「Steamユーザーは、どんな単語が含まれたゲームを買いやすいのか」。“リマスター”や“暗い”ゲームはよく売れそうなど、収益傾向いろいろ調査報告

 

海外マーケティング調査機関GameDiscoverCoは9月5日、Steam上のゲームタイトルに含まれている“単語”と、各単語ごとの収益中央値について、独自の調査結果を公開した。これは調査マーケティング調査サイトの協力により調査/集計されたものとされ、同機関はその結果について推察を交えつつ紹介している。


今回公開されたデータは、Steam上での「ゲームタイトルに含まれる“単語”ごとの収益中央値」だ。報告をおこなったのはGameDiscoverCoのSimon Carless氏。同氏が紹介するデータは、マーケティング調査サイトGamalyticのStrahinja Milenovic氏により独自に調査されたとのこと。調査対象はSteamで販売されているゲーム全体で100回以上使用されている単語のみとされ、集計されたデータの詳細も公開されている

Carless氏は、このデータについてマーケティング上の実用性は“1000%”ないだろうと断りつつも、魅力的な情報であるとして紹介。続けて、集計されたデータを分析し、高い収益中央値を記録したいくつかの単語を取り上げて、独自の指摘をおこなっている。本稿ではそのなかから一部、興味深い指摘に補足を交えつつ下記に紹介したい。

Image Credit: GameDiscoverCo

まずグラフを見ると、既存タイトルの「復刻」に関する単語の収益中央値はいずれも高水準を記録していることが確認できる。具体的には「HD(中央値6万3000ドル)」「Remastered(3万2000ドル)」といった単語だ。いずれも基本的には、既存タイトルを復刻あるいはリマスターした際に付与されることの多い言葉だろう。また既存タイトルの完全版などに付けられることが多い「Pro(1万6000ドル)」「Gold(1万1000ドル)」といったワードも比較的大きな売上を見せている。前述の4単語は、集計結果をまとめたグラフ内の収益中央値において上位6単語までに含まれている。復刻やリマスター、完全版はオリジナル版が人気を博したタイトルで発売されがちであり、それらに含まれるワードは好調な売れ行きを示すのかもしれない。

次にCarless氏は、「Manager(中央値3万3000ドル)」や「Tycoon(1万9000ドル)」といった単語が含まれるゲームの売上の高さに言及している。これらの単語は、なんらかの業務/仕事を題材として、プレイヤーがその管理/経営を担うゲームにおいて使用されることが多い。たとえばコーヒーショップを経営する『Coffee Shop Tycoon』といった具合に、「題材+Manager/Tycoon」といったかたちで使用され、タイトルからゲームプレイが分かりやすいネーミングといえるだろう。Carless氏はこれらが好調な売り上げを見せる理由として、ゲームプレイの複雑さからではないかと分析。同氏は、経営ゲームを片手間の趣味で開発することは難しく、ゲームが一定の複雑さを備えていることが担保される点が売上を伸ばしている要因ではないかといった考えを述べている。

そしてCarless氏からは、単語のもつ印象の「明るい」あるいは「暗い」といった側面に注目した指摘もなされている。同氏が挙げたタイトル内に含まれる暗い印象をもつ単語としては「Dead(中央値5万2000ドル)」「Witch(4万8000ドル)」「Black(4万5000ドル)」など。一方、明るい印象もつ単語としては「Farm(2000ドル)」「Little(1000ドル)」が挙げられ、双方の収益中央値には大きな差が生じている。Steam上では暗い印象の単語を含んだゲームの方が、より高い売上を示すことがうかがえる数値だ。Carless氏はこうした比較を通して、Steamユーザーは「Cozy-friendly(心地よく親しみやすい)」ゲームよりも、「Grimdark(不気味でダーク)」なゲームを好んでいる傾向の表れかもしれないとしている。ちなみに「Dead」という単語をタイトルに含むゲームは、今回の調査対象の中に274作品存在しており、収益中央値の上位20単語の中では断トツの母数をもつ単語であることも言及されている。「Dead」はホラー作品をはじめ幅広いジャンルに用いられる単語であり、さまざまな作品がラインナップしたかたちかもしれない。


ちなみに同氏は、調査結果において下位の収益中央値を記録した単語についても言及している。その対象となった単語は「Tank(140ドル)」「Ball(94ドル)」「Maze(93ドル)」「Jump(43ドル)」の4つだ。同氏は、自身にゲーム開発経験がないことを断った上で、これらの単語はシンプル過ぎるのではないかとコメント。「初めて作ったゲーム」のような雰囲気が漂っているとの考えを述べている。

なお今回の公開された調査結果については、Carless氏よりあらかじめ実用性がないであろうことが明言されており、上述の推察もそれに基づくかたちでなされたものである点には改めて留意したい。データとしても収益中央値をまとめたものであり、上述の傾向に当てはまらない作品もあるだろう。たとえばタイトルに「Jump」を含む『Jump King』は、コンソール向け展開やシリーズ化もなされる人気作となっている。

一方でデータからはさまざまな傾向が推察できる点は興味深い。今回調査/集計されたデータは英単語に限定されたものとなっており、仮に日本語のタイトルを対象として同様の調査をおこなった場合にはまた別の結果が得られるかもしれない。