『ディビジョン2』特典の「保管庫追加スペース」は最大容量の増加を意味しない。発表当初の宣伝とは異なるニュアンスに

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ユービーアイソフト株式会社は3月4日、『ディビジョン2』アルティメットエディションの購入特典に含まれる「保管庫追加スペース」の定義をツイッター上で説明。「保管庫追加スペース」とは、保管庫の最大容量が増えるわけではなく、「プレイ開始時から+50の保管スペースが解除されること」であると、特典の具体的な内容を明かした。ゲーム内でのキャラクターアップグレードにより得られる最大容量は、どのプレイヤーも150スペースで変わりない。

 

容量増加ではなく早期解放

2月27日に公開された海外FAQでも、特典内容の「Additional Stash Space」は、序盤から通常よりも多くの保管スペースをアンロックできることを意味すると解説されている(unlock extra spaces in your stash early in the game)。通常のプレイヤーは保管庫スペース50の状態でゲームをスタートするが、アルティメットエディション購入者は保管庫スペース100から始めることができる。厳密に言うと、通常プレイヤーは、SHDテックを消費することで+20、+30、+50と保管庫スペースを増やしていくことになるが、アルティメットエディション購入者であれば、本来レベル30に到達しないとアンロックできない保管庫の+50スペース追加アップグレードを、レベル1の段階から解除できるのだ。SHDテックを消費することなくアップグレードを解除できるため、その分のSHDテックをほかのアップグレードに割り当てることができるというメリットも生じる。

また最大容量を増やすという意味でのスペース追加については、マネタイズ要素として提供する予定はないとも説明されている。もしもローンチ後のコンテンツ追加により保管庫スペースが足りなくなり、プレイヤーのゲーム体験が損なわれるようであれば、無料アップデートとして必要な措置を講じるとのことだ。

 

当初の説明は「エンドゲームで役立つ特典」

ただし、2018年8月にアルティメットエディションが発表された当時は、最大容量を増やすという文脈で「保管庫追加スペース」および海外表記である「Additional Stash Space」(マイクロソフトストア)が使われてきた痕跡がある。

プレイする過程で大量のアイテムを入手することになる本作のようなハックアンドスラッシュ系のゲームにおいて、アイテムを何個まで保管できるか、というのは重要なトピックである。初代『ディビジョン』においても、リリース当初の保管スペース数70が少なすぎたことから、アップデートにより150にまで増加している。

『ディビジョン』『Destiny』『Warframe』『Anthem』などのハックアンドスラッシュ系の作品を中心としたゲームのロングレビュー動画を投稿しているSkill Up氏は、ゲーム体験に直結する保管スペースを、アルティメットエディションの特典として提供するというのは、本作が売り切り型のタイトルであることを踏まえると、好ましくないマネタイズ手段であるとして発表当時から問題視していた。保管庫スペースを追加する方法が、アルティメットエディションの購入以外に提示されていなかったため、なおさら大きな懸念材料となっていた。

そしてSkill Up氏は2018年8月、なぜ全プレイヤーに影響を及ぼす保管庫スペースをアルティメットエディションの一部として提供するのか、Ubisoftに問い合わせている。その回答は、「アルティメットエディションは、もっとも熱心なプレイヤー層を想定して設けられたものであり、そうしたプレイヤーがエンドゲームにおいて有益と感じるアイテムを特典として含んでいます。たとえば、保管庫の追加スペースのように」というものであった。

エンドゲームにおいて有益なアイテム、という趣旨から考えると、「プレイ開始時から+50の保管スペースが解除される」という早期解放はあまりに無意味であり、違和感のある特典内容と言えるだろう。エンドゲームにたどり着くころには、最大容量まで保管庫スペースをアップグレードし終えているはずだ。

ほかにも、本作のライブコンテンツ・マネージャーであるYannick Banchereau氏は2018年8月、アルティメットエディション購入者に限らず、全プレイヤーにとって十分な保管庫スペースを提供するつもりであり、特典はあくまでも、多くのアイテムを保管しておきたい人のためのボーナスであると説明していた(Kotaku)。いずれも、保管庫の最大容量増をアルティメットエディションの特典として提供することに対する懸念、およびそれに対する回答としての発言となっている。特典の意味するところが容量増加ではなく早期解放なのであれば、単純にそれを伝えることで懸念を払拭することはできたはずだ。

こうした経緯から察するに、当初は最大容量の増加という意味で「保管庫追加スペース」と記載していたが、途中でその定義を変えたのではないだろうか。上述したように、海外でも最大容量が増える特典として解釈されていたことから、単なる日本語の表記ミスというわけではなさそうだ。

 

内容が不確かな特典

特典内容の発表当時、「保管庫の最大容量を増やすためには追加料金がかかる」という点が問題視されていたことを考えると、「保管庫スペースの早期解放」にとどめるという特典内容は、ひとつの妥協点とも言える。製品版への先行アクセス権や、シーズンパスに含まれるDLCへの先行アクセス権・即時アンロック権のように、ひと足早くコンテンツをアンロックする類の特典に入るだろう。

先日発表されたYear1シーズンパスの内容

ただ、「保管庫の最大容量を増やすためには追加料金がかかる」という批判の種を取り除いたことで、購入特典としての価値が下がっていることは否めない。過去の発言を通じて宣伝していた内容と、実際の製品内容が異なるという問題も浮上している。保管庫の最大容量を増やす特典だと思って予約価格1万4000円台のアルティメットエディションを購入したユーザーもいるはずだ。Ubisoftは2018年8月当初、最終的な保管スペース数は調整中であると説明していた。つまり具体的な特典内容も決まっていなかった。内容未確定の状態で特典を発表したことが、最終的に負の結果を招いた事例と言えるだろう。

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