独裁国家運営シム『トロピコ5』が、ポーランドの大学にて教材に採用。プレジデンテから社会的現実を学ぶ


独裁国家運営シミュレーションゲーム『トロピコ(Tropico)』シリーズのひとつ『トロピコ5』が、ポーランドのワルシャワ大学にて教材として使用されているという。本作の販売元Kalypso Mediaが2月21日、その取り組みについて報告した。

『トロピコ5』は、カリブ海に浮かぶ南国の島を舞台にする独裁国家運営シミュレーションゲームだ。2014年の作品であり、シリーズとしては最新作『トロピコ6』がすでにリリース済み。本作にてプレイヤーは、独裁者のプレジデンテ(大統領)として、インフラ整備や農業推進、産業強化、技術革新、教育改革、観光事業育成、軍事力増強などに取り組み、国を繁栄させることを目指す。

本作の特徴のひとつとしては、19世紀から21世紀にかけての移り変わりが表現され、世界大戦や大恐慌、冷戦時代といった実世界での時代背景がゲームプレイにも反映される。また、シリーズとして初めて最大4人でのマルチプレイも導入。各プレイヤーは交易や外交で協力し合ったり、宣戦布告をしかけたりできる。

ポーランドのワルシャワ大学では、助教授のJacek Ziółkowski氏やPiotr Rutkowski氏の主導により、政治学や国内治安などに関する講義にゲームを活用する取り組みが2013年からおこなわれているという。そして今学期からは『トロピコ5』が新たに採用され、販売元Kalypso Mediaが同作のキーを無償提供しているそうだ。

Rutkowski氏にとって『トロピコ5』は戦略ゲームであり、またユーモア混じりの社会的現実シミュレーターとして興味深い作品だという。そして本作を通じて学生らが、政治的な想像力を培うことができるとみているそうだ。本作には政治、経済、国際的な要素があり、それらに同時に対処するなかでは、下した決断がその後の出来事に影響を及ぼす。そうしたゲームプレイが、社会的現実の多次元性や多面性を認識することに役立つとのこと。

また本作のマルチプレイでは、お互いに助け合うのか、それとも競争するのかといった決断をおこなうことになる。いずれのアプローチにおいても優先順位を決めて判断することになり、本作を通じて学生の意思決定プロセスの最適化を向上させることは目標のひとつだそうだ。


教育機関にてゲームを活用する事例はさまざまあり、メーカーが積極的に協力する場合もある。有名なタイトルのひとつしては、いわゆる教育版『マインクラフト』である『Minecraft: Education Edition』が挙げられる。ほかにも、たとえばコナミが『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』の提供を先日より開始した(関連記事)。

今回ワルシャワ大学が採用した『トロピコ5』については、従来の教育方法を補足するかたちで用いられているという。主導したZiółkowski氏は、本作には労働市場において必要な能力の習得に繋がる仕組みが多く存在するとコメント。国民の反乱や大統領選挙での敗北など、本作ならではの失敗からも、意思決定や危機管理などについて学ぶことができるという。そして学生らがプレイした後には、実行した戦略や遭遇した問題、抱えた感情や疑問などについてディスカッションし、身につけた能力をさらに強化させているそうだ。

『トロピコ5』は、PC(Steam)/PS4/Xbox One/Xbox 360向けに販売中。また、シリーズ最新作『トロピコ6』もPC(Steam)/Nintendo Switch/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに販売中だ。