発売4日でスタジオ閉鎖のゲーム『The Day Before』、元ボランティアスタッフが「ひどい扱いを受けていた」と報告。無給なのにやたら厳しかったなど赤裸々明かす

開発元FNTASTICが閉鎖された『The Day Before』について、元ボランティアスタッフが声明を投稿。スタジオのボランティアスタッフたちの扱いについて報告されている。

開発元FNTASTICが閉鎖された『The Day Before』について、元ボランティアスタッフであった人物の声明が注目を集めている。2年以上にわたって公式Discordサーバーにてモデレーター代表を担当していた人物であり、スタジオのボランティアスタッフたちの扱いについて報告されている。


『The Day Before』は、パンデミック後のアメリカ東海岸を舞台とするオープンワールドサバイバルMMOと標榜されていた。2021年1月に発表されたのち、幾度も発売延期。12月8日にPC(Steam)にて早期アクセス配信開始を果たしたものの、サーバー問題や品質面などの課題を数多く抱えていたことから多くの不評が寄せられる結果となった。

そうしたなかで開発元のFNTASTICはスタジオを閉鎖し、『The Day Before』の開発を中止すると発表。あわせてSteamでは本作の販売も停止されている。スタジオ閉鎖の理由としては本作が収益的に失敗し、運営継続のための資金が不足しているためだとされた。突然のスタジオ閉鎖発表を受けてユーザーには混乱が生じている状況だ。


2年以上にわたるボランティアスタッフ生活

今回、海外掲示板Redditの本作コミュニティにてモデレーターを務めるWHOLF氏が声明を投稿。同氏はかつてFNTASTIC作品の公式Discordチャンネルにてモデレーターを務めていた人物だ。


声明においてWHOLF氏はモデレーターを始めた経緯を説明。『Propnight』の公式Discordサーバーにユーザーとして参加し、ほかのユーザーを助けたり交流したりしていたところ、FNTASTICからモデレーターとして抜擢されたという。その後『The Day Before』の公式Discordサーバーの手伝いも頼まれ、2年以上にわたって両作のサーバーにてモデレーター代表を担当していた。なおWHOLF氏の扱いはあくまでボランティアスタッフであり、FNTASTICのコミュニティマネージャーのアシスタントという立場であったそうだ。

またWHOLF氏はモデレーターとあわせて、ボランティアスタッフのリーダーを1~2か月間務めていたこともあったという。同氏によれば、ボランティアリーダーは、ボランティア応募者の採用を担当していたとのこと。応募者の人柄やゲーム開発経験のほか、ゲームやSteam、Discord内でアカウント停止や警告を受けたことがないかも調査する必要があったそうだ。そのため1人あたり30分ほどのチェックが必要になるうえ、応募者は200人以上いたとされている。

そうした大きな時間や労力が必要な仕事ながら、ボランティアリーダーもまた「ボランティア」なので得られたのは開発スタッフからの感謝の言葉のみだったそうだ。さらにFNTASTICから「仕事が遅すぎる」と判断されたため、WHOLF氏は1~2か月でそのポジションをはく奪されてしまったという。


聞いても教えてもらえない


なお本作は延期を重ねるなかで本格的なゲームプレイ映像がなかなか公開されず、公開されても物足りない内容である点から、開発状況への不信感をあらわにするユーザーも多く見られた。ボランティアスタッフたちも公開される映像や内容に疑問をもっていたそうだが、FNTASTICに問いかけるスタッフは少なかったとのこと。WHOLF氏はこうした疑問をぶつけたものの、答えが返ってこない、あるいはあいまいな返答しか得られなかったという。

またボランティアスタッフからはFNTASTICに対しゲーム内容に関するさまざまな質問がおこなわれたほか、「舞台裏」つまり開発風景などの写真が欲しいとの要望もあったそうだ。しかしそうした質問への応答にはなぜか数週間から数か月を要したうえ、まともに取り合ってもらえなかったようである。ちなみに開発風景については「Life at Fntastic」なる公式動画で後に紹介されることもあったが、WHOLF氏は何から何まで奇妙な内容であったとの見解を述べている。しかしそうした状況下でも、同氏を含めボランティアスタッフたちは本作に期待し、FNTASTICを信じていたと振り返っている。

https://www.youtube.com/watch?v=Z6ZGabq_qHo
*ユーザーによって再投稿された「Life at Fntastic」。現在FNTASTICの公式YouTubeチャンネルの動画はこの動画を含めすべて削除されている

そのほかWHOLF氏の声明では、同氏が接触する機会があったというFNTASTICと密接に関わっていた開発者たちについても述べられた。同氏の目には、彼らが過酷な労働を強いられ、疲弊しているように映ったという。また中には上からプレッシャーをかけられ続け、燃え尽き症候群のようになっていた人物もいたそうだ。


モデレーター解任

ちなみにWHOLF氏は自身のXアカウントにて、今年4月に『Propnight』および『The Day Before』の公式Discordサーバーのモデレーターを解任されたことを伝えていた。今回の声明ではこの理由についても明かされている。同氏によれば、FNTASTIC側から「活動や反応がにぶく、プロとしてあるまじき振る舞いを見せた」と判断されたためだそうだ。同氏は声明において、決して活動や反応は鈍くなかったと反論している。仕事や家庭など実生活もあったため365日24時間在席していたわけではないものの、ボランティアとしてモデレーターの活動を全うしていると考えていたようだ。

一方でWHOLF氏は、先述のようにFNTASTIC側の対応に疑問を抱いていたところもあり、モデレーター代表者としてあるまじき言動があった点については認めている。実際、同氏は発売延期に際して懸念を寄せたユーザーに対し、公式Discordチャンネルにて「私もゲームが実在するのか疑問を感じている」「(ボランティアスタッフ含め)誰もゲームプレイを見たことがない」と発言し波紋を広げたことがあった(関連記事)。一連の振る舞いが解任の引き金となった可能性はありそうだ。ただ、その後も同氏はゲーム自体には大きな可能性を感じており、FNTASTICを応援し続けていたという。


しかし、『The Day Before』は多数の課題を抱えたままで早期アクセスとして配信開始され、大きな批判を浴びた。そしてFNTASTICは12月12日にスタジオを閉鎖。こうした状況を受けてWHOLF氏は、虚しさと奇妙な感情を抱えているそうだ。すべてが嘘であり、自分がしてきたことがすべて無駄だったとの考えにあるという。同氏の元に残ったのは、マネジメントやモデレーターとしての経験と、『Propnight』のゲーム内通貨などのみ。WHOLF氏はスタジオ閉鎖を巡る騒動を見て、「理由は自分でも分からないが、ちょっとだけ泣いてしまった」と述べている。

WHOLF氏は声明の最後に、すべてのユーザーに返金がおこなわれることを望んでいるとコメント。また『The Day Before』やFNTASTICは業界の歴史に汚名として残り、これからもスタジオ関係者は厳しい目を向けられ続けるだろうと綴った。

『The Day Before』はSteam DBにおけるSteamウィッシュリスト登録者数で1位になるなど多くの注目を集め、期待を寄せられていたタイトルだ。ボランティアスタッフたちもプロジェクトへの期待やFNTASTICへの信頼から、通常なら金銭報酬が発生するような仕事を引き受けていたようである(関連記事)。

ちなみに本作の返金について、ユーザーからは返金ポリシーの基準となるプレイ時間2時間を過ぎていても、丁寧に状況を説明して返金が認められたといった報告が寄せられている。FNTASTICは、販売元であるMytonaおよびSteam側(Valve)との連携のもとで返金対応がおこなわれており、『The Day Before』からの収益は1ドルも受け取っていないと主張している。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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