高機能ボイスチャットツール「CRI TeleXus」正式版提供開始。空間音響に対応し仮想空間での「聞き分け」も可能に、AI通訳実装予定も


株式会社CRI・ミドルウェア(以下、CRI)は、コミュニケーションミドルウェア「CRI TeleXus」の正式版の提供を開始した。新たに空間オーディオに対応したボイスチャット機能を搭載している。あわせて会話のAI翻訳機能やビデオチャットへの対応を視野に入れた、今後のロードマップが公開された。

CRIといえば、音声・映像関連の技術製品を中心に展開する企業だ。ゲーム分野においては、音声や映像をサポートするミドルウェア群「CRIWARE」のロゴがなじみ深いだろう。同社の新製品「CRI TeleXus」は、高機能ボイスチャットを中心としたオンラインコミュニケーション向けミドルウェアだ。仮想空間でのコミュニケーションを活性化させ、コミュニティ拡大による収益の向上に寄与することを目的としている。具体的には「音声データ10Kbpsの低通信量ボイスチャット」「100人規模の多人数同時会話」などを柱としており、今年5月より企業向けにアーリーアクセス版の提供を開始した(関連記事)。

スマートフォンアプリからコンシューマ向けゲームタイトルまで、多数の採用実績を持つCRIWARE


正式版では、新たに空間オーディオに対応したボイスチャット機能を搭載。一般的なステレオヘッドホンでも自身の周りを囲むように話かけられている感覚を味わえるとのことだ。また複数人が発話している状況でも、それぞれの声がしっかり分離されるためクリアに聞き取ることができる。メタバースやオープンワールドゲームといった大規模な仮想空間での「実在感のある会話」を通じて、デジタルコンテンツに対する没入感やユーザー体験の向上に寄与するとのことだ。さらにCRIが提供するサウンドミドルウェア「CRI ADX」との連携に対応。ボイスデータの加工や音量バランスの調整が容易になるという。

「CRI Telexus」の空間オーディオ対応ボイスチャット機能では、「HRTF(頭部伝達関数)」を応用したシステムを導入するという。専用の機器を必要とせず、一般的なステレオヘッドフォンでの視聴に対応しているのが利点だ。また音源の位置・距離をプレイヤーが把握しやすくなることから、HRTFを利用した空間音響システムはFPSタイトルを中心にオプションとして搭載されているケースがある。『VALORANT』『PUBG: BATTLEGROUNDS』などがその例だ。一方、HRTFを利用した空間音響は聞こえ方に個人差が出やすいというデメリットもある。実際に「CRI Telexus」がどの程度立体的に聞こえるのか、多人数での同時発話を聞き取れるのかは気になるところだ。

CRI は同製品の今後の展開について、2023年9月までのロードマップを公開。これによれば、異なる言語の話者の会話をサポートする「AI通訳」や、ゲームのプレイ画面を共有しながら会話ができる「ビデオチャット」などの機能を追加予定だという。今やゲームとは切っても切り離せない存在になったボイスチャット。「CRI Telexus」がプレイヤーの体験にどのような変化をもたらすのか、今後に期待だ。

今後の機能拡充についてのロードマップ。AI翻訳の実装は2023年6月を予定している


「CRI Telexus」について、詳細はコンセプトページを参照いただきたい。