Steam基本プレイ無料レースゲーム『Trackmania』同時接続プレイヤー数が一時10倍に跳ね上がる急上昇&急降下でプレイヤー困惑。人気ストリーマーらの配信かバグの影響か

 

Steamにて11月28日、とあるレーシングゲームの同時接続プレイヤー数(以下、CCU)が急増していた。平常のピーク時CCU2000人から、一時はおよそ10倍の2万人超を記録する異例の事態に。ところがこのCCUは11月29日未明、短時間の間に再び急落しており、プレイヤーコミュニティからは一連の事態に困惑する声が挙がっている。

今回、CCUに急激な変化が生じているタイトルとは、Ubisoftの子会社Nadeoが手がける『Trackmania』だ。本作は、2023年2月に配信開始された、基本プレイ無料のレーシングゲーム。さまざまなギミックが盛り込まれたコースの最速クリアに挑む、タイムアタックを主体とするレーシングゲームである。基本のゲームモードには、各シーズンごとに用意されたコースでタイムアタックに挑戦できるキャンペーンのほか、ランク/アーケードといったオンラインプレイモードが存在する。また、別途Standard/Club Access 1 Yearといったサービスを購入すると、他のプレイヤーが作成したエディットコースなどもプレイ可能となるようだ。


『Trackmania』に登場するコースには、ジェットコースターのような一回転ループや、車体を地面と垂直にして壁走りのような状態でのコーナリングを要する場面も存在する。また、特定ゾーンを走行すると、ノーステアリング(方向転換無効)、エンジンオフ(アクセル操作無効)といった制限を課すパズル的ギミックも存在し、シビアなタイムアタックをはじめとして幅広い楽しみ方ができるレーシングゲームと言えるだろう。

そんな本作のCCUは、今回の急増以前のピーク時で2000人前後という数値を記録していた。ところが、11月27日頃を境にその数が急増。それまでの10倍にもおよぶ2万人超のプレイヤーが同時接続する状況となったのだ。これにより、最多同時接続プレイヤー数が2万2128人へと更新(SteamDB)。人口爆発と言っても過言ではない変動が起きたのだ。これに対し、本作のSteamコミュニティからも困惑する声が挙がっていた

本稿執筆にあたり調査をおこなったところ、プレイヤー急増を誘因した可能性のあるイベントが、いくつか浮かんできた。まずひとつは、11月22日に『Trackmania』シリーズの20周年を記念するアップデートが実施されたことだ。

このアップデートでは、2003年にWindows向けにリリースされた初代『Trackmania』に登場したSnow Car(4WD車のような車両)が現代風アレンジで実装され、路面材質として新たに木材が新登場。エディットコース作成用の3Dブロックも100種追加されるなど、新コンテンツが盛りだくさんのアップデートとなっている。これにあわせて、総勢10名のストリーマーが独自のエディットコース集を作成し、12月4日から一般ユーザー向けに公開するという、ストリーマーと連動するキャンペーンが告知されていた。これらは、かつてシリーズ作品を楽しんだプレイヤーやストリーマーの視聴者が本作に興味を持つきっかけになった可能性がある。

そしてもうひとつは、大手ストリーミングサイトTwitchの配信において、多くのユーザー(視聴者)の目にとまるイベントがあったことだ。一度目の機会は、アメリカ現地時間11月19日に催された、同サイト上配信イベント「Twitch Rivals」の競技タイトルとなった際に訪れた。

同イベントは、人気のTwitchストリーマーらが集い、配信中に特定タイトルの成績を競うというコミュニティ大会。人気ストリーマーらが一斉に1つのタイトルをプレイするため、必然的に多くの視聴者が競技タイトルのプレイを目にすることなる。『Trackmania』が選ばれた11月19日のイベントでは、Summit1G氏(フォロワー約622万人)やLirik氏(フォロワー約295万人)と言った超人気ストリーマーらが参戦したこともあり、Ttwitchの最大同時視聴者数は7万4841人を記録していた(SteamDB調べ)。相当な数の視聴者が本作の実況プレイを視聴していたことが分かる。

続く二度目の機会は、中央ヨーロッパ現地時間11月24日〜26日に開催された『Trackmania』のWord Champion Shipの大会配信だ。最終日の26日は、プレーオフ/グランドファイナルがおこなわれた日であり、Ttwitchの最大同時視聴者数は6万6896人を記録。当日にはフランスのトップストリーマーのひとりであるKamet0氏(フォロワー約178万人)が観戦配信をおこなっていた。SteamDBの推移を参照すると、本作の同時接続プレイヤー数は、世界大会の翌日にあたる27日(世界協定時)の12時頃を境に急増し始めているため、こうしたストリーマーらの配信/影響力が新たなプレイヤーの呼び水となり得たかもしれない。

ところが、本作のCCU推移はさらなる急展開を見せることとなる。世界協定時28日の18時50分頃から突如減少を始め、19時10分までのわずか20分の間に、直前のCCUから約1万8000人減少するという急落が起こっている。こうした一連のCCU推移と並行して、SNSサイトX上や本作Subredditのスレッドでユーザー間の意見交換がなされており、CCUの増加速度の異常さへに対する言及や、集計にバグが生じている/不正利用目的のBotが大量にアクセスしているのではないか、などさまざまな憶測を呼んでいる。本件は、既存プレイヤーらのコミュニティからも疑問の浮かぶ、異常な事態のようだ。

*SteamDBより CCU増減の前後

*Steamストアより 日本時間11月28日20時19分に撮影


以上が筆者がおこなった調査の内容だ。あくまでも本作に関連したイベントや動向から、プレイヤー流入/急増に繋がり得るものを取り上げたにすぎず、残念ながらCCU増減の正確な原因を突き止めるまでには至っていないことに留意されたい。

なお、筆者が日本時間11月28日20時頃にSteamストア公式のデータページ「最もプレイされているゲームトップ100」のリストを参照した時点では、2万536人がプレイ中で全ゲーム中44位を記録していた。SteamDBを介さない公式データにおいても急増時のピークに近い約2万人のCCUを記録していたというわけだ。

仮にユーザーらが指摘している通り、Steamの集計上でなんらかのバグが生じているとするならば、本作に限らず他のタイトルの集計結果においても影響を及ぼしている可能性が考えられるものの、筆者の調査した限りでは、本作同様の規模でCCU急増を見せたタイトルは確認できなかった(Steamオータムセールの影響によってか、従来よりもピーク時CCUが数割程度の増加を見せたタイトルは複数あった)。また、もう一方で指摘されている、不正利用目的のBot、あるいはUbisoft Connect(本作起動時に使用する公式ランチャー)からアクセスするユーザー数が一時的に合算されていた可能性に関しては、CCUの内訳を正確に調査する手段が存在せず、その真偽は不明のままだ。


とはいえ、『Trackmania』は本稿執筆時点のSteamユーザーレビューにおいて、8612件中80%の好評により「非常に好評」のステータスを獲得しており、ゲーム自体の評価が低かった訳ではないことが分かる。

CCU急増に関して希望的観測をするのであれば、上に挙げたような契機さえあれば、一挙にユーザーを獲得し得るポテンシャルをもとより秘めていたのかもしれない(急落に関しては依然として謎のままではあるが)。

一部のレビューでは、拡張コンテンツへのアクセス権となるStandard/Club Accessが年単位のサービスとして販売されているため、サブスクリプション方式に感じられるとして不評とされている。一方、好評とするレビューでは、本作のコミュニティにより作成されたコース(拡張コンテンツ)の充実度や、タイムアタックの奥深さが評価されており、前述した年単位というアクセス権の販売形態も、用意されているコンテンツ量を考慮すれば妥当な価格設定に思えるとして、ユーザーから一定の理解も得られているようだ。本作が気になった方は、一度実際にプレイしてみるとよいだろう。

『Trackmania』は、PC(Steam/Ubisoftストア/Epic Gameストア/Amazon Luna)/PS4/PS5/Xbox Series X|S/Xbox One向けに、基本プレイ無料で配信中だ。