Activision Blizzardのセクハラ問題について、関係者からの告発相次ぐ。幹部は弁明するも、従業員からの被害報告止まらず

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Activision Blizzardは7月20日、同社および子会社において女性従業員に対するセクシャルハラスメントや待遇の不平等など、差別や不当な扱いがあったとして公正雇用住宅局(Department of Fair Employment and Housing、DFEH)から提訴された。同社は訴えを受けて、DFEHが訴状において事実を歪曲しているとの声明を発表。一連の流れを受けたコミュニティおよび関係者からは、同社に批判的なSNS投稿や声明が多数投じられている。


Activision Blizzardは、カリフォルニア州を拠点とするゲーム企業。同社はMMORPG『World of Warcraft』や対戦FPSゲーム『オーバーウォッチ』、戦争FPS『Call of Duty』などの人気作を運営していることで知られている。同社は今月7月20日、社内で女性従業員に対する不当な扱いがあったとして、DFEHによりカリフォルニア州ロサンゼルス郡上級裁判所に提訴されていた(関連記事)。

訴状におけるDFEH側の主張は、Activision Blizzardおよび子会社であるBlizzard EntertainmentとActivision Publishing社内で、有害な職場環境に起因する女性従業員へのセクハラや待遇の不平等が存在したと訴えるものだ。行政機関が大手ゲームメーカーを訴えたという衝撃的なニュースは、海外メディアやコミュニティを中心に大きな波紋と企業への批判を呼んだ。


一方で、Activision Blizzard側は現在の職場環境は改善されているとして、DFEHに批判的な姿勢を取っている。BloombergのジャーナリストであるJason Schreier氏および海外『Call of Duty』関連メディアCharlieIntelは、同社広報から送られた声明をTwitter上に掲載。その内容は「DFEH側の訴状の内容は歪曲されており間違いも多い」として、訴状の内容は現在の実情に即していないと指摘するものだ。DFEH側の調査開始後、同機関の調査に同社として協力しており、改善にも努めてきたと主張している。

また、Schreier氏はBlizzard Entertainment社長のJ. Allen Brack氏、およびActivision Blizzard 社CCOであるFrances Townsend氏による、Activision Blizzard社従業員向けとされるメールも公開している。内容はいずれも、現在の同社はさまざまなハラスメント対策や職場環境改善策を実施しているとして、社員の安心を促すような文面となっている。また、Townsend氏については女性従業員として、現在の同社における職場環境は健全なものであると綴っている。


こうした幹部からの発信があるなか、元従業員・現役の従業員から同社への激しい批判の声があがりつづけている。Blizzard Entertainment社でブランドマネージャーを務めるKate Simpson氏は、Townsend氏のメールを紹介するツイートを個人Twitterアカウントにて引用。「いつもは“私のツイートは社の意見を代弁するものではありません”って言うんだけど、今日ははっきり言えるわ、“社の意見は私の観点や信条、価値観を代弁するもではありません”」とコメントして、Townsend氏がメールで主張した内容を否定する姿勢をあらわにした。


また、CCOのTownsend氏については今年3月頃に同社に入社したばかりであり、過去の実情について把握できていない可能性もコミュニティから指摘されている

Simpson氏のように、SNS上で同社への批判や過去の出来事について証言している元従業員や現役従業員は枚挙にいとまがない。海外掲示板Redditの『World of Warcraft』コミュニティ/r/wowには今回の訴訟に関するスレッドが立てられ、多数の関係者による各SNSにおける意見などの投稿がまとめられている。

まず、Blizzard Entertainment共同設立者で元CEOであり、現在はゲーム企業Dreamhavenを立ち上げて同社CEOを務めているMichael Morhaime氏は、現状を憂い女性従業員に謝罪する声明をTwitter上に投稿している。同氏は、Blizzard Entertainmentにおける約28年間の勤務のなかで、どのような背景をもった従業員にとっても、安全で安心できる環境を作ろうとしたものの、「明らかにゴールから遠ざかってしまった」とコメント。職場環境の改善に失敗したことを認め、元重役として同社女性従業員たちに向けて謝罪した。


訴状でも名指しされており、複数の関係者から加害者として言及されているのが『World of Warcraft』元シニアクリエイティブディレクターのAlex Afrasiabi氏だ。訴状において同氏は、Blizzard EntertainmentのショーケースイベントであるBlizzConの最中や平時において、女性従業員を口説く、身体的接触をするなどのセクハラ行為をおこなっていたと訴えられている。同社にて2006年から2020年までプロデューサーなどを務めていたというStephanie Krutsick氏は、Twitter上で「私も(Afrasiabi氏の)被害者のひとりです」と証言。具体的には2013年のBlizzConで被害に遭ったとしている。


同氏は昨年同社を退職するまでは、報復が恐ろしく、問題について公に口にできなかったとコメント。そのほか訴状に書かれているような出来事や、書かれていないようなケースにも遭遇したとしている。ただ、同氏はほとんどの同僚は素晴らしい人々だったとして、同社での肯定的な職場経験も述べている。セクハラなどの問題の存在を認めつつも、すべての従業員が悪質なわけではないと念を押す意見だ。また、同氏はこうした問題はActivision Blizzardだけでなく、あらゆる企業、とくに2015年頃以前から存在する企業に共通する問題だと述べている。

前述した今回の訴訟に関するRedditスレッドでは、ほかにも多数の同社関係者とみられる人物のSNS投稿がまとめられており、その数は40名以上にのぼる。いずれの内容も、おおむね訴訟の内容を追認し、Activision Blizzard社を批判する意見投稿だ。しかし、なかには「現在働いているチームでは被害を受けていない」と証言し、同社従業員への無差別な攻撃などをしないよう、コミュニティに呼びかける投稿もある。

従業員などの関係者以外の声明としては、Blizzard Entertainment社製のゲーム実況や、同社への批評で著名な海外ストリーマーのAsmongold氏が、過激化するコミュニティの批判を諌める内容の動画を投稿をしている。同氏は動画のなかでActivision Blizzard社を痛烈に批判し、ユーザーはボイコットなどを選択する権利があると言及。しかし、同社従業員への個人攻撃は法執行の妨げになるとの考えを示した。また、同社制作のゲームをプレイする配信者へのハラスメントなどに及ばないよう、理性ある行動を視聴者に求めている。


今回の一件に関して特筆すべきコミュニティ発の活動としては、『World of Warcraft』ゲーム内において同作プレイヤーたちによる“座り込み抗議”がおこなわれた。透明性のある改善策の実行などを求めるこの抗議活動は、海外メディアPolygonなどで報じられた。同作コミュニティに限らず、海外のゲーマーおよびメディアはActivision Blizzardに批判的な傾向が強い。TheGamerなど海外一部メディアについては、同社のゲームにまつわる報道を控える方針を明らかにしている。


大手ゲーム企業Activision Blizzardが行政機関であるDFEHから訴えられ、その影響は多方面に波及している。真相は法廷で究明されるまでは闇の中だ。しかし、多数関係者がセクハラなどの存在を証言していることもまた事実。Activision Blizzardが今後、この一件とどう向き合っていくのか注目したい。

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