クラファンで約1000万円集めたゲームの責任者、開発会社に訴訟されたのち訴訟し返す。損害賠償と精神的慰謝料を請求


国内デベロッパーの株式会社ピクセルは3月17日、作曲家・古川もとあき氏によって、同社を相手取り合計842万5358円を請求する訴訟が提起されたことを発表した。同社はシューティングゲーム『スチームパイロッツ』の開発費支払いをめぐり、古川氏を相手取る訴訟を裁判所に提起していた。今回は同社および同社代表取締役・佐々木英州氏に対する、古川氏による別訴が提起されたかたちとなる。

【UPDATE 2023/3/22 12:20】
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『スチームパイロッツ』は、元コナミ所属の作曲家である古川もとあき氏を発起人として発表された、PC向け縦スクロールシューティングゲームだ。Makuakeにて2019年より実施された2度のクラウドファンディングキャンペーンを通じ、合わせて1000万円を超える出資金を獲得。当初は2020年9月の完成が想定されていたが、現在もまだ開発中とされる。

ピクセルは当初本作の開発を担当。代表取締役の佐々木英州氏が本プロジェクトに参加するも、その後降板した。同社の発表によると、開発費の未払いや、両者間の合意についての一方的な条件変更などがあったという。開発費が出ていないなかでは、それ以上の開発続行は断念せざるを得なかったとして、完成分のデータおよび成果物の権利引渡しを条件に、報酬の支払いを請求したとのこと。しかし古川氏側からの回答が途絶えたことで、ピクセルは請負代金の支払いを求めて、2022年2月に仙台地方裁判所にて訴訟を提起することとなった。

今回、ピクセルは古川氏により損害賠償および慰謝料を請求する別訴が提起されたことを報告している。同社に対して損害賠償として請求された額は、762万5358円。そして佐々木氏個人に対して請求された額は、精神的慰謝料として80万円。合計842万5358円が請求されているという。なおこちらの訴訟は別訴とされており、先述の請負代金の支払いを求める訴訟とは別の手続でおこなわれるとみられる。

ピクセルは2022年3月に、同社が2021年11月に送付したという先述の報酬請求に対し、古川氏は代理人を立てて文書を送付してきたことを伝えていた。その際には、ピクセル側が古川氏の主張とされる内容を提示。古川氏側は、開発中止は共同制作契約に対するピクセルの債務不履行が原因であり、そのため契約を解除すると勧告された旨を伝えていた。また同文章では、制作を他者に依頼せざるを得ず費用が別途発生することとなったため、古川氏側が損害賠償として758万3018円をピクセルに請求するとされていた。ただしピクセルが考案した名称などを使用することにより、損害賠償の減額は可能である、とのことであった。なおこうした古川氏の主張に対し、ピクセル側は反論していた(関連記事)。

つまり今回古川氏により提起されたのは、そうした以前の主張を盛り込んだ別訴となる。今回の損害賠償額762万5358円についても、以前文書で請求された758万3018円に4万2340円を加えた請求とみられる。佐々木氏はユーザーの問いかけに対し、ピクセルおよび同氏が訴えられた根拠と証拠の内容について「これから(古川氏側に)じっくり説明していただきます」と述べている

なお古川もとあき氏は、現在SNSは非公開とし、Makuakeのクラウドファンディングページを通じて情報発信をおこなっている。直近の更新は昨年11月で、“大きな騒ぎ”になっているため、本プロジェクトの進捗報告および質問への回答に関しては、弁護士と相談しながら可能な範囲でおこなっているとのこと。『スチームパイロッツ』の開発中の画像や動画については、当時の段階では見せられないとも述べている。そして、裁判を通して正規の方法にて事実を明らかにし、本件問題の解決を図っていきたいとしていた。