今こそ再評価のときか?迷作実写アドベンチャーゲーム『ワンチャイコネクション』を語ってみる

コマンド選択式のミステリーアドベンチャーゲームといえば、現在ではあまり見かけないスタイルのジャンルだが、ひと昔前はアドベンチャーゲームのスタンダードだった。『ポートピア連続殺人事件』『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』『探偵 神宮寺三郎』といった名作を挙げれば、リアルタイムでプレイしていなくとも、その名を知るゲームファンは多いだろう。

時代が90年代に入ると、ハードのスペック向上と共に、コマンド選択式アドベンチャーも徐々に変化を見せていく。特に、実写取り込みはミステリーとの相性が良く、映画や2時間ドラマを意識したシネマティックな作品は数多く発売された。

3DOの『西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件』や『山村美紗サスペンス 京都鞍馬山荘殺人事件』などは、前述したジャンルの中でも、マニアを中心に支持者も多い。個人的に実写取り込みのアドベンチャーゲームと言えば、『ブルー・シカゴ・ブルース』や『サム・ルパート殺人事件』なども印象深いタイトルだ。

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さて、ではここで今回の主役である作品にご登場願おう。そのタイトルは、セガから1994年11月22日に発売された『ワンチャイコネクション』。セガサターンのロンチタイトルの一本として、『バーチャファイター』『MYST』『麻雀悟空 天竺』らと共に登場した。

本作の名を聞いて、思わずニヤリとしたそこのキミとは、ぜひ友達になりたい。というのも本作は、一部のマニアの間では語り草となっているタイトルであり、多数のファンサイトも登場するほど根強い人気を持つ。セガサターンのオフ会が開催されたら、まっさきに話題になるのは本作なのだ。……たぶん。

では、「ワンチャイコネクション」とはいかなる作品なのか。前述の説明からもご想像に難しくないと思うが、システムは、至ってスタンダードなコマンド選択式のアドベンチャーゲーム。加えて、CD-ROMの特性を生かした実写ムービーも大きな特徴と言える。また、捜査の進行状況をパーセンテージで示しくれるシステムもあったりして、この手のタイトルにしてはユーザーフレンドリーだったりする。

ストーリーは、香港で起こった全裸女性殺人未遂事件を捜査するべく、敏腕刑事となって事件を解決に導くという、この手の作品としては、オーソドックスな内容。捜査のきっかけが、殺人「未遂」というのが珍しいと言えば珍しいかもしれない。

とはいえ、ゲームとしての評価は、お世辞にもいいとは言えなかった。単調なゲームシステムに、少ないボリューム。ウリであるはずの実写ムービーもザラザラで、美麗とは程遠い。そんなタイトルが、なぜマニアを生むほどのカルト作品になったのか。そこには、「ワンチャイコネクション」ならでは魅力が潜んでいたことが大きい。

まず、本作に出演している俳優陣だが、主人公の刑事「マイケル李」を布川敏和さん、事件の被害者であり記憶喪失の女性「麗燕」を杉本彩さん、そして、一部では真の主人公とも言われている捜査本部長を原田大二郎さんと、豪華な役者陣をそろえており、通にはたまらないキャスティングだったと、今ならばはっきり言える。

本稿を執筆するにあたり、数年ぶりにワンチャイをプレイしてみたのだが、ブログや個人サイトで語られているように、原田さんの演技がいい! 一発で記憶に残る存在感だ。女性に弱いマイケルに、意図的に今回の事件の担当を命じたり、若いころはブルース・リーに似ていたとかなんとかいって、「アチョー!」なんて言っちゃったりするあたりがなんともニクイ。いや、痛い。でもそれがいい。マイケルの真面目な性格も個人的には好きだし、容疑者と対峙して組み伏せるシーンも、それまでの頼りなさげなマイケルとのギャップを感じさせてくれる。

脚本はこれまでに数多くの脚本を手掛けてきたジェームス三木氏が担当。キャリアを持つ同氏が担当しているだけあって、ストーリーもなかなか引き込まれるものがある。仮に本作がドラマ化されていれば、また違った評価を得ることができたかもしれない。これは割と本気で思っていたりする。動画部分を繋げたビデオがあれば、ぜひ見てみたいものだ。もちろん画質は、当時のままで!

とまあ、いい部分を書いてきたが、苦笑を禁じ得ない部分も当然ある。キャストが思いっきり日本人なのに、名前がマイケルとかロバート林(ラム)とか、トーマス王(ワォン)とか香港テイスト満載な点。さすがにこれは違和感ありまくりだ。

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完全香港ロケとのことだが、そもそもなぜ舞台を香港にする必要があったのか。同じストーリーなら、日本でも可能だったのでは……といった疑問が当然よぎる。

この辺りは、機会があればぜひ当時のスタッフにインタビューしてみたい。難しいかもしれないが。

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しかしよく考えてみれば、キャラクターの名前に関しても、この違和感があるからこそのワンチャイコネクションと言えなくもない。キャラクターがどこか珍妙だったりするのも、ムービーの画質がきったねえのも、全てが本作の味なのだ!

むしろこれらの要素がなければ、ここまで語り継がれることはなかっただろう。平凡なアドベンチャーゲームの一本として、人々の記憶に残ることなく消えていたはずだ。

別に本稿をきっかけに本作をプレイしてみては、とは言わない。ただ、ゲームの歴史の中には、このように珍妙に珍妙を重ねたからこそ生まれた奇跡のタイトルが存在するということを知ってほしいのだ。「ワンチャイコネクション」、ぜひ名前だけでも覚えて帰ってください。


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