エイリアン逃避サバイバルホラー『エイリアン アイソレーション』が突然人気再燃。「“賢くなっていく”AI搭載バケモノ」再評価の流れ


Creative Assemblyが開発を手がけ、セガが発売した『Alien: Isolation(エイリアン アイソレーション)』。本作は2014年にリリースされた作品だが、今となってプレイヤー数が増加。さらに敵AIなどの賢さなどが再評価されているようだ。

『Alien: Isolation』は、映画「エイリアン」シリーズの世界観を基にした一人称視点のSFサバイバルホラーゲームだ。セガ傘下のCreative Assemblyが開発し、国内向けには2015年にPS4/Xbox One向けに発売。2019年にはNintendo Switch向けにもリリースされた。PC向けにはEpic GamesストアおよびGOG.comにて配信されている。


突如盛り上がる『Alien: Isolation』

『Alien: Isolation』は、映画「エイリアン」を題材とした、SFサバイバルホラーゲーム。プレイヤーはエレン・リプリー(映画版の主人公)の娘であるアマンダとなり、恐怖に満ちた宇宙ステーションを探索。行方不明となった母を探し求める中、ノストロモ号事件の真相に迫っていく。しかし、宇宙船の内部はエイリアンが巣食っているため、エイリアンの餌食にならないよう、船内から脱出しなければならない。

本作の主人公アマンダは優秀なエンジニアであり、ゲーム内では特殊なガジェットを用いることができ、スクラップを利用してのアイテム作成も可能だ。一方、エイリアンには銃弾が効かないなど、対抗手段は限られている。また、暴走したアンドロイドや疑心暗鬼に陥った人間たちも出現する。そんな脅威から逃れつつ、生き延びることとなるのだ。


そんな本作は約10年前にリリースされたこともあり、SteamDBによればここ数年は同時接続プレイヤー数が400人前後で推移していた。しかし今年8月中旬からプレイヤー数が上昇。特に8月18日にはピーク時で1839人を記録。本稿執筆時点でも、ピーク時では連日1000人を超えている。

今再び本作が人気を博している理由としては、映画「エイリアン」シリーズの最新作となるスピンオフ映画「エイリアン:ロムルス」が海外にて公開されていることがあげられるだろう。「エイリアン:ロムルス」も『Alien: Isolation』と同様、初代「エイリアン」と「エイリアン2」の間の物語が描かれている。そうした舞台設定の近さも相まって、改めて本作をプレイしようと思ったユーザーも多かったのかもしれない。

そして再び注目を集める“人間っぽい”AI

またこの盛況にともない、ゲーム内の要素にも注目が集まっている。本作ではエイリアンがAIシステムに基づいて行動するのだが、それがとても“賢い”と評価されているのだ。


ゲームレビューなどをYouTube上で公開しているMischiefs氏は、あるユーザーが本作のエイリアンの挙動について、「stalks you, baits you, the perfect organism(追跡しおびき寄せる、完璧な生物だ)」と評した投稿を引用。本作のAIは、まるで他のプレイヤーが操作しているようにすら見える、とその“リアルさ”を高く評価している。


なお元AI研究者で、現ゲーム開発者のTommy Thompson氏が運営するYouTubeチャンネルAI and Gamesでは、過去2016年に、本作のAIについて分析する動画が投稿されていた。動画は、AIがどうゲームを改善しているか、ゲームがAIをどう利用しているかをテーマとしており、そこでは『Alien: Isolation』のAIについても語られている。

行動を左右する、2種類のAI

動画によれば、本作のエイリアンは「マクロAI(director AI)」と「ミクロAI(alien AI)」のふたつのAIで行動を管理しているという。マクロAIでは、ゲームプレイを通じてプレイヤーの動きを常に観察。ミクロAIは、具体的なエイリアンの動きを司るAIだそうだ。

マクロAIは定期的にミクロAIに対し定期的にプレイヤーの方向を教えるという。とはいえ、ミクロAIはプレイヤーの位置を常に把握しているわけではない。エイリアンはそうした情報を受け取り、独自の判断基準によって行動する。


そしてゲーム内で「プレイヤーが死につながる出来事以外」の特定の条件が満たされていくと、エイリアンの新たな行動様式が解放される。そのためプレイヤーがどんどんゲームを進行させていくにつれ、エイリアンもどんどん新たな行動を会得していく。これによってエイリアンはゲームの中で、プレイヤーの行動に応じて “経験からの学習”をしているように見えるわけだ。

なおエイリアンが“学ぶ”条件からプレイヤーの死に繋がる出来事が除外されている理由としては、本作でプレイヤーは頻繁に死ぬことになりやすく、死ぬたびにエイリアンが賢くなっていくのを避けるためだそうだ。ただ、そうしたプレイヤーへの配慮もある一方で、特定の時点でエイリアンがそれまでに“学んでいない”行動がアンロックされる仕組みもあるという。つまり本作にはプレイ状況に関わらず、エイリアンが問答無用でさまざまな新行動を会得するタイミングがあるようだ。

このほか、エイリアンは宇宙船を巡回するにあたっては、あらかじめ定められた優先順位や、AIがゲーム内で設定した優先順位にしたがって歩き回っている。その際には、ときおりプレイヤーを探して見つけるために、最高効率でない回り方もするという。またマクロAIは脅威ゲージ(the menace gauge)なるパラメータも管理しており、プレイヤーが適度に休憩できてゲームを進行できるバランスを実現しているとのこと。

加えて本作には、エイリアンが絶対に立ち入らないエリアも設定されているそうだ。ゲームプレイにおいてはテレポートやミクロAIがプレイヤーの位置を“透視”することもおこなっておらず、マクロAIの監視とミクロAIの“学習”を併せた「不公平な状況」が起きないように綿密にデザインされているようだ。


映画「エイリアン」シリーズの新作登場もあってか、にわかに再び注目を浴びた『Alien: Isolation』。本作ではエイリアンがプレイヤーの進捗に応じて“進化”していきつつも、突然AIがプレイヤーを見つけるような邂逅や、“効率が良すぎる”というような理不尽を起こさないように工夫されているようだ。こうした手法により、本作のエイリアンのAIはまるで「他のプレイヤーが操作している」かのようにリアルであると称されているのだろう。気になった人は改めて本作をプレイするなどして、エイリアンの“賢さ”の一端を体感してみるのもいいかもしれない。

『Alien: Isolation(エイリアン アイソレーション)』は国内ではPC(Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switch/PS4/Xbox One向けに配信中。