Spider-Man』のようにフィールドでの移動自体に楽しさを付与し、プレイヤーが飽きにくい工夫がされている。また一目見ただけでは分からない山の頂上や建物の裏に、素材やジャーナル(読み物)が隠されており、探索へのモチベーションとメリハリを生んでいる。たびたび訪れることになる各地の集落のサブクエストとあわせ、世界観のフレーバーの補強として機能していると言える。


ただメインの添え物として探索があるのではなく、クリアに必須な要素として配置されているため、そのリニアな体験からプレイヤーによってはゲームに“誘導されすぎている”と感じる人もいるかもしれない。そしてクリア後に楽しめるようなエンドコンテンツもなく、15時間ほどでクリアできるボリュームだ。サクッとプレイできてうれしいと思うか、やりこみ要素がなく物足りないと思うか、このコンパクトな体験の是非は人によって分かれるだろう。

戦略的にパリィを駆使するアクションは楽しい

次はモンスターとのバトルについて。バトルでは、ガントレットは武器としてメインとサブの計2種が設定でき、隙は大きいが攻撃力が高い斧、蛇腹のように伸び縮みする剣など個性豊かな獲物を手に敵へと立ち向かう。まず敵と戦う上で『モンハン』と異なる点として、バトルが拠点でのクエスト受注制ではないことだ。


世界を思うままに駆け巡り、その道中に強大な敵が点在しており、どちらかというとオープンワールドではないフィールドが大きめの一般的なアクションアドベンチャーゲームのような形に近い。たとえば目的地へ辿りつくために砂漠を渡っていたら突然画面が暗転し、ボスのフィールドに引きずり込まれるというようなシチュエーションなどが存在する。つまり『モンハン』はバトルというコンテンツに内包する形で探索要素が用意されているが、本作はバトルはウリではあるがメインに据えられているわけではなく、舞台を冒険する上での起伏として機能している。

バトルは美麗なエフェクトや派手な操作感でスタイリッシュではあるが、ハイスピードではなく、どちらかというと“重さ”を感じさせるアクションである。攻撃が苛烈というのもあるが、プレイヤー側から積極的に仕掛けるのではなく、相手の隙をうかがうスタイルだ。それを強調するのが、バトルの一番の特徴である「パリィ」だろう。


本作には敵からのダメージを防ぐ手段として回避とパリィが用意されており、赤いオーラを纏った攻撃はパリィ可能だが、青い大技は回避するしかないという仕様で、片方の使い勝手がよすぎてどちらかが使われないということにはなっていない。なかでもパリィは成功させるリターンが大きく、雑魚敵は1回、大型敵は3回ほどパリィを行うと「結晶化」という全身が白くなり動きがストップする。パリィの受付時間が長いことも相まって、バトルにおいてプレイヤーを大いに助けてくれる。『モンスターハンター』は緊急回避やフレーム回避など回避を基本にしているが、本作のバトルはパリィを軸にしていると言えるだろう。

カスタマイズ要素が豊富で、自分なりのビルドを構成できる

もう1つの『モンスターハンター』との比較はカスタマイズ要素によるビルド構成の面について。本作はガントレットに「エッセンスストーン」をはめ込むことによって、プレイヤー独自の効果を生み出すことができる。エッセンスストーンには必殺技とパッシブ効果の2種があり、レアリティに応じてTier1~3までの3段階に装備できる。『モンスターハンター』の最近の作品のビルドは、能力を発揮するためにスロットや装飾品を考慮し、細かく防具の構成を考えなければならない。しかし本作は武器にエッセンスストーンを組み合わせるだけで簡単に試行錯誤できるのもポイント。

エッセンスストーンに付属するアビリティは、「モメンタム」という攻撃を当てることで溜まるゲージに応じて発動。全3ゲージあり、たとえば1ゲージ目に差し掛かればTier1に設定した必殺技とパッシブ効果が使えるのだ。モメンタムは溜まることで武器が巨大化し威力も増していくが、受けるダメージも比例して大きくなる。全消費することで強力な特殊技「シャッター」も使えるため、バトル中どのタイミングでモメンタムを吐き出すかという駆け引きが生まれており、素直に面白いと言える要素だ。


エッセンスストーンはクエストや強敵を倒したときの報酬として入手できる。大型モンスターに遭遇すると、画面左上に赤とオレンジで部位が表示され、赤色の箇所を全て破壊すると狩猟できる。オレンジ色の部分は破壊しなくてもよいが、壊すと手に入るエッセンスストーンのランクが上昇する仕様だ。先述した豊富なカスタマイズ性のおかげで理想のビルドを求めて各地の敵を倒すという動機付けができている。本作のモンスターからは角や鱗は剥ぎ取れないが、装備品やその強化素材を落とす。どんどん狩っていこう。


しかし上記のビルド構成の面白さに反する要素として、防具にレベル上限を設けた点が気になった。防具は素材を使用して最大までレベルを上げると、それぞれ「アビリティのクールダウンを減少させる」、「攻撃してきた相手を減速させる」といったユニークなパッシブ効果を発現する。しかし防具には初期レベルと上限レベルが定められているのが難点で、いくら自らの戦略に合った効果を選ぼうとしても、それが序盤の防具だとパラメータが低すぎてバトルに勝てなくなってしまう。そのためパッシブ効果関係なく、最終盤で入手できる防具を装備する以外の選択肢がない。ビルド構成も魅力の作品のため、防具に対しても目線を向けてほしかったと惜しく思う。

本稿を通して『Atlas Fallen』と『モンスターハンター』の比較を行ったが、改めてどこが違うと問われれば「全部」と答える。リニアなゲーム進行やパリィを主体としたスタイリッシュなバトル、ビルド構築のハードルの低さなど、同じハンティングアクションというジャンルながらそれほどまでにゲームの方向性が異なるのだ。そのため、本作に『モンスターハンター』のような狩猟体験を期待して購入すると肩透かしを食らうだろう。

だが冒頭に記載した「大型のモンスターとの死闘と駆け引き」、「装備を組み合わせたビルド構成」、「武器を使い分け部位破壊を狙うバトル」というハンティングアクションの肝を咀嚼し、アクションRPGを軸に調理したタイトルに仕上がっている。この年末年始にプレイするタイトルを悩んでいる人はぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。『Atlas Fallen』は、PS5/Xbox Series X|X/PC向けに発売中。国内ではセガからPS5パッケージ版が発売されている。