デベロッパーのSquare Root Studiosが開発中だったMMORPG『TitanReach』が、今年2月11日に突如開発中止となった。その背景について事情を知るという人物からの告発がおこなわれているようだ。海外メディアMMOBombなどが報じている。
『TitanReach』は、古き良きMMORPGを手本にしながら、独自のスキルシステムや経済システム、ソーシャルシステムなどの導入を掲げる、ファンタジー世界を舞台にする作品として発表された。2020年9月には、Kickstarterにてクラウドファンディングが実施された。結果的に初期目標金額には届かず、その後実施された独自のクラウドファンディングでも開発費としては足りず、一度開発中止に。しかし開発元は、ある投資家から資金を得ることに成功し、開発を再開していた。
*ファン制作のトレイラー
『TitanReach』の開発状況の報告や、ファンとのコミュニケーションはDiscordにておこなわれていた。そんななか、Unravelと名乗るSquare Root Studiosの代表者が今年2月11日、スタジオを閉鎖し、本作の開発も終了すると発表した。
理由については、プライベートなことであり明かせないとしたが、集めた100万ドル(うち20万ドルはコミュニティからの出資金)はすべて開発費として使ったと述べている。投資家からの出資は月ごとにおこなわれていたため、残った資金を持ち逃げするわけではないとも。Unravel氏は、本作にはNFTを使ったPlay-to-Earn要素を導入する計画もあったことなども明かしつつ、コミュニティの支援に感謝の言葉を述べている(Reddit)。そして、発表から7日後にはDiscordサーバーを閉鎖するとし、これに合わせて公式サイトや公式SNSなども閉鎖された。
ここまでであれば、開発費が想定を上回り資金がショートしてしまったという、クラウドファンディングを通じたゲーム開発における、ある種のよくある話と受け取れる。ただ、開発中止発表から数日後、かねてより本作を取り上げていたYouTuberが、開発中止の背景を告発する動画を投稿した。
YouTuberのKira氏は、MMORPGを中心にゲーム関連の話題を扱っており、チャンネル登録者数は13万人を超える。同氏はこれまでに、『TitanReach』のゲームプレイをたびたび配信。また開発者のUnravel氏とも懇意にしていたようで、冒頭で触れた投資家が現れ本作が開発中止の危機から救われた際には、その事情についても直接取材して報じていた。
2月15日に投稿された告発動画にてKira氏は、Unravel氏と個人的にやり取りしていたメッセージを公開。それによると、Unravel氏は開発資金のうち15万ドルを、仮想通貨への個人的な投資に注ぎ込み、失敗してほぼ失ってしまったとKira氏に打ち明けている。ある月には、前述の投資家から受け取った資金の半分を使い込んだこともあるとしている。
Kira氏によると、その投資家は南アフリカ在住の実業家Andre Cronje氏だという。Unravel氏は罪の意識に苛まれ、Cronje氏に事情を説明。すると投資を打ち切られたそうだ。Unravel氏はKira氏に、この件ついてCronje氏を取材しないでほしいと要望。YouTuberが取材すれば、資金流用が世間に知られることとなるのは明らかだ。
投資家からの資金がストップしていることは、いずれKira氏も勘付くことだろう。そこでUnravel氏はあえてKira氏にも事情を説明し、まだ本作の開発を続けたいとの希望を語り、この件について黙っていてほしいと要求した。そして見返りとして、Square Root Studiosにて何らかのポジションを用意するか、儲けが出た場合に仮想通貨を贈ると持ちかけてたようだ。
これに対しKira氏は、Unravel氏が使い込んだ資金は多くのファンが出資し、またCronje氏がリスクをとって投資したお金であるとして、要求を拒否。結果的に、Kira氏はCronje氏と連絡を取り、Unravel氏に『TitanReach』のプロジェクトを終息させるよう促したそうだ。
その後Kira氏のもとには、Square Root Studiosの複数のスタッフからコンタクトがあったとのこと。Unravel氏は仮想通貨以外にも開発資金を使い込んでいたとの告発があったそうだ。そのなかには、テスラ社の新車を購入していたという証言もあったとのこと。
この告発動画の内容について、現時点ではUnravel氏やAndre Cronje氏からの反応は確認されていない。そのため、どこまでが正しい情報なのかは外部からは判断しかねる。ただKira氏は、本作の突然の開発中止がさまざまな憶測を呼んでいたことから、事実を説明するために動画を公開することにしたと述べている。
Kira氏の告発が事実だとすれば、Unravel氏は毎月のように入ってくる大金を私的に使い、個人的な投資に失敗して初めて事の重大さに気づいたというところだろうか。開発元が、作品を紹介してくれたYouTuberとの繋がりを深めていたことが、結果的に『TitanReach』の開発中止に繋がるひとつの要素となったことは皮肉であるが、明かされた情報から察するに、遅かれ早かれ本作の開発は頓挫することとなっていたかもしれない。