『PUBG』をプレイした罪でインドの若者16人が逮捕。ゲームが「モモ自殺チャレンジ」同等に危険視されてしまった背景とは

今月3月12日以降、インド西部グジャラート州の都市であるラージコートで、ゲームを理由にした逮捕が相次いでいる。ラージコート警察は、今日までに少なくとも16人を逮捕したと発表している。逮捕は連日にわたって繰り広げられており、今後も逮捕者が増えることが予想されている。──彼らの罪状は“『PUBG』をプレイした罪”だ。

 

『PUBG』をプレイして逮捕される若者たち

悲劇のはじまりは、今週の火曜日だった。ラージコート警察は『PUBG MOBILE』をプレイしたとして、まず6人を逮捕した。ラージコート警察のV S Vanzara捜査官によると、6人は特別捜査を遂行中のN D Damor捜査官補によって、大学に面したカラバッド通りにあるカフェおよびファーストフード店で、ゲームをプレイ中のところを逮捕されたようだ。警察は『PUBG MOBILE』がプレイされていたか確認するため、スマートフォンのプレイ履歴と通話履歴を調べたという。Vanzara捜査官によると、6人は既に保釈されたとのことだ。

同日、夕刻。大学警察が同じくカラバッド通りの近くで、『PUBG MOBILE』のプレイを理由にサッタバザールに住む25歳を逮捕。この時点で逮捕者は7人であった。翌未明。ラージコート・スペシャル・オペレーショングループ(ラージコートSGO)なる特殊部隊が、警察本部近郊で『PUBG MOBILE』をプレイ中の3人を逮捕した。プレイに使用されたスマートフォンは捜査のために、その場で押収され、3人はそのまま拘留された。逮捕された一人は市内の民間企業で働いており、一人は臨時雇用労働者、一人は求職中だったそうだ。

ラージコートSGOのRohit Raval捜査官は逮捕時の様子について、海外メディアIndianExpressの取材に対し、「このゲームは中毒性が高いからね。容疑者たちはプレイに夢中で、我々のチームが彼らに近づいていたことに気づきもしなかったよ」と得意げに語っている。Raval捜査官は前述の3人について、現在は保釈手続中だとしている。

この時すでに『PUBG』による逮捕者は、たった2日間で10人にのぼっていた。逮捕されたうち6人は学生だったという。ラージコート警察署長Manoj Agrawal氏は、その時点で12件の事件が起きているとしていた。

画像参照 Wikipedia

翌日の深夜。ラージコート警察はさらにアティティ近くの平屋建ての家屋で『PUBG MOBILE』をプレイした容疑で6人を逮捕した。容疑は、公務執行妨害およびグジャラート州警察法の35条違反となっている。木曜日の日中に立件され、深夜にもかかわらず屋内まで踏み込まれたようだ。警察当局は6人は既に保釈したと伝えている。6人は学生と社会人の混成グループだったが、いずれも18~22歳の若者であった。

 

『PUBG』は「モモ自殺チャレンジ」と同じだという暴論

そもそもなぜ、このような逮捕劇が起きてしまったのだろうか?IndianExpressによると、逮捕劇の1週間前となる3月6日、グジャラート州で条例に従い『PUBG』を禁止する通達がだされたことが悲劇の原因のようだ。わずか3日で猛威を振るった禁止通達は、“『PUBG』が素行や品行、言動に悪影響をあたえる”との懸念からだされたという。

驚くべきは、『PUBG』を禁止する通達が同時に、悪名高き「モモ自殺チャレンジ」を禁じていることだ。「モモ自殺チャレンジ」とは、「モモ」という謎の存在が子供たちを自殺に駆り立てているという悪質な噂話だ。もちろん「モモ」なる存在はこの世には存在しないし、「モモ」とされる不気味な画像は、日本の造形家である相蘇敬介氏の作品である「姑獲鳥」であり、若者の自殺とはまったく無関係だと判明している。相蘇氏にとってはとんでもない風評被害である。いまとなっては噂がデマであることは明白だが、この不穏な噂話は「モモ」の不気味な容姿とともに、SNSで瞬く間に世界中に広まってしまった。

問題は、この噂の中で「インドで2人の青年がモモ自殺チャレンジによって死亡した」などと流布されてしまったことだ。インドの警察当局が、この卑劣な「モモ自殺チャレンジ」を禁止する通達をだすことは、ある程度合理性があるといえる。一方で、同時に禁止された『PUBG』というゲームは「モモ自殺チャレンジ」と同列に扱われるほど悪質なものなのか、という疑問が浮かぶのだ。「疑問」ではなく、「憤り」と言い換えてもかまわない。

 

『フォートナイト』は無実という矛盾

海外メディアAndroid Authorityによれば、グジャラート州では『PUBG』以外のバトルロイヤル・シューティングは合法なのだという。つまり『フォートナイト』も『Apex Legends』も、その他のスマートフォン向けのPUBGクローン・シューターも、なんの問題もないのだ。
『PUBG』だけが「若者の異常な言動を招く恐れがある」といわれても、とても合理性がある意見とはいえないだろう。とんでもない言いがかりである。
しかも『PUBG』を禁じているのはグジャラート州だけで、ほかの地域では『PUBG』は合法だというのだ。なぜ『PUBG』だけが標的にされたのか、首をひねらざるを得ない。

 

背景にインドの『PUBG MOBILE』人気?

なぜ『PUBG』だけが目の敵にされているのか。ここからは筆者の推測でしかないのだが、インドにおける『PUBG MOBILE』人気が背景にあるのではないだろうか。インドでいま最大のシェアを誇るスマホメーカーは、中国のシャオミだ。シャオミは中国国内で「安物ブランド」のレッテルを貼られて以降、2015年に急激にシェアを失っていたが、近年V字回復を成し遂げている。その原動力になっているのが、ほかならぬインド市場である。

インドのスマホ市場というと「安価で低下価格なスマホしか売れない」というイメージだろう。しかし、シャオミはそのインド市場に昨年、当時最高スペックのSOCと、発熱を防ぐための冷却パイプを備えたハイエンド・スマートフォン“Pocophone F1”を投入し、大きなヒットを飛ばしている。Pocophone F1は日本円で4万円以下という低価格ながら、他社の10万円のスマホにも劣らない性能で、『PUBG MOBILE』が最高画質でプレイできるということでも話題を呼んだ。YouTubeのPocophone F1関連動画の大半が同作をプレイする様子を映し出すほど、それはまるでインド国民に与えられた『PUBG MOBILE』専用スマホといった有様だった。裏を返せばそれは、インド国民がいかに『PUBG MOBILE』に夢中になっていたかの証左だろう。その勢いがシャオミのインド市場制覇に、少なからず影響したであろうことは想像に難くない。

若者の流行は、往々にして危険視される。皮肉にもインドの『PUBG MOBILE』人気が、今回の悲劇を招いてしまったのではないだろうか。いうまでもないことだが『PUBG MOBILE』は、17歳以上を対象年齢に指定している。今回のグジャラート州の対応は、明らかに過剰反応だ。グジャラート州当局が、いちはやくこの行き過ぎた通達を取り消してくれることを願うばかりである。

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