マイクロソフト、ソニーが特定ゲームのXbox Game Pass入り阻止のためにお金を払っていると主張。Activision Blizzard買収に反対するSIEへの反論の中で

 

マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収方針を巡っては、現在各国の規制当局にて承認審査がおこなわれている。そのひとつブラジルでの審査において、当局に提出された意見書にて、マイクロソフトとソニーが攻防を繰り広げているとして注目を集めているようだ。海外メディアVGCなどが報じている。

マイクロソフトは今年1月18日、総額687億ドル(約9兆1500億円・現在のレート)というゲーム業界最大規模の金額にて、Activision Blizzardを買収することで両社間で合意したと発表。業界大手メーカーを傘下に収める巨額買収となることから、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れなどについて、規制当局による審査が進められている。

ブラジルでは、政府機関のCADE(Administrative Council for Economic Defense)が承認審査に向けて、関係各社に聞き取り調査をおこなっているという。そのなかの一社であるソニーは、ゲーム業界における『Call of Duty』シリーズの重要性を語り、ユーザーのコンソールの選択に影響を及ぼすとして、買収への懸念を示したことが以前話題となった。『Call of Duty』シリーズそのものがもはやひとつのゲームジャンルを構成しており、競える作品はほかにない、すなわち買収は反競争的であるという主張である。

新たに公開された聞き取り調査の内容によると、『Call of Duty』シリーズに関するソニーの主張についてマイクロソフトは、関係各社のなかでソニーだけが異なる意見をもっていると回答しているという。ほかには、Ubisoftやバンダイナムコなども関与している。マイクロソフトは、熱心なファンがいる作品だからといって、『Call of Duty』がほかと異なるゲームジャンルになるというのは、極端な結論だと反論している。またマイクロソフトの方針として、買収完了後も『Call of Duty』シリーズはPlayStationプラットフォームにて販売を続けるとも述べている。この点については、以前にも正式に発表していた(関連記事)。


調査への回答にてマイクロソフトは、サブスクリプションサービスXbox Game Passについても触れている。『Call of Duty』シリーズを含むActivision Blizzardタイトルが、同サービスに独占的に提供される可能性についてソニーが懸念しているようで、それに対し回答している。それによるとマイクロソフトは、独占戦略は業界内での立場を強化するために、ソニーが用いてきた戦略の中核であると指摘。他社の独占について懸念することは、控えめにいっても支離滅裂(incoherent, to say the least)であると述べている。

さらにマイクロソフトは、Xbox Game Passの成長を、ソニーが阻害しようと試みているとも主張しているという。メーカーがXbox Game Passやほかの競合サービスにタイトルを提供することを防ぐために、ソニーはメーカーにお金を払っているとのこと。真偽は不明であるが、独占戦略のなかでそうしたことがおこなわれる可能性は、ソニーに限らずありそうだ。ただマイクロソフトとしては、競争を阻害しているという文脈で主張を繰り広げ、買収への懸念に対し反論している。それによって審査を有利に進めたいという狙いがあるのかもしれない。

マイクロソフトのActivision Blizzard買収についての承認審査および事前調査は、アメリカやイギリス、ニュージーランドなどでもおこなわれている。また日本でも、公正取引委員会が企業結合審査において第三者からの情報・意見募集をおこなっていた。こうした審査を経て、マイクロソフトは2023会計年度内(2022年7月から2023年6月まで)に買収が完了する見込みであると報告している。