DLCを出すと「ゲーム本編の販売ペースが約2倍にブーストされる」との研究結果。プレイヤーにも嬉しい“DLC好循環”いろいろ

DLCをリリースすることによる影響は、DLC単体の収益獲得にとどまらないようだ。

カリフォルニア大学バークレー校のZi Yang Chen氏を筆頭著者とする研究チームは6月3日、論文「Reviving Durable Digital Goods」を発表した。DLC(追加コンテンツ)をリリースすることにより、DLC単体の収益獲得にとどまらず、ゲーム本編の販売ペースが約2倍に高まるほか、アクティブユーザー数やレビュー数も上昇するといった広範なメリットをもたらす傾向が示されている。

デジタル配信の普及により、業界ではゲーム本編の発売後にDLC(追加コンテンツ)をリリースすることも主流となっている。現にDLCの販売による直接的な収益については、市場全体の7%~13%を占めるとの研究結果が出ている(Newzoo)。一方で、DLCのリリースがゲーム本編の販売本数やプレイヤー数にどのような影響を及ぼすのかは明らかになっておらず、また開発者がバグ修正などに努めようとする意識がDLCのリリースに伴ってどのように変化するのかも十分に研究されてこなかった。そこで研究チームは、上述した2つの観点でDLCリリースによる効果を調査することにしたそうだ。

同研究ではSteamで販売されているPCゲームが対象になっている。Steamの公開APIおよびサードパーティの統計サービスGamalyticから取得した、2023年1月1日から2024年9月8日までの日時データを利用。Gamalyticの収益ランキングで上位1万本の有料ゲーム本編と、それらのDLC約2万2000個を抽出し、そこから楽曲やデジタルアートブックといったゲームプレイに影響しないDLCを除外して分析対象としている。なお、最終的に分析対象となったDLCのうち、約16%は無料で配信されたものだったという。

分析においては、DLCをリリースしたゲーム179タイトルに対して、DLCをリリースしていない1233タイトルが対照群として用意された。発売日が30日以内かつ定価が20%以内の誤差であることに加えて、少なくとも1つのジャンルタグが共通していること、マルチプレイの有無が一致していることなどが選定の条件となっている。

また、DLCのリリースがゲーム本編の販売本数やゲームのメンテナンスにもたらす影響をそのほかの要因から切り分けるために、「二元配置固定効果モデル(TWFE)」という手法を採用。これにより、価格、割引率、Steamストアでの告知回数などを考慮しつつ、ゲーム固有の特性や市場全体のトレンドを制御し、DLCのリリースによる効果の推定を試みている。さらに、ゲームごとのDLCのリリース時期のずれによる影響を排除するため、「Imputation-based counterfactual estimator(インピュテーションに基づく反事実推定量)」と呼ばれるアプローチを主に使用し、DLCを出した際の効果をより正確に計測することを目指している。

Image Credit: Zi Yang Chen et al. in “Reviving Durable Digital Goods

分析の結果、DLCのリリース後にゲーム本編の販売本数が急激に増加し、リリース2日後には約3.48倍に到達。その後2週間をかけて徐々に落ち着くものの、これはリリース後の30日間の平均で、ゲーム本編の販売本数を103%分上乗せさせる効果に相当するとのこと。つまり、DLCをリリースすることで、1か月間にわたって約2倍の販売本数増加が見込めるということだ。また日ごとの平均アクティブユーザー数は約64.7%~72.8%増加し、レビュー数も44.1%~50.1%増加するとのこと。平均して高いエンゲージメントの向上が確認できる。そして、DLCのリリースにより、開発者がバグ修正等のアップデート告知をおこなう確率は平均11.4パーセントポイント増加するそうだ。DLCのリリースに際して開発者は、ゲームの品質維持も積極的におこなおうとする可能性もうかがえる。

ちなみにこれらは有料DLCと無料DLCをあわせた分析結果。無料DLCに絞った追加分析では、最初の1週間は販売本数の増加傾向が見られるものの、発売後30日間では有意な効果は確認されなかったという。また、開発者がバグ修正等のアップデート告知をおこなう確率は最初の1週間でむしろ低下、発売後30日間ではこちらも有意な効果が確認できなかったとのこと。

研究結果を踏まえて研究チームは、DLCが単なる追加の収益源となるにとどまらず、ゲーム本編の販売本数やプレイヤー数、レビュー数などを増加させることで、製品寿命を延ばす働きがあると結論づけている。加えて、DLCがリリースされる作品では、開発者のバグ修正等のアップデートが活性化する傾向も確認されており、ユーザーからの信頼獲得やブランド価値向上といったメリットもあるとしている。そして、DLCのリリース時期を最適化することで、ゲーム本編の販売本数増加の効果をさらに高められる可能性があるとも述べており、プレイヤーのフィードバックをもとにした改善をDLCのリリースとあわせておこなうべきといった提言をおこなって論文を締めくくっている。

ちなみに、今回の研究では対象外とされているが、サウンドトラックやサポートパックなどの小型DLCはほぼ確実に利益を生むため、積極的に販売したほうがよいといった知見もアナリストにより共有されてきた。こうしたDLCでは、制作コストの低さやユーザーの反発の少なさから、堅実に追加収入が見込めるそうだ(関連記事)。DLCには、開発者にお金を払いたいという熱心なファンがお金を投じる先としての役割もあるのだろう。

いずれにせよ、今回の研究結果では、DLCのリリースがゲーム本編の販売本数増加をもたらす可能性が示された。DLCの展開は既存のプレイヤーだけでなく、新規購入者にも訴求する機会となりうることが垣間見える結果だろう。加えて、アクティブユーザーの維持やパッチ配信の継続など、開発者とプレイヤーの双方にメリットをもたらす可能性も示唆された。特に近年ではゲームの供給過多により、何年もかけて開発した作品であっても大量の新作の中で埋もれてしまうケースも少なくない(関連記事)。DLCをリリースすることは、注目を浴びるチャンスを複数回創出するという意味でも、理にかなった戦略なのかもしれない。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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